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[ PRESS RELEASE ] 2001-0274
平成13年12月13日
株式会社富士通研究所
富士通株式会社
ブロードバンド・インターネットを支える富士通No.089


40Gビット/秒の光通信用

LN光変調器ドライバICで世界最高性能を達成




株式会社富士通研究所(社長:藤崎道雄、本社:川崎市)と富士通株式会社は、出力振幅6Vpp以上、利得15 dB、帯域54 GHzという世界最高性能の40Gビット/秒光通信用リチウムナイオベイト( LiNbO3またはLN )光変調器用ドライバICの開発に成功いたしました。
これにより、40Gビット/秒光通信で必要とされる光源部を実現するめどが立ちました。
この成果は、10月21−24日に米国ボルチモアで開催されたGaAs集積回路国際会議(GaAs-IC Symposium)にて発表いたしました。

【開発の背景】

近年、WDM(Wavelength Division Multiple:波長分割多重)方式(*1)や高密度多重化したDWDM(Dense Wavelength Division Multiple:高密度波長分割多重)方式(*1)を用いたテラビット級の超高速・大容量データ通信を可能とする40Gビット/秒光通信システムの開発が世界中で行われています。これを実現するには波数分の光変調器とそれを駆動するためのドライバICが必要です。40Gビット/秒の光変調を実現するためにLiNbO3変調器用ドライバICに求められる性能は、直流から40GHzまでの非常に広い周波数範囲で、光をオンオフするための約5Vppという高い振幅の出力電圧を出すことです。
そこで、広帯域でかつ高出力な特性を持ち、量産に適したドライバICをいかに実現するかが課題となっていました。

【開発した技術】

今回開発したのは、ゲート長0.15μmのダブルヘテロ構造HEMT(Double Hetero structured High Electron Mobility Transistor)(*2)と、ICの接地安定性と強度保持のためのグランデッドコプレーナ (GCPW) 配線技術(*3)、超高帯域分布型増幅器回路設計技術です。

今回の開発した技術のポイントは以下の3つです。

  1. 短ゲートHEMT製造技術
    40GHz以上の周波数でも十分な利得と出力電圧を得るため、短ゲート化に適したAlGaAs/InGaAs/AlGaAs/GaAsダブルヘテロ構造を用い、電子ビーム露光により0.15μmのゲート長を持つHEMTの製造技術を開発しました。

  2. グランデッドコプレーナ (GCPW:Grounded Coplanar Waveguide) 配線技術
    接地用金属と信号配線とが数十ミクロンの間隔で配置されたコプレーナ (CPW) 配線をIC表面に設け、さらにICの裏面にも接地用金属を設けることで、回路全体の接地安定性を改善しました。

  3. 超広帯域分布型増幅器回路設計技術
    40GHz以上の非常に広い周波数領域でデジタル信号を一定の利得で増幅するため、高安定の超広帯域分布型増幅器(*4)の設計技術を新たに開発し、直流から54GHzの範囲において増幅利得15dB以上、入出力反射係数-10dB以下、利得変動幅±0.5dBを実現しました。
これらの技術を開発したことで、直流から54GHzの周波数帯域で安定に動作し、6Vpp以上の出力電圧を発生する量産に適したLN変調器用ドライバICを開発できました。開発したICの消費電力は0.9Wで、これまでの2分の1から3分の1の消費電力です。

【用語説明】
*1 波長分割多重(WDM、DWDM)
搬送波の波長を変えて、一つの光ファイバに複数の光信号を多重する方式です。波長の異なる光ビームは互いに干渉しないという性質を利用しているため、多重する光の数を増やすことによって光ファイバ上の情報伝送量を飛躍的に増大させることができます。最近では40波以上を多重することができるようになり、高密度WDM(DWDM)と呼ばれています。
*2 HEMT(High Electron Mobility Transistor)
バンドギャップの異なる異種の半導体材料(例えば、GaAsとAlGaAs)の接合界面に生じる電子層が、通常の半導体内に比べて高速で動作することを利用した電界効果型トランジスタです。1980年に富士通が世界に先駆けて開発し、現在、ほとんどの衛星放送受信機に使われています。
*3 コプレーナ(Coplanar Waveguide)配線
誘電体基板の一面に信号導体配線と接地導体が設けられた配線構造のことです。信号配線が接地導体にはさまれた構造になっており、誘電体の一面のみを使って信号伝送ができるため、回路の特性評価や他の回路との接続が容易になります。
*4 分布型増幅器
複数のトランジスタがある一定の間隔で並列に接続された構造となっています。遮断周波数は入力の伝送線路とトランジスタの入力容量により形成されるフィルタで決定され、広帯域化に適しています。また、分配された入力信号それぞれを、対応するトランジスタで増幅し、出力で合成することによって高出力を得るという特徴も合わせ持っています。

以 上

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