[ PRESS RELEASE ] |
1999年12月9日 三洋電機株式会社 株式会社 日立製作所 富士通株式会社 Infineon Technologies AG |
三洋電機株式会社(以下、三洋電機)、株式会社 日立製作所(以下、日立)、富士通株式会社(以下、富士通)の3社は、携帯電話機・PHSに音楽を配信するシステム「ケータイdeミュージック」の技術規格を共同で開発いたしました。この「ケータイdeミュージック」は、3社で共同開発した汎用コンテンツ保護技術であるUDAC-MB *1をベースにした規格であり、セキュリティガイドライン、および以下の3つの技術規格から構成されます。
今後、三洋電機、日立、富士通、および本セキュア・マルチメディアカード規格に賛同するInfineon Technologies AG(以下、インフィニオン社)は、本技術規格の採用を携帯電話事業者、関連機器開発者、コンテンツホルダーなどに積極的に呼びかけ、本技術規格によるサービスの提供に向けて努力していきます。
今回の技術規格を利用した携帯電話事業者のサービスにより、利用者は、本規格にもとづいて開発された携帯電話機を用いて、好みの音楽を簡単な操作で入手(セキュア・マルチメディアカードに記録)でき、いつでも聴くことができます。
本規格にもとづいて開発した携帯電話機は、電話機能・音楽ダウンロード機能・ポータブルオーディオプレーヤ機能と、業界で初めて1台3役の機能を提供いたします。いつでもどこでも最新流行のヒット曲や想いでのメロディー等をすぐに入手でき、CD並みの高い音質で楽しめるインフラです。
本技術規格の開発にあたっては、コンテンツホルダーの要求、ユーザーの利便性、および携帯電話事業者の要望を十分に考慮しました。その結果、ディジタルコンテンツの合法的配信/コピー機能、合法的再生機能、および多様なコンテンツ配布形態に対応しました。
また本規格を用いることでさらに、携帯電話を核にした新しい音楽配信サービスの提供が実現できます。例えば、コンテンツホルダーは、暗号化された音楽をCD-ROM等で配布し、携帯電話事業者が再生ライセンスキーを販売することにより、新しい販売方法の獲得と事業の拡大が図れます。さらに本技術規格を用いて、携帯電話事業者だけでなく、レコード店のキオスク端末への音楽配信や携帯電話機との相互接続の実現も可能です。
マルチメディアカードを発明したインフィニオン社は、セキュア・マルチメディアカードのワールドワイド標準化をサポートしていきます。また、コンテンツプロバイダー、端末メーカー、サービスプロバイダー、カードメーカー等のヨーロッパのパートナーとともに、コンテンツ・ダウンロードのセキュリティ・コンセプトの標準化を推進します。インフィニオン社と日立は、共同でセキュア・マルティメデ
ィアカードの開発、生産、商品化を行います。
さらに、インフィニオン社は、UDAC-MB仕様に準拠したROMのセキュア・マルチメディアカードも提供していきます。
《「ケータイdeミュージック」誕生の社会的背景》
現在、音楽マーケットをリードする若い世代を中心に、携帯電話機とポータブルオーディオプレーヤが広く普及しております。20代若者の約9割が携帯電話機を所有し、そのうちの約8割がポータブルオーディオプレーヤも同時に所有しています(三洋電機調べ)。
各携帯電話事業者は独自のサービスを展開し、今後ますますサービスの差別化による競争激化が予想されます。また、携帯電話のデータ通信速度も高速化していきます。音楽配信サービスこそ、このような次世代の携帯電話サービスに最適なサービスと考えられます。
1台で、携帯電話機・ダウンロード端末・ポータブルオーディオプレーヤを兼ね備えた携帯電話機の登場で、携帯電話機への音楽配信サービス市場は、急速に立ち上がると予測されます。
《「ケータイdeミュジーック」誕生の技術的背景》
ネットワークでのディジタル音楽配信サービスの要望が高まる中、一方では、不正コピーや不正配信が懸念され、コンテンツホルダーによる本格的な音楽配信が実現していないのが現状です。そこで、現在、インターネットからパソコンへの音楽ダウンロード配信で、これら不正行為への対策を行うための著作権保護技術仕様の策定がSDMI *2で進められています。
三洋電機、日立、富士通の3社は、このSDMI仕様準拠以上の安全性を実現する汎用コンテンツ保護技術UDAC-MBを開発いたしました。さらにこのUDAC-MBをベースとして、高速データ配信サービスを急速に実現しつつある携帯電話網と携帯電話機に最適化したコンテンツ配信システムである「ケータイdeミュージック」を共同で開発しました。今回の技術規格は本システムをベースに、携帯電話機、セキュア・マルチメディアカード、音楽配信サーバ、不正行為対策の技術開発を進め、策定にいたったものです。
《技術的特長》
(1)ユーザーにやさしいコンテンツ保護方式
暗号化コンテンツは、ダウンロードするのみならず、利用者同士で通信費用や流通費用なしで高速にセキュア・マルチメディアカード間コピーをすることができます。さらにコピーした暗号化コンテンツに対応する再生ライセンスキーだけを携帯電話機で購入することにより、デコーダチップ内で復号した音楽コンテンツを聴くことができます。
(1)高度なセキュリティ機能を搭載
