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[ PRESS RELEASE ] 2001-0198
平成13年10月12日
株式会社富士通研究所

重水素熱処理によって次世代LSIの寿命を実用レベルに向上


株式会社富士通研究所(社長:藤崎 道雄、本社:川崎市)は、シリコンLSIに重水素(*1)熱処理を施すことにより、LSIの大幅な長寿命化に国内で初めて成功し、実用レベルの耐用寿命を達成いたしました。
今後、LSIのさらなる微細化に伴い、電流密度が大幅に増大するため、実用レベルの要求寿命は一層厳しくなることが予想されており、この熱処理による長寿命化の効果はますます大きくなるものと期待されます。

【開発の背景】
LSIを高速に動作させるためには、トランジスタのオンオフを行うゲート部(*2)直下の電流密度を高くする必要があります。しかし、電流密度を高くすると、逆にゲート部直下の原子の配列が乱れていくスピードが増加し、搭載しているコンピュータ本体の保証期間を満たさずにLSIが破壊するということが予測されます。
その対策として、1996年にイリノイ大学の研究グループが、原子配列を乱れにくくするための従来方法である水素窒素混合ガスによる熱処理(*3)の代わりに、重水素ガスを用いた熱処理を行うと、LSIのゲート部直下の原子配列が安定になり、耐用寿命が向上すると発表しました。 この発表を受け、当社では、電流による原子配列の乱されやすさは、熱振動で蓄積された水素内のエネルギーがLSI基板に放出されず、水素原子配列が乱れるために引き起こされるという独自モデルを考案いたしました。このモデルが正しいと仮定すると、水素原子の代わりに重水素を用いた場合、その熱振動が遅いために、基板との共鳴を通してエネルギーが放出され、原子配列が乱れることなくLSIの寿命を長くできます。

【今回開発した技術】
当社は、LSIウェーハを重水素で満たされた炉の中で熱処理し、その条件を最適化することにより、国内で初めて、次世代LSIの耐性寿命を二桁向上させることに成功しました。
重水素熱処理を施すと、水素熱処理を施した場合に比べ、LSI中のゲート部直下の原子配列が乱れにくくなるため、耐用寿命が向上します。
具体的には、LSIの特性を安定にするため、従来の水素窒素混合ガスによる熱処理を行うと、ゲート部直下の原子に結合させていた水素原子(図1(c))が、電子と衝突する際にはずれやすくなるのに較べて、重水素原子(図1(d))は振動数が低いため、電子の衝突だけでは、あまりはずれずに耐用寿命が向上します。
実際に重水素処理を施した場合のゲート部直下での重水素の濃度を測定した結果が図2です。ゲート部とシリコン境界面に重水素が蓄積していることがわかります。このことはゲート部直下の原子が重水素原子と直接結合していることを示しています。
図3は、水素熱処理と重水素熱処理を施したLSIの耐用寿命を比較した図です。重水素熱処理したLSIの耐用寿命は、LSIの動作電圧Vdが2.2V (1/Vd=0.45)以下において、水素熱処理したものより飛躍的に向上することがわかります。さらに、動作電圧Vdが1.5V(1/Vd=0.66)においては、耐用寿命が二桁向上しました。
今回開発した技術は、動作電圧が低ければ低いほど、重水素熱処理による耐用寿命の向上率が高まるので、今後ますます微細化し、低電圧化するLSIにとって、一層の効果が期待できる画期的な技術です。

【用語解説または注釈】
*1:重水素
陽子と中性子を原子核にもつ質量数2の水素です。
*2:ゲート部
そこにかかる電圧をON、OFFすることによって、ゲート部直下に流れる電流をON、OFFの状態にするというトランジスタの基本的な電気的動作をつかさどる部分です。
*3:水素窒素混合ガスによる熱処理
ゲート部直下の原子配列を安定化し、LSIに正常な特性をもたせるための熱処理です。
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図1 図2 図3
図1図2図3
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以 上

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