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[ PRESS RELEASE ] 2001-0182
平成13年10月1日
株式会社富士通研究所
東京工業大学

高精度位置制御が可能な
光ディスク装置用マイクロ・アクチュエータを開発



株式会社富士通研究所(社長:藤崎道雄、本社:川崎市)は、東京工業大学 精密工学研究所 下河辺・進士研究室と共同で、光ディスク装置の高密度化をめざして、対物レンズの焦点調整機構や、レンズ光軸角度の調整機構などを持つ超小型マイクロ・アクチュエータを開発いたしました。
今回開発した技術は、記録密度50ギガビット/平方インチ以上の大容量装置を実現するための、対物レンズの位置制御機構として利用できるものと期待されます。 なお、本技術の詳細は、9月22日から大阪大学で開催される精密工学会秋季大会にて発表いたしました。

【開発の背景】
近年、光記録の分野でもMEMS(Micro Electro-Mechanical System)技術の重要性が高まっており、この技術を利用して、高密度化のための高精度焦点制御技術の研究が盛んに行われています。
一般にMEMSは、シリコンを使って製作されますが、結晶構造に起因する欠陥が生じたり、へき開しやすかったりするため、十分な特性や信頼性が得られないという問題があり、シリコンにかわる新しい材料を使ったMEMS技術の開発が望まれていました。

【今回開発した技術】
今回開発したのは、光ディスク装置の対物レンズを精密に駆動するためのMEMSマイクロ・アクチュエータで、MEMSの構成材料としてパラジウム基薄膜金属ガラス(*1)を用いています。微少なメカニズムで大きな変位を実現するのはシリコン製MEMSではむずかしいのですが、今回試作したアクチュエータでは、対物レンズを実用化に必要と言われる約1ミクロン変位させることに成功しました。

今回開発した技術の特長は、以下の通りです。
  1. 非晶質である薄膜金属ガラスを用いているため、結晶構造に起因する欠陥がなく、信頼性の高いマイクロ・アクチュエータを構成できる。
  2. 弾性限界が非常に高い薄膜金属ガラス(厚さ5ミクロン)を用いているため、シリコン製と比べて小型でしかも変位量の大きなアクチュエータを実現できる。また、小型であるため、従来のアクチュエータの先端に装着したり、浮上スライダに搭載したりといった利用が可能になる。
  3. パラジウム基薄膜金属ガラスは約360°C以上の温度で軟化し、この状態から成形が可能なため、機構に応じて、より複雑な形状のMEMSを製作することや微妙な位置調整が可能である。
  4. フォトリソグラフィーによって製作できるため、大量生産が容易である。
この技術によって、精度の高い焦点調整(フォーカシング制御(*2))やレンズ光軸角度の調整機構(チルト制御(*3))が行えるようになり、光ディスク装置の高密度化が期待できます。

今後は、量産技術について検討を行い、2004年ごろ実用化する予定です。

【用語解説または注釈】
*1: 金属ガラス
ある温度まで温めると柔らかくなるガラスのような性質(過冷却液体領域)を持つ金属アモルファス合金
*2:フォーカシング制御
フォーカシング制御は対物レンズの焦点を媒体記録膜に一致させるよう、対物レンズ位置を制御する技術のことです。媒体上での光スポットをより小さくして高密度化するために必須な技術です。
*3:チルト制御
チルト制御は対物レンズの光軸が媒体法線と一致するよう、対物レンズの光軸角度を制御する技術です。光学収差を小さくして高密度化を計るために必要な技術です。

【商標について】
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
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試作アクチュエータ
マイクロアクチュエータの構造
試作アクチュエータ
(ただしレンズはダミー)
マイクロアクチュエータの構造
(F:静電駆動力、V:駆動電圧)

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以 上

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