栄研化学が開発した画期的な遺伝子増幅技術であるLAMP(ランプ)法について、その技術に必要なプライマーの設計を支援する専用ソフトを共同で開発し、両社が協力して普及、販売をおこないます。
遺伝子増幅は、遺伝子に関連した研究実験や遺伝子診断に不可欠の技術であり、栄研化学は、平成11年11月に、LAMP法(Loop-mediated Isothermal Amplification) (*1)を発表しました。この新しい遺伝子増幅法は、現在最も普及しているPCR法 (*2)(ポリメラーゼ連鎖反応法)に比べ特異性が高く、かつ100倍以上の増幅効率が得られ、さらに温度の複雑な管理操作も不要なため装置や手順が簡単であるなどのメリットがあり、多数の医療関係者やバイオ関連企業、国内外の研究機関から注目されております。また、この手法はSNPs (*3)の高速検出等への応用が可能であり、テーラーメード医療への貢献も期待されています。
LAMP法のプライマー (*4)(複製を開始させるために必要な短いDNA)配列設計は、PCR法と異なるため、既存ソフトでは設計が困難でした。そこで、LAMP法に適したプライマー候補を出力できるよう、最適なパラメーター条件やアルゴリズムを組み込んだ専用ソフトの開発を両社が協力して進めることになりました。
栄研化学は、プライマー設計支援ソフトの開発は、バイオインフォマティクス関連ソフトの開発に実績のある富士通と共同で進めた方が効率的であると判断しました。
富士通は、遺伝子情報解析をはじめ、ゲノム創薬やテーラーメード医療などポストゲノム時代におけるバイオ研究をIT(情報技術)により支援しており、LAMP法が遺伝子診断や薬剤副作用予測などに関わるシステム構築において、重要な要素技術の一つになるものと考えています。今回の共同開発により、バイオインフォマティクス分野のソリューションの応用範囲を拡げることができます。
栄研化学が近々開設予定のゲノム専用ホームページと、富士通の研究者向けサイト「NetLaboratory」との技術情報連携を図るなど、両社は、相互にメリットのあるテーマについては、今後とも連携を進めていく予定です。
(技術用語説明)
- (*1) LAMP法 :
- Loop-Mediated Isothermal Amplificationの略で、2本鎖DNA、6つの領域を認識する4つのプライマー、鎖置換型DNA polymerase、基質等を同一容器に入れ、一定温度(65℃付近)で保温することにより、検出までを1ステップの工程で行うことができる。増幅効率が高く、DNAを15分〜1時間程度で109〜1010倍に増幅することができ、その極めて高い特異性から、増幅産物の有無で目的とするDNA配列の有無を判定することができる。
- (*2) PCR法 :
- Polymerase Chain Reaction法の略で、(1)2本鎖DNAを1本鎖に変性する工程、(2)1本鎖DNAとプライマーを結合する工程、(3)耐熱性ポリメラーゼを使用して結合したプライマーからDNAを合成する工程、の3工程を温度変化により制御する方法。この一連の操作によりDNA配列の任意の部分を107倍程度に増幅することができる。
- (*3) SNPs :
- Single Nucleotide Polymorphisms (一塩基多型)の略。ゲノム上の塩基配列の中で人種や個人(例えば健康な人と病気の人)間で異なる塩基を持っている現象及びゲノム上のその部位。痴呆、がん、糖尿病、高血圧症、アレルギー性疾患などの疾患遺伝子の解明に基づき、疾患対策、テーラーメード医療の実現、画期的新薬の開発につながるとされる。将来、個人の遺伝的体質の確認、あるいは個人の遺伝情報に合わせた治療・予防を可能にするものとして、SNPsは医療において重要な位置を占めるものである。
- (*4) プライマー :
- 核酸の合成反応にあたりポリヌクレオチド鎖が伸びていく出発点として働くオリゴヌクレオチド鎖。試験管内での核酸合成は、鋳型となるDNA鎖にプライマーを結合させ、DNAポリメラーゼによりプライマーの3'-OH末端にヌクレオチドを順次結合する形で進行する。
以 上
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