HomeNewsProductsMapDownloadEnglish
ヘルプ
ホーム > プレスリリース > 記事
報道関係お問い合わせ先 | お客様お問い合わせ先 | 製品情報 |

[ PRESS RELEASE ] 平成12年1月20日
富士通株式会社
郵政省通信総合研究所
大阪大学基礎工学研究科

世界最高速HEMT(高電子移動度トランジスタ)を開発

〜 産・学・官の連携による研究の成果 〜

このほど、富士通株式会社と郵政省通信総合研究所(所長:飯田 尚志、所在地:東京都小金井市)および大阪大学大学院基礎工学研究科(教授:冷水 佐壽、所在地:大阪府豊中市)との産・学・官からなる共同研究チームは、電流利得の増幅限界周波数が'362GHz'のトランジスタの開発に成功いたしました。これにより、ミリ波帯(30-300GHz)を越えるサブミリ波周波数帯(300GHz-3THz)で動作する実用レベルのトランジスタ開発に弾みが付き、サブミリ波帯での周波数応用への道が開かれることが期待されます。

[開発の背景]

21世紀の高度情報化社会を目指して、郵政省では電波資源の開拓を進めています。
現在ミリ波周波数帯では、HEMTおよびHBT(ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)などの高性能トランジスタの出現により、自動車レーダや衛星通信および無線通信ネットワーク等のミリ波応用分野が実用化されつつあります。そこで、さらなる周波数資源として、ミリ波より周波数が高いサブミリ波周波数帯における電波資源を開拓することは、光波とミリ波との狭間に残された人類未踏の周波数資源として、将来の高度情報処理や通信システムあるいは科学技術の発展等、サブミリ波の利用を可能にするものとして重要となってきています。そのためには、サブミリ波帯で増幅動作できる超高性能トランジスタの開発が必要であり、これによりマイクロ・ミリ波分野と同様にアプリケーションの飛躍的拡大が期待できます。しかしながら、ミリ波を越えるサブミリ波周波数帯で動作可能なトランジスタの研究開発は、世界でも未だ数少ない研究機関でしか行われていません。
[開発した技術]
今回開発した高速HEMT素子は、半導体材料として光素子および高速素子への適用に優れているインジウム・リン(InP)基板を用い、格子整合した結晶系において、電子走行層としてインジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)、電子を供給する層として高濃度面ドープ(*1)を行なったインジウム・アルミ・ヒ素(InAlAs)を用いたものです。

(1) 高速性を支配する微細ゲート形成法として、50keV 電子ビーム露光技術を用いて、一括露光によるシンプルなゲートリフトオフ技術(*2)を新たに開発しました。1.5-2μm間隔をもつソース・ドレイン微小領域の間に、Ti/Pt/Auゲート金属による低抵抗T型50nmゲート長構造(図1)を最適化することで、寄生成分を低減し、素子の高速性能を実現いたしました。また、パターンニング工程として、全電子ビーム露光プロセス技術を導入いたしました。
(2) 本素子形成技術を用いてHEMTを試作した結果、増幅率に関連する相互コンダクタンス値(*3)として930mS/mm、また高速素子の性能指標である電流利得の遮断周波数(増幅限界周波数)(*4)として、"ft=362GHz" の世界最高速の値(図2)を得ることができました。

これまでの報告として、92年に米国ヒューズ社から発表された50nmゲート長素子によるft=340GHz でしたが、一昨年(98年)NTTの30nmゲート長素子によりft=350GHzに塗り替えられました。今回、よりシンプルな工程による実用レベルの50nmゲート形成技術の開発を行なうことで、これらを上回る良好な値を得ました。

今後は、さらなるゲート長の微細化および寄生成分の低減をはかることで、より高い性能を持つ超高速HEMTの実現が期待されます。このHEMT技術は、新しい超高速ネットワークスイッチ、信号処理装置、低雑音ミリ波受信機等への応用が可能であり、ミリ波装置の高性能化と高周波化が可能です。さらに、ミリ波・サブミリ波電波天文学や地球環境のリモートセンシング分野をはじめとする多くの基礎科学技術分野への波及効果や発展に向けて、電波と光とを結ぶ未踏領域の周波数を選択利用することが可能となり、サブミリ波テラヘルツ電磁波領域での様々な応用分野の開拓の基礎ができると考えられます。

微細50nmゲート断面
電流利得の遮断周波数
図1 微細50nmゲート断面
図2 電流利得の遮断周波数

[用語解説]

1) 面ドープ
半導体への不純物導入の方法として、高濃度にドープするための極限として、不純物原子を一原子層レベルで形成するドーピング技術のことです。単位としては、例えば個数/cm2などとなります。
2) リフトオフ技術
薄膜微細加工の工程の一つで、基板上にレジストのパターンを形成した後、薄膜の堆積を行い、その後レジストを除去することで精密薄膜パターンを形成する方法のことです。
3) 相互コンダクタンス
素子の増幅率に関連する素子パラメータであり、入力ゲート電圧の微小変化に伴うドレイン電流の変調度合いを言います。相互コンダクタンスが大きい素子が、増幅度は一般に大きくなります。
4) 電流利得の遮断周波数
トランジスタの電流利得に関する増幅動作の周波数上限のことです。通常は、周波数に逆比例して電流利得が減少し、電流利得が1(出力電流と入力電流の比が1)となる周波数の値をいいます。遮断周波数の大きい素子が、より高速性を示します。

以上

プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。
ホーム | プレスリリース | 製品・サービス | 総合索引 | ダウンロード |
本サーバ上のコンテンツ(情報・資料・画像・音声等)の無断転載を禁止します。(著作権とリンクについての説明)
All Rights Reserved, Copyright(C) FUJITSU LIMITED 1995-2000