[ PRESS RELEASE ] |
2002-0221
平成14年9月20日
株式会社富士通研究所 |
No.168 |
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IMT-2000無線基地局用に
超伝導フィルタを用いた小型受信増幅装置を開発
株式会社富士通研究所(社長:藤崎道雄、本社:川崎市)は、第三世代移動通信(IMT-2000)システムの無線基地局用に、屋外の過酷な環境条件下でも安定に動作可能な、酸化物高温超伝導フィルタを用いた小型受信増幅装置(写真)を開発いたしました。
今回、超伝導フィルタを構成する共振器の形状を従来のヘアピン形状(図1(a))に比べ、約二分の一の大きさに小型化できる新しいパターン設計・実装の技術を開発したことで、冷凍機を搭載しながらも、通常の常温型受信増幅装置と同程度の大きさを実現できました。
さらに、超伝導フィルタを用いると他チャンネルからの干渉を大幅に抑えることができ、従来に比べ優れた低雑音性を実現できるため、通話エリア拡大、携帯端末の省電力化などが期待できます。
なお、本技術の詳細は、2002年9月10日から宮崎大学にて開催された電子情報通信学会ソサイエティ大会(SC-5)で発表いたしました。
【開発の背景】
IMT-2000システムの無線基地局装置を高性能化するため、酸化物高温超伝導体(*1)を用いた通信用フィルタについての研究開発が進められています。
超伝導を用いた通信用フィルタは、基板上に酸化物高温超伝導薄膜をマイクロストリップライン(*2)型に加工したもので、−200℃程度に冷却した上で動作させる必要がありました。そのため、これに用いる冷凍機・真空断熱容器などの冷却装置部分が大きくなり、その結果、超伝導を用いない常温型の装置に比べ、大きく重くなるという問題がありました。
【開発した技術】
今回開発したのは、超伝導フィルタを構成する共振器の形状を従来のヘアピン形状から特殊なスパイラル形状(図1(b))にして、さらにパッケージ材の改良、実装方法などの工夫によりヘアピン形状に比べ占有容積約50%の小型化を図った超伝導フィルタです。
この結果、小型の冷凍機でも十分に冷却できるようになり、冷凍機を搭載しながらも、受信増幅装置全体は従来の常温受信増幅装置と同程度に小型化できました。
(a) ヘアピン形状共振器 |
(b)スパイラル形状共振器 |
図1 従来のヘアピン形状と開発したスパイラル形状の共振器
開発した技術の特長は以下の通りです。
- より小型で低損失かつ急峻な波形(図2)が得られるスパイラルフィルタパターンの設計技術の確立。
図2 超伝導フィルタと常伝導フィルタの比較
- アルミニウムパッケージ(図3)を用い、総熱量(進入熱、発熱)を1.0ワット 以下に抑制。
図3 アルミパッケージの外観
- 装置全体の容積:15リットル、重量:19キログラムという小型軽量化を実現。
今後は、屋外試験などを継続し、IMT-2000システムの無線基地局用に実用化をめざします。
【用語解説】
- *1 酸化物高温超伝導体
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通常、銅を結晶中に含んだ超伝導体を指します。酸化物高温超伝導体は、金属系超伝導体に比べ超伝導状態になる温度(臨界温度Tc)が高く応用が期待されています。
- *2 マイクロストリップライン
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高周波の信号伝送に使用される平面回路の構造で、誘電体基板の片側をグランド導体面、もう片側を信号回路パターンとする構造です。
以 上
プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。
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