移動帯通信機器など無線周波数帯デバイス向け
高周波帯域3GHz帯に対応したBiCMOSプロセス技術「U-ESBiC4」を開発
実用レベルで、業界最高クラス(当社従来比2倍)の基本性能を実現
当社はこのほど、3GHz帯の高周波帯域に対応した、移動体通信機器などの無線周波数帯デバイス向けBiCMOSプロセス技術「U-ESBiC(ユー エスビック)4」(U-groove isolated Emitter base Self-aligned BiCMOS)を開発いたしました。
近年、携帯電話や無線LAN、衛星通信など無線周波数帯デバイスを必要とする市場は急激に拡大しており、今後、市場が見込まれる次世代携帯電話(W-CDMA*1)や道路交通情報システム(ITS)などに搭載されるデバイスには、より高周波帯域への対応・低消費電力・高性能化が求められています。
当社は、それらの要求に応えし、周波数帯域3GHz帯に対応し、かつ低消費電力を実現するBiCMOSプロセス技術「U-ESBiC4」を開発いたしました。
「U-ESBiC4」は、より高周波帯域に低電力で対応するために、バイポーラ構造を構成するエミッタ(*2)の幅を0.2ミクロンに微細化し、最大発振周波数50GHz、遮断周波数30GHz、雑音指数0.6デシベルと実用レベルでは最高クラス(当社従来比2倍)の基本性能を実現いたしました。CMOSゲートに0.35ミクロンテクノロジを採用し、絶縁膜の薄膜化を図ったことにり、MIMキャパシタ(*3)の業界最高クラスの高密度(従来比2倍:2.8fF(*4)/ミクロン2)化をいたしました。さらに、本プロセスを搭載する機器やシステムの消費電力を当社従来比2/3に低減できます。
「U-ESBiC4」は「U-ESBiC3」からの当社独自技術である、バイポーラ素子間を高耐圧で分離するためのトレンチ素子分離技術や、素子内の正確な位置あわせを行うための二層ポリシリコンセルフアライン構造を継承し、微細化や薄膜化を図っております。
現在、当社は、PLL(*5)シンセサイザLSIにおいて、約30%と世界トップシェアをもっております。当社は、1988年に、世界で初めて、無線周波数帯デバイス向けBiCMOS技術によるPLLシンセサイザLSIを商品化して以来、常に先端商品を提供してまいりました。今後もさらに、市場の拡大が見込まれる無線周波数帯デバイスやインターネット関連デバイスへ、積極的に展開してまいります。
【量産適用時期】2000年4月(当社次期PLLシンセサイザLSIに適用 )
【主な特長】
1. |
微細化バイポーラエミッタ CMOSゲート
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: :
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0.2ミクロン 0.35ミクロン
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2. | 高密度キャパシタ | : | 2.8fF/ミクロン2 |
3. | インダクタンス搭載 |
4. | 最大発信周波数 | : | 50GHz |
5. | 遮断周波数 | : | 30GHz |
6. | 雑音指数 | : | 0.6dB(1.9GHz時の場合) |
【用語説明】
(*1) |
W-CDMA( Wide-band Code Division Multiple Access):
決められた周波数帯域幅内で、データ信号のグループを分割し、符号(タグ)
を付けて、周波数帯を時間フリーで拡散転送し、転送先符号化データを同一
グループごとに収束させる方式。
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(*2) |
エミッタ(Emitter):
バイポーラ型トランジスタの1電極。npn型バイポーラトランジスタの場合、
エミッタ幅が小さいほど周波数帯域が高い。
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(*3) |
MIMキャパシタ(Metal Isolator Metal Capacitor):
シリコン基板と金属薄膜間に絶縁膜を形成することによりキャパシタを構成する。
絶縁膜の膜厚が薄いほど、キャパシタ容量を大きくできる。
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(*4) |
fF(Femto-farad):キャパシタ容量の単位。ヘムトは 10-15 の意味。
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(*5) |
PLL(Phase Locked Loop):
位相同期ループ。出力した発信周波数と、入力や基準発振器の周波数の
位相差を検出して、帰還回路を制御し、発振器の周波数を一致・同調させる。
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以 上
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