平成11年9月21日
富士通株式会社
ファナック株式会社
東レ株式会社

世界初!!
富士通、ファナック、東レがモールドエンジニアリングシステムを共同開発

富士通株式会社(以下、富士通)、ファナック株式会社(以下、ファナック)、東レ株式会社(以下、東レ)の3社はこのほど、製品設計から解析、成形まで一貫して行うモールドエンジニアリングシステム「The MOLDEST(ザ・モールデスト)」(仮称)の開発に、世界で初めて成功いたしました。

本システムは、富士通の3次元CAD/CAMシステムによる製品・金型設計技術と生産現場における量産成形技術、ファナックの電動サーボ式射出成形機の制御技術、および、東レの3D射出成形CAE技術を統合させた世界初のシステムです。
これにより、金型設計の品質向上が図れ、試作から量産立ち上げの期間を大幅に短縮することが可能となります。

3社は、モールドエンジニアリングシステム研究会(MS研)において、昨年夏に共同開発プロジェクトを発足させ、システム開発に取り組んでまいりました。
「The MOLDEST」をプラスチック成形業界に対する新しいソリューション提案として位置づけ、製造日本を復活させるための日本発デファクトスタンダードとして、全世界に向けた「グローバルスタンダードCAM」(Computer Aided Molding:コンピュータ支援による射出成形)の提供を目指してまいります。

【本共同開発の背景】

従来のCAD/CAM/CAE技術は、金型の製造(切削加工)が対象で、成形現場においてはコンピュータ解析技術を活用することができませんでした。このため、プラスチック製品/部品の試作から量産段階に移行するための製造条件(成形条件)の抽出と成形機の制御は、熟練技術者の勘と経験に頼らざるを得ず、試作期間短縮/量産立ち上げ期間短縮の大きなボトルネックとなっていました。
【本システムの特長】
3次元デジタルエンジニアリングシステム(CAD/CAM/CAE)と電動サーボ式射出成形機を実用レベルで統合した世界初のシステム
  1. 米国UGS社製統合3次元CAD/CAMソフト「UNIGRAPHICS」およびUNIGRAPHICS上で動作する富士通製金型設計システム「MOLDWARE」で設計された製品・金型モデルを、東レ製樹脂流動解析ソフト「TIMON」の技術を採用した解析部に直接渡すことにより、効率的なシステム運用ができます。

  2. 従来の解析が金型内のみを対象としていたのと異なり、「The MOLDEST」は、金型内部の解析条件を入力すると、射出成形機の動作を考慮し解析を実行し、最適圧力波形(成形条件)を算出します。これにより、解析結果がそのまま成形機の動作条件となります。

  3. 解析結果をネットワークで接続されたファナック製電動サーボ式射出成形機「ROBOSHOT」に転送し、AIデジタル波形追従制御機能により、解析で求められた最適成形条件で成形を行うことができます。このため、解析から量産成形までのデータの一元管理が可能となりました。

【本システムの導入効果】

  1. 従来、成形熟練者のノウハウで設定されていた成形条件について、「The MOLDEST」では、3次元CADデータを元に、解析結果をそのまま最適量産条件として短時間で設定することが可能です。
    成形の未熟練者であっても、熟練者の約1/2の時間で量産立ち上げが可能となります。

  2. 実際に成形する前に、射出圧力を定量的に把握することができるため、成形の可否判断支援や流動性を考慮した金型設計支援を行うことができます。

【各社の本共同開発に期待すること】

[富士通]
富士通は、デジタルエンジニアリングを推進する製造業のお客様を支援するため、業界初のCAD/CAM/CAEソリューション体系「@DIGITALENGINEERINGVISION」を確立し、メカニカル設計分野と金型・試作分野向けのソリューションを提供しております。
今回の共同開発により、UNIGRAPHICS,MOLDWAREで培ったモールド分野でのノウハウと、実際にモールド部品の生産設計を行っている社内の生産システム部門のノウハウを合わせ、高度なグローバルスタンダードとなる新しい金型・試作ソリューションを提供できるものと思っております。
また、「The MOLDEST」においては、上流から下流へのデータ連携にとどまらず、下流から上流へとデータをフィードバックすることにより、製品設計・金型設計の精度向上が図れ、効率のよい安定したモールドエンジニアリングシステムを実現することとなります。この実現に向け、今後も共同プロジェクトをすすめ、トータルソリューションの確立をめざしてまいります。

[ファナック]
ファナックは16年前に電動サーボ式射出成形機の実用化に世界で初めて成功しました。この電動サーボ式射出成形機は、精密成形性のみならず、従来の油圧式射出成形機に比較して抜群の省エネ性や油汚れの無いクリーン性といった特徴を有しております。また、工作機械で長年培われた高度な制御技術を駆使し、各種のAI機能を実現いたしました。
今回の共同プロジェクトでは、AIディジタル波形追従制御機能を利用することにより、CAEで創成された圧力波形データを直接成形条件とする技術の開発に成功いたしました。この結果、CADによる3次元のデータ作成からCAEによる流動解析、そして解析結果による実射出成形まで、データの一元化が実現されました。今後もこの開発体制を維持しながら、さらに高度な技術へと発展させ、射出成形業界に発展に貢献してまいります。

[東レ]
東レは、20年来「TIMON」の開発を通じて、樹脂流動解析技術の確立と普及に努めてまいりましたが、樹脂流動解析は解析専門技術者のためだけのものという、壁を打ち破ることはできませんでした。
今回の3社の強い技術の結集により、自社のみの開発では得られない強力なシステムが開発できました。
「The MOLDEST」は、解析技術を成形現場に活用するという私どもの積年の夢を実現すると同時に、樹脂流動解析技術に対する新しい価値を創造し、成形技術に対する新しいソリューションを提示するものと考えております。
「The MOLDEST」がプラスチック成形業界に受け入れられ、先行の強みを活かしたでディファクトスタンダードになるように期待し、そのために、今後も数年に渡り、共同開発を継続してまいります。
「The MOLDEST」の実証テストについては、3次元デジタルエンジニアリングを先駆的に推進されている山形カシオ株式会社殿はじめ、富士通化成株式会社殿ほか複数の企業での実施が予定されております。

9月24日〜28日に、幕張メッセで行われる「国際プラスチックフェア'99(IPF'99)」のファナックブースにて、「The MOLDEST」を参考出展いたします。

以上

【商標】
*UNIGRAPHICSは、米国UGS社のソフトウェア名称です。
*記載されている製品名、会社名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

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