[ PRESS RELEASE ](技術) |
2003-0211
2003年11月12日
株式会社富士通研究所
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100インチ超の薄型大画面の新しい時代を拓く新技術
プラズマチューブアレイ技術の実用化に向け前進
今回開発した技術は、視野全体に曲面的に広がる屋内用の超大画面ディスプレイなどの実用化につながるもので、非常に臨場感の高い映像体験によるバーチャル体験教育やバーチャルスタジアムなど、ブロードバンド時代の新しいコンテンツ利用を可能とします。
本技術は、2000年度から2002年度までNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)より助成金を受けて開発された成果を利用しており、2002年5月には15cm角試作ディスプレイで基本原理を確認していました。
【開発の背景】
ブロードバンドネットワークがさらに普及・発展することで、超大画面の映像空間で結ばれた人々が、画面を通して直接的に情報と環境を共有する次世代ネットワーク応用の可能性が生まれつつあります。このような応用を現実のものとし、人と人とが臨場感を共有しながらつながるためには、部屋の壁一面をディスプレイにするなど、等身大・実物大の画像を映し出すことができるディスプレイ技術が必要となります。超大画面ディスプレイの実現は、次世代ブロードバンドの新しいコンテンツ利用を拡げるための要素技術といえます。
【課題】
100インチを超える屋内用の超大型表示用途では、現在、フロントプロジェクターが使われていますが,薄暗い部屋でないと鮮明な画像が得られないなど制約が多く、自発光型による超大画面表示が望まれています。一方、発光素子を並べる方式のディスプレイとしてLEDアレイが実用化されていますが、100万個単位のLEDを1ドットごと並べるためコスト低減が難しい状況にあります。また、LEDはメモリ機能を持たないためマトリクス駆動回路が大規模になり、LEDの低消費電力が生かせず、屋内用の100インチクラスでは消費電力3000 ワット以上でした。
放電を発光原理として用いるPDPでは,発光セルのサイズが大きくなるほど発光効率が高くなる特徴を持っており、基本的に大画面ほど消費電力(単位画面サイズ当たり)の点で他方式よりも有利です。ただし、通常のPDPでは100インチを超える画面サイズでは、ガラス基板サイズは1辺2mを超え、大規模な工場と設備投資を要するという問題があります。
【開発した技術】
今回開発したプラズマチューブアレイ技術は、直径1mmのプラズマ発光チューブを多数並べることで大画面化を実現する富士通の独自技術です。図1に原理図を、図2に画像表示例を示します。
プラズマチューブアレイ技術は、以下の特長があります。
- 実績あるPDP技術を応用
プラズマチューブアレイ技術は、直径1mm、長さ1mのガラス細管内にPDPの発光素子構造を持つプラズマチューブを作製し、このプラズマチューブを多数本並べ、電極基板で挟みアレイ化する技術です(図1)。赤・緑・青の蛍光体を形成した3種類のプラズマチューブを作製し、チューブを挟む電極間にパルス電圧を印加することで発色させています。駆動方法はPDPと同じであり、PDP製品向けに市販されているドライバーLSIが利用できます。なお電極はプラズマチューブとは別基板に形成しているため、電極形成も容易です。
- 超軽量で、自由な画面サイズや形状が可能
プラズマチューブアレイ技術を用いたディスプレイは、巨大なガラス基板を使う必要がないため、現行PDPの4分の1以下と軽量化が可能です。現在、3×2mパネル(プラズマチューブと電極基板)で20kgを最終目標性能として開発を進めています。画面サイズについても、プラズマチューブを並べる本数により容易に拡張が可能であり、現在は、最終目標性能として3×2mから6×3mに向け開発を進めています。ディスプレイの形状についても、プラズマチューブの並べ方次第で自由にアレンジが可能です。将来的にはドーム型や円筒型も可能になります。
- 高い発光効率
PDPは原理的にセルサイズ(放電空間)が大きいほど発光効率が高くなるため、セルサイズがPDPよりも大きく取れるプラズマチューブアレイでは、高い発光効率が期待できます。本方式では、現在のPDPの4倍の発光効率を目指しており、プラズマテレビと同程度の1平方メートルあたり1000カンデラのピーク輝度を出す場合、100インチクラスでも数百ワット程度で済むと試算しています。プラズマチューブアレイ技術の発光効率の最終性能としては、1ワットあたり5ルーメン以上を目標に開発を進めています。
- 低コストでの製造
PDPを大型化するためには巨大なガラス基板を取り扱うための製造装置が必要です。しかし、プラズマチューブアレイでは、製造単位となるプラズマチューブが小さいため、設備の小型化が可能です。また、PDPでは内部への埃の混入を防ぐためのクリーンルームが必要ですが、プラズマチューブでは埃が混入しにくい構造のため不要です。
【今後】
現在は、発光寿命など信頼性評価や製造技術の開発を行っています。今後2年程度で製品適用できる信頼性確保と製造設備の実用化に目処をつける予定で開発を進めています。

図1:原理図

図2:画像表示例
以上
用語説明
- (*1)
- 株式会社富士通研究所 社長:藤崎道雄、本社:川崎市
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