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1999-0055
平成11年3月12日
富士通株式会社

製品設計の期間を短縮する

『ICAD/MX樹脂流動解析ソリューション 』を新発売

当社は、機械系CADソフト「ICAD/MX」と、東レエンジニアリング株式会社(代表取締役社長:原 享司、本社:大阪府大阪市)が販売する樹脂流動解析ソルバー(*1)「TIMON」(*2)、株式会社クボタ(代表取締役社長:三井康平、本社:大阪府大阪市)の解析用プリポスト(*3)「KSWAD」(*4)の3製品を組み合せ『ICAD/MX樹脂流動解析ソリューション』として、4月2日から国内で販売開始いたします。

従来、樹脂流動解析は生産技術、金型製造部門などの製造現場が行っておりましたが、製品に占める樹脂部品が年々増加している現在、設計者自らが直接利用可能な樹脂充填シミュレーションを行うためのソフトウェアが求められてきています。
また、製品開発のライフサイクルも年々短くなっており、設計から製造までのスピードアップが一層求められています。

『ICAD/MX樹脂流動解析ソリューション』は、「高品質な製品をより早く市場に投入する」をコンセプトとして開発した製品設計者指向の樹脂流動解析支援システムです。2次元図面を活用した3次元モデリング、3次元形状編集、樹脂充填シミュレーションまでの一連の作業を1台のパソコン上で行うことができます。また、CADソフト「ICAD/MX」と、直接解析ソルバーを連携させることにより、設計者が3次元CADデータよりモデリングした形状から、即座に樹脂の充填解析を実施いたします。
これにより、CADの利用が中心だった設計者自身が、簡単に設計レベルで樹脂充填シミュレーションを行うことができ、納期短縮、試作費用の低減に大きく貢献でき、これからの新しい市場として潜在ニーズは非常に大きいと考えています。

本製品は、2次元3次元混在設計環境を提唱する当社と、解析プリポストで長年の経験を持つ株式会社クボタ、樹脂特性を熟知している東レエンジニアリングの国産メーカ3社が独自のノウハウを結集して開発した製品です。3次元分野の数多い海外製品群の中で、日本の設計環境を十分に考慮した純国産型の先進ツールとして、今後も3社が協力して強化してまいります。

なお、本ソリューションは当社が1月7日に発表した「@DIGITALENGINEERINGVISION」のキーコンポーネントの1つであり、上流設計の作業効率化を狙ったシミュレーションベースドデザイン環境を推進する重要なソリューションとして位置づけされます。

【出荷開始時期】 平成11年4月2日(Windows NT版)
【標準価格(税別)】 『ICAD/MX樹脂流動解析ソリューション』
340万円より(一括価格)
【販売目標】 3年間で合計300システム

『ICAD/MX樹脂流動解析ソリューション』の概要

  1. ICAD/MXの2次元3次元混在設計機能
    ICAD/MXは、当社が電機・精密・機械・自動車分野の機械設計用途向けに自社開発したCADソフトで、2次元機能と3次元機能を合わせ持った主力製品です。

    (1) データ管理機能
    ICAD/MXでは、2次元図面と3次元モデルを同時に管理することが可能で、2次元図面の編集中に、その部分に対応した3次元モデルの自動呼出しが可能です。3次元適用において全てのデータを3次元化しなくとも、必要な部分だけ3次元化を図ることができます。
    これにより、既存の2次元図面を基本にした設計の流れを阻害することなく、3次元による干渉チェック、断面カッティング、斜視図などへの活用が可能です。
    (2) 操作性
    • 2次元図面と3次元モデルを扱う操作を共通化しており、簡単な操作で3次元モデルの操作ができます。これにより、既存の2次元図面の線分を選択しながら3次元のモデルを作成したり、3次元モデルの断面形状を2次元図面上に投影し、図面上で選択できるなどの操作性を実現しています。
    • ICAD/MXの2次元3次元混在設計環境では、既存の2次元図面を流用しながら、3次元CADの利点だけを製品設計に取り入れて活用できるので、設計者は効率的な作業ができます。

