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[ PRESS RELEASE ] |
2002-0163
平成14年6月27日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所 |
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磁気ディスク用保護膜の高精度評価を短時間で行う技術を開発
富士通株式会社と 株式会社富士通研究所(社長:藤崎道雄、本社:川崎市)は、磁気ディスクに用いる数ナノメートルの極薄保護膜(DLC( *1))の品質を、数時間で高精度に評価できる技術を開発いたしました。
この評価技術を用いると、今後、ますます大容量化が進む磁気ディスクにおいて、ディスクの保護膜の評価が生産現場で可能になるので、高品質な製品供給が可能になると期待されます。
開発した技術の詳細は、5月25日に姫路工業大学(兵庫県姫路市)において開催された第63回分析化学討論会で発表いたしました。
- 【開発の背景】
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近年、コンピュータの記憶装置として用いる磁気ディスクは、さらなる小型、大容量化が求められています。小型でありながら、大容量記憶を実現するためには、単位面積あたりの記憶容量である磁気記憶密度( *2)を増やす必要があります。磁気記憶密度を増やすには、磁気記録層を保護しているDLC膜をできるだけ薄くして、磁気ヘッドと磁気記録層の間をできるだけ近づける必要があります。そのため、磁気ディスクの表面に形成されている磁気記録層の保護膜(DLC)の薄膜化が進められています。
これまでの保護膜は、厚さ数十ナノメートル程度でしたが、今後は数ナノメートル程度まで薄くする必要があります。保護膜が薄くなると欠陥ができやすくなり、そこから水分や腐食性ガスが浸入し、磁気記録層が腐食するなどの障害をもたらします。そこで、磁気ディスクの保護膜に欠陥がないこと(被覆性がよいこと)を検査する必要がありました。
しかし、従来の評価法では、感度や精度が低く、ますます薄くなる保護膜の欠陥検出が困難になります。そこで、数ナノメートル厚の保護膜でも、膜質を定量的に評価できる技術の開発が強く望まれていました。
- 【開発した技術】
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今回開発した技術は、濃度を調整した酸を用いて、保護膜の下にある磁気記録層(コバルト系合金)から、主成分元素であるコバルトを溶出させ、その溶出量を測定することによって、保護膜にある欠陥の程度を定量的に評価する技術(Drop法)です。
具体的には、次のようにして評価を行います。
- 磁気ディスク表面に一定量の酸溶液を滴下する(図参照)。
- その状態で一定時間放置し、保護膜の欠陥部を通して、液滴中にコバルトを溶出させる。
- 液滴中のコバルト量を測定し、単位面積当たりのコバルト溶出量を算出する。
溶出してくるコバルト量は非常に微量のため、使用する酸の種類や濃度および抽出時間等などを調整し、さらに1兆分の1レベルの元素量が測定できる、高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS( *3))を用いることにより、高精度な定量評価が可能となりました。また、従来3日間程必要とした評価が、数時間でできるようになるので、生産現場でも容易に検査を行うことができます。
実際、この評価方法は株式会社山形富士通(社長:長谷川忠司、本社:山形県東根市)の磁気ディスク生産ラインに導入され、製品評価に用いられています。
- 【用語解説または注釈】
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- *1 DLC(Diamond Like Carbon)
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ダイヤモンドの結晶が分散している非晶質炭素材料のことです。
- *2 記憶密度
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1平方インチ(25.4ミリ四方)中に記憶できるビット数のことです。
- *3 ICP-MS(Inductively coupled plasma mass spectrometer)
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溶液試料を微細な霧状にして高周波アルゴンプラズマの中に導入し、〜6000Kの高温で測定目的元素をイオン化した後、質量分析計にて計測する装置です。ほとんどの元素が1兆分の1レベルで定量的に測定可能な高感度元素分析装置です。
以 上
プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。
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