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[ PRESS RELEASE ] 2001-0144
平成13年7月13日
株式会社富士通研究所

シートコンピュータを実現する薄膜トランジスタ形成技術を開発

〜プロセス温度450℃以下で、移動度500cm2/Vs超を達成〜


株式会社富士通研究所(社長:藤崎 道雄、本社:川崎市)は、システムLCD(*1)やシートコンピュータを実現するための基本技術である薄膜トランジスタ(TFT: Thin Film Transistor)(*2)を、プロセス温度450℃以下で、ガラス基板上に形成する技術を開発し、従来の2倍以上の移動度(*3)500cm2/Vs超を達成いたしました。
本技術の詳細は、7月11日から東京で開催されている2001年AM-LCD国際会議にて、本日発表いたします。

【開発の背景】

現在、アモルファスシリコン(*4)を用いたLCD(Liquid Crystal Display)が製品化され、パソコン用のディスプレイをはじめ各種の製品に利用されています。しかし、アモルファスシリコンの移動度は0.8cm2/Vs程度と非常に小さく、高速回路を表示画面部分とともに同一ガラス基板上に形成することはできません。
一方、ポリシリコン(*5)を用いたLCDでは、移動度200-300cm2/Vsが得られるので、動作周波数の低い回路ならばガラス上に搭載することができます。これらは既に高精細デジタルカメラやモバイルノートパソコンに応用されています。
移動度がさらに向上して400cm2/Vsを越えるようになると、高速回路を表示画面部分とともに同一ガラス上に形成できるようになり、システムLCDやシートコンピュータの実現が可能になります。
移動度を大きくするためには、ポリシリコン-TFTの結晶粒界を少なくする必要があり、結晶粒径を大きくできる結晶化技術の開発が望まれていました。しかもガラスが変形しない550℃以下の低温で実現する必要があります。

【開発した内容】

結晶粒界密度を減少させ、結晶粒径を大きくすることを目的に、従来のエキシマレーザ結晶化技術の代わりにエネルギー安定性が高い半導体励起固体CWレーザ(*6)を用いる結晶化技術を開発しました。この技術を用いて、現状の結晶粒に比べ、100倍程度の大きさの結晶粒を有するポリシリコン薄膜をガラス基板上に形成することができました (図1)。この結晶を利用して従来の450℃のプロセスによりTFTを形成した結果、現状のエキシマレーザ結晶化技術に比較して2 倍以上の移動度400-600 cm2/Vsを有するポリシリコン-TFTを30cm角のガラス基板上に実現することに成功しました(図2)。本技術は1m角以上のガラス基板にも容易に適用することが可能です。

【用語説明】
*1 システムLCD
高性能な低温ポリシリコン技術を利用して、低価格のガラス基板上に液晶ディスプレイとその駆動用回路のみならず、プロセッサ機能、メモリ機能等も同時に形成した高付加価値LCDのことです。
*2 薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)
SOI(Silicon On Insulator)トランジスタの一種のことです。
*3 移動度
トランジスタの性能を表わす基本パラメータの一つです。この値が大きいほど、トランジスタは大きな電流を流すことができ、高速回路や、より小さな回路を実現できます。もともとは、キャリアの動きやすさを示すパラメータで、質量が軽く、散乱頻度が少ないほど高い移動度が得られます。
*4 アモルファスシリコン
原子配列の仕方が長距離秩序を持たないものを、アモルファスといいます。アモルファスシリコン薄膜は、このような材料の一種であり、低温で形成できることが特徴です。
*5 ポリシリコン、結晶粒径、結晶粒界
ポリシリコンは、異なる方位を有する単結晶のシリコンの粒から成ります。この粒と粒の境界部分を結晶粒界、粒の大きさを結晶粒径と呼びます。結晶粒界をキャリア(電子や正孔)が通過するとき、キャリアが散乱してしまうので、結晶粒界を通過する頻度が多いほど、移動度は小さくなります。
*6 CWレーザ
連続発振しているレーザを示します。なお。エキシマレーザはパルス発振です。

以 上

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