  2. 樹脂流動解析機能
    金型に樹脂が充填されていく過程を、ソフトウェア上でシミュレーションすることが可能です。
    (1) 3次元での解析機能
    • 本格的ソリッド(*5)要素での樹脂流動解析を実現します。また、ビーム・シェル(*6)要素での解析、およびソリッド、シェル、ビーム混在のハイブリッド解析も可能です。
    (2) 成形条件(*7)
    設定機能
    • 解析したい3次元モデルと選択された樹脂データにより、成形条件を自動的に設定します。
    (3) 高速処理機能
    • 独自に開発したアルゴリズムにより、解析計算の高速化を実現します。
    (4) 国内樹脂データの提供
    • 検証済みの国内樹脂データを提供します。
    (5) 高精度の解析結果
    • 実成形品と同じソリッド形状での解析により、充填パターン(*8)、ウエルド位置(*9)、充填圧(*10)、温度分布(*11)等の結果データを精度よく出力します。

  3. 「ICAD/MX」「KSWAD」連携機能
    ICAD/MXで作成した3次元図面データを、直接プリポストへ転送することができます。
    (1) データ連携
    • 3次元CADカーネルのParaSolid(*12)レベルでICAD/MXから、KSWADへのデータ連携を行います。
    (2) 優れた操作性
    • WindowsのGUI(*13)に準拠した操作性を実現しており、マイクロソフト社のWordやExcelと同じ感覚で解析シミュレーションを実行できます。
    (3) ウィザード
    • 解析の知識がなくても、ウィザード(誘導方式、穴うめ型)により、設計者自ら、樹脂流動解析を行うことができます。例えば、ランナー(*14)やゲート(*15)の設定なども誘導方式で容易に設定可能です。また、射出時間(*16)等の解析条件も、樹脂と形状寸法により推奨値が自動的に設定されます。
    (4) 自動メッシュ
    • 先進の自動メッシュロジック「バケット法(*17)」を採用し、要素のゆがみ等を改良する独自のアルゴリズムと合せて飛躍的な高速・高精度の自動メッシュを実現します。
    (5) ポスト処理
    • 構造図、変形図、応力図、振動モード(*18)図、周波数応答(*19)アニメーション、過渡応答(*20)アニメーション、熱分布図、スペクトル図など、豊富な機能を実現します。樹脂流動解析のために、充填アニメーションやグラフ機能を強化し、また、ポスト処理にウイザードを使用することで、最小限の作業で必要な結果を把握でき、さらに、自由モードを使用することで、高度な断面での結果等を表示できます。

【注釈】

*1 ソルバー:与えられた解析条件をもとにして解析演算処理を行うプログラム
*2 TIMON:東レ株式会社が開発した金型用途向けの樹脂流動解析システムの総称
*3 プリポスト:ソルバーに渡す解析条件の設定や解析結果の表示などを専門に行うプログラム
*4 KSWAD:株式会社クボタが開発した設計者向けプリポスト処理システムの総称
*5 ソリッド:粘土細工のような中身まで詰ったデータで3次元形状を表現するもの
*6 ビーム・シェル要素:直線や曲面形状に解析で必要な断面情報(円や四角、板厚)を付与したもの
*7 成形条件:金型に樹脂を流し込む際の樹脂特性、圧力、温度などの諸条件
*8 充填パターン:金型内に樹脂が流れ込んでいく際の樹脂素材の充填状況を視覚的に表したもの
*9 ウエルド位置:金型内の溶融材料が成形品形状の周囲を流れて合流した際にできる曲線位置
*10 充填圧:樹脂の原料粉末を金型内に供給する際に機械的に加圧する圧力のこと
*11 温度分布:金型内を流れる樹脂の温度差を色や形状で視覚的に判りやすく表現したもの
*12 ParaSolid:汎用3次元ソリッドカーネルの名称。開発・提供はUnigraphics Solutions
*13 GUI(Graphical User Interface):文字操作に代るビジュアルで直感的な操作環境
*14 ランナー:鋳型に溶湯を注ぐ所と「せき」との間を連結する溶湯の通路
*15 ゲート:金型のキャビティに樹脂材料を注入する入口
*16 射出時間:成形装置で溶融材料を金型内に流し込む時間
*17 バケット法:東京大学工学部、矢川研究室で開発された高速高精度の構造解析アルゴリズム
*18 振動モード図:異なる周波数に応じて構造物がどういう振動状態かを表す図
*19 周波数応答:構造物の共振条件などを検討するために異なる周波数ごとの挙動を検証すること
*20 過度応答:構造物の構造解析を行うために過度的な力を加えた際の挙動を検証すること
※ 記載の商品名などは、各社の商標および登録商標です。

以 上


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