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SPring-8放射光利用で1ナノメートル以下のゲート酸化膜を評価株式会社富士通研究所(社長:藤崎道雄、本社:川崎市)は、次世代半導体の開発に必須となる1ナノメートル以下の極薄ゲート酸化膜の平坦性や窒素分布などを評価する技術を開発いたしました。 開発した技術は、大型放射光施設SPring-8(*1)の高輝度放射光を利用するもので、以前に比べ5倍高感度な0.3ナノメートルの膜厚まで評価でき、次世代MOSデバイスを製造する際の条件を最適化するのに大変有効な技術となります。 なお、本技術の詳細は、9月10日から兵庫県の(財)高輝度光科学研究センターで開かれるSPring-8シンポジウムおよびサンビーム研究発表会にて発表する予定です。 【開発の背景】最近のシリコンデバイス用ゲート酸化膜は、1.5ナノメートル付近のものが試作されています。半導体ロードマップによると、次世代半導体では1ナノメートル以下の極薄ゲート酸化膜が必要になるものと予想されています。また、半導体の性能劣化を引き起こすボロンの拡散を防ぐために、ゲート酸化膜中に窒素を添加することがあり、ゲート酸化膜の構造はますます複雑になっています。そのため、設計どおりの膜構造になっているかどうかを評価する必要がありました。従来は、X線の干渉を利用して膜厚、表面/界面の平坦性および酸化膜の密度分布を評価するX線反射率法が利用されていました。しかし、この方法で評価できる膜厚は最小で1.5ナノメートル程度であり、今後のゲート酸化膜開発のために、さらに薄い膜の精密評価を行える技術が求められていました。 【開発した技術】今回開発した分析法は、産業用専用ビームライン建設利用共同体(*2)が建設したSPring-8ビームライン16XUのきわめて高輝度なアンジュレータ放射光(*3)を利用し、ゲート酸化膜を評価する方法です。 試料からの反射X線以外のバックグラウンドX線を除去することで、高精度な評価を可能にしました。 開発した技術を用いてゲート酸化膜を測定したところ、図1に示すように、12桁のX線の測定強度領域(従来は6桁から8桁)が得られ、測定可能な角度領域(2θ)は7°から35°と5倍に広がり、0.3ナノメートルという世界最小の厚さの膜質評価が可能になりました。 この厚さはシリコン酸化膜(SiO2)1分子層と同等なため、分子層レベルでのゲート酸化膜の構造評価が可能になります。 図2に示すように、従来は1.5ナノメートル程度のゲート酸化膜でも均一層としての分析しかできませんでしたが、今回開発した技術を用いれば、1ナノメートル以下のゲート酸化膜でも表面層、中間層、界面層と分離して評価することが可能になり、ゲート酸化膜の製造プロセスの開発や素子性能の向上が期待できます。 なお、本技術は、シリコン酸化膜以外の極薄膜、たとえば高誘電体ゲート膜などの構造評価にも利用できます。 【用語解説】
以 上 プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。 |
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