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[ PRESS RELEASE ] 2002-0114
平成14年5月20日
株式会社富士通研究所

シートコンピュータを可能にする薄膜トランジスタの
シリコン結晶の効率的製造技術を開発


株式会社富士通研究所(社長:藤崎道雄、本社:川崎市)は、シートコンピュータ(*1)の実現に不可欠な薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor *2)のシリコン結晶を実用レベルで効率的に製造するための技術を開発し、実際にSRAMやシフトレジスタを試作して、その効果を確認いたしました。
今回開発した技術を用いると、シートコンピュータを実現するためのTFTを、従来に比べ安価に大量に生産できるので、シートコンピュータの実用化にまた一歩近づくものと期待されます。
なお、本技術の詳細は、5月19日から米国ボストンで開催される国際情報ディスプレイ会議にて発表する予定です。

【開発の背景】
LCDや有機ELディスプレイを形成するガラス基板上に、TFTなどを用いて、より多くの回路機能を一体形成すれば、薄型軽量なシートコンピュータが実現します。
しかし、この場合、TFTの高速動作が必要なため、現在実用化されている低温ポリシリコンTFTではなく、電子の移動度がより高いTFTが必要です。当社は、昨年7月、通常のLSIで用いられる単結晶シリコンを使うMOSFETと同等性能のTFTをガラス基板上に造る技術として、CWラテラル結晶化(CW laser Lateral Crystallization: CLC)技術を開発しました。このCLC技術は低温ポリシリコンTFTの性能を大幅に向上させ、将来のシートコンピュータを実現する手段として極めて有望ですが、CWレーザを用いているため、高移動度を維持する結晶を作るためには、照射するレーザのスポットサイズを小さくして大きなパワー密度を作り出す必要があり、製造に時間がかかるという問題がありました。

【開発した技術】
今回開発したのは、高性能TFTが必要な周辺回路部分のみを高移動度が必要な結晶化(*3)を行い、高性能TFTを造る必要のない領域では通常の結晶化を行うといったTFT性能に合わせた結晶化を行う技術です。シートコンピュータで高性能TFTが必要なのは周辺回路部分のみで、圧倒的に大きな面積を占めているディスプレイなどの表示用画素部分ではTFT性能は必ずしも高い必要はありません。しかも画素内のTFTは、規則的に配置され、かつまばらにしか存在しないことに注目し、選択的な結晶化をすることで、TFTの必要性能を維持したまま、CLC結晶化速度をこれまでの約50倍に向上させることに成功しました。
今回開発した技術は、以下の3つの技術の組み合わせからなっています。

  1. TFT領域の選択照射
    TFTの存在する領域を狙って、選択的に結晶化する技術です。TFTを造らない領域では、シリコンは除去されるので、結晶化の必要はありません。

  2. ビーム分割
    レーザービームを分割し、ビーム数を増大させる技術です。TFT領域は5μm角程度と小さいので、小さなエネルギーで結晶化ができます。余ったエネルギーは他のTFTを狙うビームに割り当てます。

  3. 多数ビームの同時照射
    複数のレーザービームを同時に照射し、結晶化をより高速に行う技術です。

これらの技術によって、従来のCLC技術に対して約50倍のスループットが達成されました。比較的低移動度のTFTしか得られないエキシマーレーザ結晶化に比べても、2-3倍の高速結晶化が可能になりました。

今後は、LCDや有機ELディスプレイなどへのTFT集積化技術の開発を進め、シートコンピュータへと発展させる予定です。


【用語解説】
*1 シートコンピュータ
高性能低温ポリシリコンTFT 回路をディスプレイと一体化させた薄型軽量のコンピュータのことです。コンピュータ本体の周辺機器であったディスプレイが、それ自身でコンピュータとなったもの。マンマシンインターフェースの主流となると期待されます。
*2 TFT(Thin Film Transistor)
アモルファスの絶縁基板上の薄膜シリコンで動作するトランジスタのことです。550℃以下の低温プロセスで造られるものは、低価格かつ大型サイズのガラス基板が使えるので、特に低温ポリシリコンTFTといいます。低温ポリシリコンTFTの移動度は、通常、400cm2/Vs程度ですが、本CLC技術で初めて500cm2/Vsを超えることができました。他に石英基板を使い高温プロセスで製造される高温ポリシリコンTFT があります。
*3 結晶化
ポリシリコンTFTを作る際は、絶縁基板上に堆積したアモルファスシリコンにレーザービームを集光し、溶融させた後結晶化させます。この結晶化プロセスでアモルファスシリコンはポリシリコンになります。CLC技術では極めて結晶性の良いポリシリコンを得ることができます。

以 上


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。

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