ヒトの全遺伝情報(ゲノム)の解読完了が宣言されるなか、病気の原因遺伝子をつきとめ、その遺伝子機能を標的とする創薬研究に、画期的な新薬獲得への期待が高まっています。遺伝子の機能研究には膨大なデータを解析する生命情報工学(バイオインフォマティクス)が欠かせないことから、解析ソフトウエアや専用コンピューターの開発が進められ、創薬ビジネスにおいては従来の枠を超えた技術の融合や異業種間の提携が加速されつつあります。
かねてから、 第一製薬(社長:森田 清)と 富士通(社長:秋草 直之)はPharma(医薬品開発)とIT(情報技術)の融合を目指し、ゲノム創薬における提携を模索してきました。その過程で両社の研究者が協力して画期的な遺伝子の機能予測プログラムを開発したのは大きな成果でした。去る8月22日、本プログラムの開発に中心的な役割を果した富士通研究所の土居洋文は、起業家として独立し、セレスター・レキシコ・サイエンシズ(株)(CLS)を設立いたしました。CLSは生命情報工学をコア技術とする、資本金2,000万円、従業員数26名のゲノム創薬ベンチャーで、富士通は20%を出資しています。
今般、第一製薬とCLSは、上述の「遺伝子機能予測プログラム」を活用して5年間にわたるゲノム創薬共同研究に着手すること、また富士通はその保有する関連特許の提供などを通じて、この共同研究を全面的に支援することで合意しました。
本共同研究において、CLSはこれまでに明らかにされているゲノム情報をもとに、「遺伝子機能予測プログラム」を駆使して、癌、循環器、痴呆、感染症などの疾病に関与すると予測される遺伝子を効率的に、かつ精度よく予測します。第一製薬は社外研究機関との連携のもと、分子生物学やタンパク化学の最新手法を駆使して、これら遺伝子の疾病との関連を生物学的に検証・実証します。次いで コンビナトリアル合成、 HTS等の先端技術を活用し、疾病関連遺伝子に作用する画期的な創薬シーズの獲得を目指します。
この目的のために第一製薬は、その創薬開拓研究所内に約60名の研究者からなる専門チームを組織しました。また、本共同研究の推進にあたり、最初の2年間だけでも約90億円の研究資金を投入するとともに、本年11月竣工予定の新研究棟を本格的に稼動します。
本共同研究は、用いられるプログラムの画期性および短期間に投入される研究費や要員数からみて、世界的にも質・量ともにトップレベルのゲノム創薬研究です。
本共同研究によって遺伝子の機能解析(ポストゲノム)研究の効率が飛躍的に高まり、その成果は新規医薬品の創製のみならず、遺伝子診断薬、遺伝子治療法など、多岐にわたる事業展開につながり、ひいては世界の健康文化に貢献できるものと確信しています。
―用語の解説―
- コンビナトリアル合成(Combinatorial Chemistry)
- 合成作業を行なうロボットを用いて、化合物の骨組みである母核に、ビルディングブロックとよばれる化合物側鎖となる部品を効率的に結合させ、短時間に多様性のある化合物を多数合成する技術の総称です。
- HTS(High Throughput Screening)
- 多数の化合物の活性の有無を短時間に確認することができる、ロボットを用いたスクリーニング技術。
―参考資料―
以 上
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