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[ PRESS RELEASE ] 2002-0032
平成14年2月7日
株式会社富士通研究所
ブロードバンド・インターネットを支える富士通No.105

世界最速90ギガビット/秒光通信用マルチプレクサICを開発


株式会社富士通研究所(社長:藤崎道雄、本社:川崎市)は、次世代光通信システムに使用される40ギガビット/秒の2倍以上となる90ギガビット/秒という、世界最高速動作を実現した光通信用2:1マルチプレクサICの開発に成功いたしました。
開発したICは、現在開発が進められている次世代40ギガビット/秒通信における信号処理に対しても2倍以上の動作マージンがある80ギガビット/秒以上の信号処理が可能なため、より高品質の信号処理を可能にできるものと期待されます。
なお、本技術の詳細は、2月3日から米国サンフランシスコで開催されているISSCC2002にて発表いたしました。

【開発の背景】
近年、インターネットの爆発的な普及に伴い、複数の波長の光信号を多重するWDM方式(*1)やDWDM方式(*1)といった伝送技術を用いたテラビット級の超高速・大容量光通信システムが、世界中で研究開発されています。しかし、すでに利用できる光波長帯域が限界に達しつつあり、より高速・大容量化のためには1波あたりのさらなる伝送速度の向上が求められています。そのため、高速な信号を多重化するマルチプレクサICをさらに高速に動作させる技術開発が望まれています。
従来のマルチプレクサICに用いられる信号処理方式では、信号処理速度に等しい速度のクロック信号を用いるフルレート方式(*2)が主流でした。この場合一般的にトランジスタに要求される高域遮断周波数(カットオフ周波数)は伝送レートの約4倍〜5倍必要で、たとえば、フルレート方式ではカットオフ周波数300〜400ギガヘルツのトランジスタが必要となります。そのため、80ギガビット/秒以上の回路動作の実現が不可能とされてきました。

【開発した技術】
今回開発した90ギガビット/秒の光通信用2:1マルチプレクサICは、データ転送速度の半分のクロックを用いるハーフレート方式(*3)と、カットオフ周波数180GHzを実現する0.13μm InP-HEMT(*4)技術を用い、インピーダンス整合技術による回路内部伝送波形の高品質化と交流結合による低損失化を実現した超高速電子回路で、その特長は、以下の通りです。
  1. 高品質な内部伝送波形
    クロック信号を処理するトランジスタとデータ信号を処理するトランジスタとの間でインピーダンス整合をとり、内部伝送波形を高品質化しました。

  2. 低損失、高利得
    クロックバッファ増幅器出力部を交流結合することによって、信号劣化の原因となる直流レベル調整回路をなくし、低損失、高利得を実現しました。

  3. 超高速、低消費電力
    信号処理速度の半分のクロックで動作するハーフレートアーキテクチャを採用し、超高速・低消費電力化を実現しました。

この技術によって、45ギガビット/秒の信号を多重化して90ギガビット/秒の信号処理が行えるようになり、将来の40ギガビット/秒以上の光通信への利用が期待できます。

【用語解説または注釈】
*1 波長分割多重(WDM、DWDM)
搬送波の波長を変えて、一つの光ファイバに複数の光信号を多重する方式。波長の異なる光ビームは互いに干渉しないという性質を利用しているため、多重する光の数を増やすことによって光ファイバ上の情報伝送量を飛躍的に増大させることができます。最近では40波以上を多重することができるようになり、高密度WDM(DWDM)と呼ばれています。
*2 フルレート方式
データ速度に等しい速度のクロック信号を用いる回路動作のこと。たとえば、データ速度43ギガビット/秒に対するフルレート動作とは、43ギガヘルツのクロックを用いる回路の動作となります。フルレート動作では、クロックの立ち上がりか立ち下りのいずれか片方のみを用いるため、高品質な信号処理が実現できます。
*3 ハーフレート方式
フルレートの半分の周波数のクロック信号を使う方式。回路動作としてはクロックの立ち上がりエッジ、立ち下りエッジの両方をタイミング動作に用いる構成になっており、回路素子数もフルレート方式に比べて少なく、低消費電力型の回路アーキテクチャです。
*4 HEMT(High Electron Mobility Transistor)
バンドギャップの異なる異種の半導体材料(例えば、GaAsとAlGaAs)の接合界面に生じる電子層が通常の半導体内に比べて、高速で動作することを利用した電界効果型トランジスタ。1980年に富士通が世界に先駆けて開発し、現在、ほとんどの衛星放送受信機に使われています。

【商標について】
  • 記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以 上



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