セキュア・マルチメディアカードを音楽配信の記録メディアとして使用するためには、セキュア・マルチメディアカード自身に暗号化・復号化の機能を持たせると同時に、暗号化・復号化の際に使われるライセンスキー等をカード内の安全な領域に格納することが必要になります。このセキュア・マルチメディアカードは、既存のマルチメディアカードに、これらの新しい機能と、コンテンツ保護関連命令セット*7を追加することで、音楽配信システムで要求されるセキュリティレベルを達成しました(SDMI準拠)。
(2)既存のマルチメディアカードとの互換性を維持
マルチメディアカードとの上位互換性を保つため、厚みも含め全く同一の外形を採用しました。これにより、このセキュア・マルチメディアカードは、コンテンツ保護機能が必要な新たな機器だけでなく、既存のマルチメディアカード対応機器にも使用できます。
(3)高速書き込みを実現
レコード店に設置されるキオスク端末などからの高速ダウンロードを想定し、2000年には2MB/秒、2001年には20MB/秒の書込み速度を実現する予定です。これにより、1時間分の音楽(約60MB)を約3秒でダウンロード可能になります。
(4)国際標準化を推進
本セキュア・マルチメディアカード規格をベースとしたセキュア・マルチメディアカードを、日立、インフィニオン社、三洋電機の3社でマルチメディアカード・アソシエーション(以下、MMCA)*8に対し、コンテンツ保護機能付きセキュア・マルチメディアカードのオープンスタンダードとすべく提案しました。この技術により、音楽配信用途だけでなく、書籍、画像などコンテンツ保護対策を必要とする各種コンテンツ配信に柔軟に対応することが可能になります。
このセキュア・マルチメディアカードは16MB品を2000年第2四半期に製品化し、その後32MB/64MB品を2000年後半、128MB品を2001年に順次製品化していきます。
(1)携帯電話機・ポータブルオーディオプレーヤ・家庭用ステレオにも変化
ヘッドホンを使用すれば、ポータブルプレーヤとして、またヘッドホン端子にスピーカーを接続すれば、家庭ではステレオとしても使用できます。また、通話中でも記録した音楽を再生してBGMとしても楽しむことができます。
(2)音楽を聴きながら、着信確認が可能
音楽を聴いている時に電話がかかってきても、ヘッドホンから着信音が聞こえるので、大事な用件を逃すことはありません。
(3)音楽を聴きながら、歌詞等の表示も可能
音楽を聴いている時、携帯電話の表示部に歌詞を表示することができます。またアーティスト名や曲のタイトルなどの音楽データも表示することができます。
(4)曲のダウンロード中に電話が切れても、曲の途中から再びダウンロードが可能
曲をダウンロードしている時に、電波状態の変化により電話が切れても、曲の最初からではなく、曲の途中から再びダウンロードすることができます。
*1 UDAC-MB(Universal Distribution with Access Control-Media Base)
コンテンツをセキュア・マルチメディアカードなどに配信し、ユーザー間でやりとりする状況において、ユーザーが不便を感じることのないような合法的コピー及び合法的再生を実現するコンテンツ保護技術。ライセンスキーと暗号化コンテンツを独立に配布するしくみなどにより、この技術を実現する。
*2 SDMI(Secure Digital Music Initiative)
ディジタル音楽の不法コピーを防止する技術仕様を取りまとめるために、1999年2月に発足した団体。RIAA(米国レコード産業協会)を始めとするコンテンツホルダーを始め、ハード、ソフト、システム関連会社を含め、110社以上が参加している。
*3 再生ライセンスキー
暗号化されたコンテンツを解くための秘密鍵(キー)を配信先のメディアに固有の公開鍵などで暗号化した情報。このライセンスキーはネットワークなどを通して購入または正当に移動することにより、セキュア・マルチメディアカード内に記録される。再生時に正当なデコーダチップ内に安全に渡して初めて暗号化コンテンツを復号できる。
*4 対称鍵暗号法
データを暗号化する時に用いる鍵と、復号化する時に用いる鍵が同一である暗号方式。国際デファクト標準としてはIBMが開発したDES(Data Encryption Standard)などがある。
*5 公開鍵暗号法
データを暗号化する時に用いる鍵と復号する時に用いる鍵が異なる暗号方式。一方の鍵から他方の鍵を探索することが困難なアルゴリズムを用いている。データの秘匿に用いる際には暗号化に用いる鍵を公開しておくことになる。国際デファクト標準としてはRSA(3人の発明者、Rivest、Shamir、Adlemanの頭文字を連ねたもの)などがある。
*6 タンパ・レジスタント(Tamper Resistant)技術
半導体チップなどの内部解析や改ざんを物理的及び論理的に防衛する技術。例えばチップ内部に強固で粘着力の高いコーティングを施し、表面を剥がすと内部の回路が完全に破壊されるようにしたり、ダミーの配線を施したりする。課金を扱うICカードなどで実用化している。
*7 コンテンツ保護関連命令セット
コンテンツ保護用セキュア・マルチメディアカード専用に用意された暗号に関する命令セットである。ENCRYPT、DECRYPT等の命令がある。
*8 マルチメディアカード・アソシエーション(MultiMediaCard Association)
世界最小、最軽量の小型セキュア・マルチメディアカードであるマルチメディアカードの標準化団体であり、現在、約60社の参加メンバー会社で構成される。
以上