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[ PRESS RELEASE ] |
2002-0011
平成14年1月16日
富士通株式会社
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毎秒40ギガビットの光送信モジュールを開発し、商品化
〜 次世代の高速光通信システムの実現を加速 〜
当社はこのほど、次世代の高速光通信システムの実現に向け、重要な課題であった、毎秒40ギガビット(Gbps、ギガは10億)の光送信器のモジュール化に成功しました。今後、この光送信モジュールの商品化に取り組み、平成14年3月よりサンプル商品の出荷を開始いたします。
ブロードバンド・インターネットの普及により、今後、通信量の飛躍的な増加が予想されます。このため、DWDM方式(Dense Wavelength Division Multiplexing:高密度波長分割多重)を用いて、超高速かつ大容量での光伝送を実現する40Gbpsの光通信システムの開発が世界中で進められています。
今回、当社は、多くの電子デバイスや光デバイスで構成される光送信器を、一つのモジュールとしてまとめることに成功しています。これにより、40Gbpsの光通信システムの開発や調査を行う企業は、40Gbpsの高速回路や複雑な制御回路を設計する作業が不要となり、次世代の光通信システムの実現を加速することができます。
今回開発した光送信モジュールには、超高速光デバイスであるマッハツェンダ型ニオブ酸リチウム(LN)光変調器( *1)やダブルへテロ構造のHEMT MMIC( *2)を用いた超高速の電子回路などを組み合わせた、当社独自の技術が盛り込まれています。
なお、当社は、40Gbpsの光送信モジュールの試作品を、1月16日より東京国際展示場(東京ビックサイト)で開催される「第2回 ファイバーオプティクス EXPO」にて動展示しご紹介いたします。
- 【開発の背景】
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40Gbpsの光通信システムの開発では、40Gbpsの電気信号を光信号に変換して送信する光送信器の開発が重要課題の一つとなっています。
光ファイバを用いて光信号を長距離伝送する場合、光信号の波形の歪が大きな問題となります。そこで、光送信器には、波形の歪みの原因となる波長の揺らぎを抑制する特性(耐分散特性)を持たせることが求められております。
今回、当社が開発に成功した光送信モジュールは、上記特性への対応を目的とし、マッハツェンダ型LN光変調器を採用している他、波長ロッカ内蔵4波チューナブルLD( *3)、LNドライバ回路( *4)、各種制御部( *5)など、当社の誇る高速光デバイスと電子回路技術により、40Gbpsでの光信号の送信を実現しております。光信号送信部をモジュール化したことにより、取り扱いの難しい40Gbpsの高速回路と複雑な制御回路の設計なしに、40Gbpsの光信号送信部を各種調査やシステム開発に早期に導入できます。
【40Gbps光送信モジュールの特長】
今回開発したモジュールの特長は以下の3つです。
- LN光変調器
光信号を長距離伝送するために、広帯域での高速変調特性および耐分散特性にすぐれたマッハツェンダ型LN光変調器を採用しました。
- 波長ロッカ内蔵4波チューナブルLD
光源として、高精度波長制御を可能とする波長ロッカを内蔵したチューナブルLDを搭載しており、ITU(International Telecommunication Union)で標準化された100GHz間隔の連続した4波長から1波長を選択することが可能です。4波長分の光出力を一つの装置で調整できるため、光通信システムの構築時に保守用の予備パッケージを削減できます。
- 広帯域・高出力LNドライバ回路
LN光変調器を駆動するため、ダブルヘテロ構造のHEMTを用いた超広帯域分布型増幅器回路ICを用いた、LNドライバ回路を開発しました。
【用語説明】
- *1) マッハツェンダ型LN光変調器
ニオブ酸リチウム(LiNbO3)の光学結晶は、電圧をかけると光の位相が変わるという特徴があります。この特徴を利用することで、位相の変化による光信号のオンオフを行い、電気信号を光信号に高速変換することが可能です。
本光変調器は、波形整形効果のある優れた変調特性を持ち、変調にともなうスペクトルの広がり(波長ゆらぎ)が小さいために優れたファイバ伝送特性を有します。そのため、10Gbps等の高速長距離光通信システムで広く使用されています。
40Gbpsの光送信モジュールで使用している光変調器は、10Gbps用の光変調器をエンハンスすることで、10Gbps光変調器に比べて4倍の高速化を図っています。
- *2) ダブルへテロ構造HEMT(High Electron Mobility Transistor) MMIC
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HEMTは、異種の半導体材料(例えば、GaAsとAlGaAs)の接合面に生じる電子が、シリコン(Si)の半導体内に比べて高速で動作することを利用した電界効果型トランジスタです。1980年に富士通が世界に先駆けて開発し、現在、ほとんどの衛星放送受信機に使われています。
ゲートの感覚を短くし、高い周波でも十分な利得と出力電圧を得るため、ダブルへテロ構造を採用しています。
- *3) 波長ロッカ内蔵4波チューナブルLD
高密度波長多重分割伝送用に、光の波長を高精度かつ安定して出力する半導体レーザモジュールです。さらに、ITUで標準化されている波長間隔の連続した4波から任意の1波を選択して出力する波長可変機能を備えています。
レーザの温度を変えることで、波長を変える仕組みを採用しています。レーザモジュールに波長の基準となる光フィルタを内蔵し、変化させる温度にフィードバック制御をかけることで、高精度かつ安定な光信号の出力を実現しています。
- *4) LNドライバ回路
LN光変調器は、優れた変調特性とファイバ伝送特性を有していますが、変調するための電圧が約5Vと高く、超高速かつ高出力の変調器駆動回路の実現が技術課題でした。今回ダブルヘテロ構造HEMTを用いた超広帯域の分布型増幅器回路ICにより40Gbpsの高出力駆動を実現しています。
- *5) 各種制御部
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LN光変調器を、20年以上安定動作させるために、変調器動作点自動制御回路、および4波チューナブルLDの波長選択を行う回路、高精度発振を制御する回路等を、今回開発したモジュール内に内蔵しており、使い勝手の良いモジュールとしてまとめています。
【商標について】
- 製品名称等の固有名詞は、各社の登録商標または商標です。
【添付資料】
以 上
プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。
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