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機能性有機色素の光物性を高精度に予測可能なソフトウェアを開発株式会社富士通研究所(社長:藤崎道雄、本社:川崎市)と富士通株式会社(以下、富士通)は、可視光を吸収・発光する有機分子の光物性を高精度に予測できる分子軌道(*1)計算ソフトウェアを開発いたしました。 今回開発したソフトウェアを用いることにより、従来困難だった有機EL材料やフォトクロミック材料(*2)など機能性有機色素の光物性を高精度に予測でき、材料開発を加速するための有力なツールとして期待できます。 なお、開発したソフトウェアの詳細は、3月18日から早稲田大学西早稲田キャンパスで開催される日本化学会第83春季年会にて発表いたします。 【開発の背景】近年の新材料の開発には、計算化学シミュレーションによる分子、電子レベルでの材料物性の予測技術が不可欠になってきています。現在、注目されている有機EL材料やフォトクロミック材料などの機能性有機色素についても、吸収・発光スペクトルなどの光物性をあらかじめシミュレーションで予測してから、実際に合成、評価を行う場合が増加しています。 従来、機能性有機色素の光物性を予測する方法としては、分子軌道計算のひとつであるINDO/S(*3)パラメータが広く用いられています。しかしこの方法は、ベンゼンなどの共役有機分子(*4)に電子を受容・供与する性質を持つ極性基が結合した分子については、予測精度が低下するという問題があります。 したがって、有機EL材料など、極性基を含んでいる多くの機能性有機色素の光物性を、精度良く予測できるソフトウェアの開発が望まれていました。 【開発した技術】今回開発したのは、分子の熱物性を予測するための富士通のソフトウェア製品である「MOPAC(モーパック)2002(*5)」で用いている高精度パラメータセットを、光物性の予測に適用できるように改良したソフトウェアです。新たに電子同士の斥力計算、分子軌道の算出、光吸収に伴う電子同士の斥力変化を計算するソフトウェアを開発し、富士通のソフトウェア製品である「半経験的分子軌道計算プログラムMOS-F V5(モスエフ ブイ5)」に組み込んでいます。 この高精度パラメータセットは、極性基が結合したことによる分子内の電子分布をより高精度に予測できる NDDO (Neglect of Diatomic Differential Overlap)分子軌道法に基づいて最適化された原子のエネルギーに関する経験値です。NDDO法では、2原子にまたがる原子軌道間の電子斥力を計算するため、従来に比べて極性基が結合したことによる分子内の電子分布を正確に計算できるという特長があります。 図1に示す基本分子骨格をもつ代表的な有機色素7種52分子について、高精度パラメータセットのひとつであるPM5(*6)により吸収波長λを計算し、従来法(INDO/S)による計算値、および実測値と比較した結果(図2)、PM5パラメータによる計算値は実測値との相関係数の2乗(R2)が0.901であり、従来法の0.664に比べて、極性基が結合した分子に対する紫外・可視吸収スペクトルの予測精度が大幅に向上していることを確認いたしました。 したがって、開発したソフトウェアは、機能性有機色素の光物性を高精度にシミュレーションできるので、大学などにおける有機分子の光物性に関する基礎研究はもとより、企業における機能性有機色素の材料開発を加速するための有力なツールとして期待できます。 なお、今回開発したソフトウェアは、2003年6月以降、半経験的分子軌道計算プログラム「MOS-F V6」として製品化し、UNIX版分子軌道計算ソフト「MOPAC2002」およびWindows版MOPAC2002である「WinMOPAC」にバンドルされる予定です。 【用語解説または注釈】
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