世界最高、100ギガビット/平方インチのハードディスク技術を開発
株式会社富士通研究所(社長:藤崎 道雄、本社:川崎市)は、コンピュータの外部記憶装置であるハードディスク装置(HDD)において、1平方インチ(1インチ=約2.5センチメートル)あたり100ギガビット(1ギガは10億)の、世界最高の記録密度を実現する磁気記録技術を開発いたしました。本技術は、2001年度下期に発売予定のハードディスク装置に搭載される予定です。
この技術を用いると、現行の主要製品の約3倍の記録密度を持つHDD製品が可能になり、たとえば、ノートパソコン等に搭載された2.5インチ型HDDでは、約110ギガバイトの記憶容量で、DVD-Video相当の画質をもつ映画が約20本録画できるようになります。
今回開発した技術の詳細は、8月20日から米国・ミネアポリスで開催される「TMRC国際会議(The Magnetic Recording Conference)」にて発表いたします。
【開発した内容】
今回開発したのは, 熱ゆらぎなどで限界と言われていた記録密度を従来比3倍向上させる能力を持つ記録媒体(SFメディア *1)と、再生時に従来比2倍以上の高出力でデータの読み出しが可能なダブルスペキュラー型GMR(Giant Magneto-Resistive:巨大磁気抵抗効果)ヘッド、およびデータの記録能力を30%以上向上させた高精度記録ヘッドです。
これらの技術を用いることで、水平磁気記録の限界と言われていた100ギガビット/平方インチの記録密度を達成するとともに、300ギガビット/平方インチの記録密度を達成できる見通しを得ました。
今回使用した媒体とヘッドの特徴は以下のとおりです。
- 新方式の記録媒体
昨年4月に発表した熱ゆらぎに強い新方式の記録媒体(SFメディア *1)を用い、安定化層の結合力強化により、熱ゆらぎ耐性を当社従来比3倍まで改善し、100ギガビットの安定した記録保持に成功しました。
- データ読み出し能力の向上
多層膜の上下に、感度を増大させるための非常に薄い酸化物層を2層設けたダブルスペキュラー型GMRヘッドを開発しました。これにより、電子が余分な散乱を受けることなく伝導し、データ読み取り出力を従来比で2倍以上高めることに成功しました。このヘッドにより、0.12μmの読み取りコア幅で十分な信号出力を得られました。
- データ記録能力の向上
コア幅が0.2μm以下の記録ヘッドを精度良く製作できるプロセス技術と、高い磁場を発生させるための新規材料を採用し、データ記録能力を従来比30%向上させました。これにより、記録媒体上に0.16μm幅で、極微小な磁気信号を書き込むことに成功しました。
今後、より高出力のヘッドと組み合わせることで、300ギガビット/平方インチの記録密度実現にむけ技術開発を推進して参ります。
- 【用語解説】
- *1: SFメディア
- 多層膜で構成される安定化層を記録層の下側に設けることで、媒体の熱ゆらぎによる信号劣化を抑圧し、記録分解能を劣化させずに、高密度記録が可能な記録媒体。
SFメディアの断面構造(電子顕微鏡写真)
[クリックすると拡大表示されます]
以 上

|