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[ PRESS RELEASE ] 2002-0077
平成14年4月2日
株式会社富士通研究所
ブロードバンド・インターネットを支える富士通No.126

第三世代移動通信システムのコストを削減する
アダプティブアレーアンテナ技術を開発


株式会社富士通研究所(社長 : 藤崎 道雄、本社 : 川崎市)は、第三世代移動通信システム(3GまたはIMT-2000)への適用をめざして、基地局アンテナの放射パターンを適応的に変化させて、より多くの移動端末を収容することができるアダプティブアレーアンテナ(AAA : Adaptive Array Antenna)技術を開発いたしました。
開発した技術を用いると、送信出力電力が同じ移動端末(携帯電話やPDAなど)ならば、基地局がカバーするエリアを以前より広く設定できるので、基地局数を減らすことができ、経済的です。一方で、基地局がカバーするエリアを変えずに、移動端末の送信出力電力を下げれば、端末の消費電力が下がるので、待ち受け時間を長くできるという効果も期待できます。
また当社は、これらの要素技術を実装した試作機を用いて、室内や電波暗室を用いた各種の評価実験を行ってきましたが、今般、無線実験局免許を取得し、実用化に向けたフィールド実験も開始する予定です。

なお、本技術のうち高速パス・サーチャに関する詳細は、3月27日から早稲田大学理工学部で開催された電子情報通信学会2002年総合大会にて発表いたしました。

【開発の背景】
i-modeや3Gサービスなど、世界に先駆けNTT DoCoMoにより開始された移動通信サービスに大きな期待が集まっています。一方、モバイル環境からのIP接続サービスなどのデータ伝送サービスも充実しはじめており、これらを支えるモバイルアクセスインフラには、高速伝送への期待が日々高まっています。
第三世代方式(IMT-2000)のうちの一つである、W-CDMA方式は、スペクトル拡散(*1)と符号分割多重アクセス技術(*2)により、移動環境下でも安定した高速データ伝送や多様な伝送レート、IPペースのパケット伝送などを実現できるものとして注目されています。
ところが、データ伝送速度が高速になるにつれ、ひとつの基地局がカバーする範囲内で、同時に移動端末を使える人の数に制限が生じるといった欠点があります。また、伝送速度に比例して送信出力を大きくしなければならないため、移動端末の消費電力が増え、通話時間が短くなってしまいます。
そこで、高速データ伝送時でも移動端末の送信電力をあまり増大させない技術、あるいは、同時に通信できる人の数を増やせる技術の開発が望まれていました。

【開発した技術】
今回開発に成功したのは、複数のアンテナを用いて上り方向および下り方向のビームを適応的に変化させるビームフォーミング技術、電波の到来方向を高速・高精度に求めるパス・サーチャ、および各アンテナエレメント間の振幅・位相を補正するキャリブレータなど、AAAの中核となる要素技術です。
開発した主な技術は以下の通りです。

  1. 上り下りビームフォーミング
    複数のアンテナ素子で送受する電波の位相・振幅を制御することにより、移動端末に向けて指向性ビームを形成する機能。移動端末から基地局(上り)と基地局から移動端末(下り)の両方で形成することが可能です。

  2. 高速パス・サーチャ
    複数のアンテナ素子で受信する電波の位相・振幅から、複数のパスを通って異なる遅延時間で到来する信号を識別・分離する機能です。

  3. キャリブレータ
    複数のアンテナ素子で受信する電波信号は、アナログ増幅などの処理を施してから、デジタルに変換し、処理されます。通常、アナログ部分では位相回転などの特性が厳密には揃わないため、その特性にばらつきが生じ、ビームフォーミングやパス・サーチの精度が劣化します。そこで、特性のばらつきを測定し、そのばらつきをデジタル処理で打ち消す機能を実現したのがキャリブレータです。
開発した技術を用いた室内実験の結果、送受信時のビームの形成状態、電波を送信・受信した時のデータ誤り率などのソフトウェアシミュレーションにより取得したデータと同等のビーム形成効果が得られることが分かりました。

この技術を用いると、移動端末の送信出力電力が同じならば、基地局のカバーするエリアを以前より、広く設定できるので、基地局数を減らすことができます。あるいは、基地局のカバーするエリアを変えずに、移動端末の送信出力電力を下げることで、移動端末の消費電力を下げ、同じ電池を使っても待ち受け時間を長くできるという効果が期待できます。 すなわち、加入者当たりの基地局コストを低くできるので、今後の3Gシステムの経済的な発展に貢献するものと期待されます。

【用語解説】
*1 : スペクトル拡散
伝送したい信号で変調した搬送波を、スペクトル拡散用のコードを用いてさらに変調することで、元の帯域の数十倍〜数百倍に広げた搬送波で伝送する技術のことです。
*2 : 符号分割多重アクセス技術
スペクトル拡散において、拡散用のコードとして互いに直交する複数のコードを選び、その複数のコードをそれぞれ別のユーザの信号変調に用いることにより、同一の搬送波で複数のユーザが互いに干渉することなく同時に通信できる技術のことです。

【商標について】
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以 上

プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。

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