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[ PRESS RELEASE ] 2002-0099
平成14年5月1日
株式会社富士通研究所
ブロードバンド・インターネットを支える富士通No.132

世界最高、136.6ナノメートルの広帯域光増幅技術を開発


株式会社富士通研究所(社長:藤崎 道雄、本社:川崎市)は、新しい構成のラマン増幅技術を活用し、従来限界と言われていた100ナノメートル(nm)を大きく上回る、136.6ナノメートルの増幅帯域幅を持つ広帯域光増幅技術を開発いたしました。
この光増幅器を用いれば、1波あたり毎秒10ギガビットの信号光を最大で600波以上も一括して増幅でき、従来の光増幅器に比べ、中継器の簡素化、低雑音化、高出力化および低コスト化が図れるため、大容量かつ高速化される将来のマルチテラビット光波長多重通信ネットワークへの応用が期待できます。
開発した技術は、米国カリフォルニア州アナハイムにて開催されたOFC'2002 (光ファイバ通信会議:Optical Fiber Communication Conference) において、3月18日に発表いたしました。

[開発の背景]

大容量のデータを長距離伝送できる波長多重(WDM)技術は、1本の光ファイバに波長の異なる複数の光を重ねて伝送する技術であり、波長の数に比例して伝送データを大容量化できます。
伝送容量を増やすためには、ある一定の波長帯域内で伝送する波長数を増やす方法(高密度化)と、波長帯域を広くして波長数を増やす方法(広帯域化)があります。しかし、高密度化すると、隣り合う信号光同士が干渉するファイバ非線形効果(*1)が強く現れ、伝送波形が大きく歪むので、長距離伝送が難しくなります。また、エルビウム添加ファイバ増幅器(*2)を用いる従来の伝送方法では、波長帯域幅は、その増幅率で制限されるので、波長帯域を広くするのには限界がありました。
これらの問題を解決するため、従来は、波長帯域を複数に分割し、分割した数種類の波長帯域の光増幅器を組み合わせて伝送する方法が用いられていました。しかし、波長帯域数分の増幅器や分波器、合波器が必要となるため装置が大型になり、コストが高くなるといった欠点がありました。
そこで、分波器、合波器を用いないで波長帯域を一括して増幅でき、しかも、簡略な装置でありながら長距離伝送が可能な技術の開発が望まれていました。

[開発した技術]

今回開発したのは、信号光波長とラマン増幅用励起光波長を混合配置する構成を採用し、従来よりも30%以上の広帯域に渡る一括増幅を可能としたラマン増幅器(*3)です。
開発したラマン増幅器を用いて、120キロメートルの伝送路での伝送実験を行い、136.6 ナノメートルまでの波長帯域幅で増幅できることを確認いたしました。

開発した超広帯域一括ラマン増幅器に関する技術の特長は次のとおりです。

(1) 超広帯域一括ラマン増幅器における新しい波長配置
信号光波長とラマン増幅用励起光波長を混合配置する構成のラマン増幅器を開発いたしました。波長配置の一例を図1に示します。励起光間の周波数間隔は、ラマンシフト周波数(13.2テラヘルツ)の整数分の1に設定します。図1では4.4テラヘルツ(THz)としています。励起光間のラマン増幅を利用することで、従来の構成では増幅不可能であった、より長波長帯の信号光の増幅が可能となります。様々な波長の励起光を用意することで、原理的には、帯域限界のない光増幅器が実現できることになります。
(2) 励起光と信号光との合波用デバイス
上記のように開発した励起光波長と信号光波長の混合配置を実現する合波用デバイスとして、広帯域に渡って低損失な特性を有する光サーキュレータを開発しました。その波長範囲は1400ナノメートルから1640ナノメートルまでと、従来よりも3倍以上に広帯域です。

図2に示すのは、実験において測定された光スペクトラムです。最短波の1496ナノメートルから最長波の1640ナノメートルまで、非常に広い帯域に渡る信号光帯域が確保できています。信号光帯域内に配置した励起光帯域分を除いた実質的な増幅帯域幅は136.6ナノメートルとなり、従来の限界であった100ナノメートルを大きく上回ります。より多くの励起光波長を適用することで、更なる帯域拡大が見込めると考えています。


広帯域ラマン増幅器の波長配置例 光スペクトラム
図1:広帯域ラマン増幅器の波長配置例
図2:光スペクトラム

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[用語解説]

*1:非線形効果
光ファイバに光信号を入射すると、光ファイバを構成する物質の分子振動が励起されて発生する散乱や、ファイバの屈折率が入射された光信号のパワーに依存して変化する非線形の屈折率効果などの非線形現象が発生します。特に、1万kmに及ぶ長距離伝送や波長間隔が狭い高密度波長多重信号の場合には、伝送波形の歪みや波長多重信号間のクロストークが発生します。非線形効果の発生効率およびそれによる劣化の大きさは、ファイバの波長分散と強い関係があり、伝送路の分散管理が重要な課題となります。
*2:エルビウム添加ファイバ増幅器
エルビウム元素を添加された光ファイバにおいて、980ナノメートルまたは1480ナノメートルの励起光を用いてエネルギーを与え、1550ナノメートル帯の信号光を増幅する光増幅器。WDM伝送システムに幅広く実用化されています。
*3:ラマン増幅器
1450ナノメートル帯の励起光を用いて、光ファイバが持つ非線形効果であるラマン散乱効果を応用し、1550ナノメートル帯の信号光を増幅する光増幅器。無中継伝送システムなどに既に実用化されています。励起光源の光パワーおよび発振波長を調整することにより自由に利得波長特性を設計することができます。

以 上


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