98-4-27
株式会社 東芝
トヨタ自動車株式会社
富士通株式会社

Sバンド・モバイル・デジタル衛星放送サービス事業会社の設立について

株式会社東芝とトヨタ自動車株式会社、富士通株式会社は、2001年からの移動体向け多チャンネル・マルチメディア全国放送サービスの開始を目指して、3社を中心にさらに放送会社、車載機器メーカなど5社(本日現在)を加えて、5月末日までに放送事業会社を設立します。今後も、新会社は広く出資会社を募ることとし、すでに上記8社に加えて4社の出資も予定されています。

同サービスは、既存のCS・BS放送と異なり、Sバンド(2.6GHz帯)を使用することで、受信アンテナの小型化が可能となり、これまで適切な受信手段を持たなかった自動車を中心とした移動体を対象に、高音質の音楽、画像、データを組み合わせたマルチメディア放送を提供します。本サービスは、21世紀のモバイル向け社会インフラの1つとして、東芝の「Sバンド・モバイル・マルチメディア衛星放送(RadiVision)構想」を基本コンセプトにしたものです。既存の放送サービスとは異なり、全国どこででも、高速で移動しながら受信ができる全く新しい放送サービスです。

現在、電気通信技術審議会で同サービスの放送方式の審議を行っており、新会社は同審議会に対し方式提案を行うなど積極的に対応することとしており、99年の放送免許取得を目指します。あわせて、放送インフラ設備やモバイル端末の開発・整備を進め、2000年打上げ予定の商用衛星を利用して、2001年初頭から放送サービスを開始する予定です。サービス開始当初は、カーオーディオ、カーナビなどの車載端末を中心にサービスを展開し、契約加入台数で2003年に200万台、2010年に1000万台を目標としています。なお、新会社は、今後増資等により、最終的に資本金400億円規模の会社となる予定です。

新会社設立の背景と狙い

近年のマルチメディア・デジタル技術の進展の中で、放送事業におけるデジタル化・多チャンネル化が世界的規模で急速に進んでいます。しかし、これらのデジタル放送サービスは、いずれもホームユースでの利用を中心とした固定受信が対象であり、国内だけで7000万台にのぼる自動車を中心とした移動体へのサービス提供については重点がおかれていませんでした。
一方、92年の世界無線主管庁会議において、移動受信可能な衛星デジタル音声放送向け周波数の分配が決定されるとともに、移動体受信に適した画像圧縮符号化技術であるMPEG4や大電力・大型衛星技術の進歩により、技術的にも移動体向けのマルチメディア・多チャンネル放送の実用化が可能となってきました。
こうした動きを受けて、欧米ではモバイル向け衛星音声放送サービスの実用化が進められています。国内では、昨年7月に東芝を中心に民間企業13社が「Sバンド・モバイル・マルチメディア衛星放送サービス事業研究会」を結成し、「RadiVision構想」をベースに技術的内容や市場性の確認を進めるとともに、9月には郵政省に本サービスの提案を行いました。トヨタ自動車は、ITS(高度道路交通システム)および情報通信への取り組みの一環として、自動車向けの大容量の情報提供を可能とする衛星の利用可能性の検討および実験を含む研究開発を進めてきました。また、富士通は、ITSやモバイル・コンピューティング分野を有力な市場と位置づけて研究開発に取り組んできており、モバイル・マルチメディア衛星放送サービスを、こうした新分野の通信インフラとして注目してきました。
今般、これらの3社を中心に本サービス内容の事業化に向けて合意に達したことから、放送事業会社を設立し、具体的なサービス開始に向けての活動を開始することとなりました。
モバイル・デジタル衛星放送サービスの特長
(1) 車載・携帯型の移動端末で受信できる全国放送
降雨などによる電波減衰の少ないSバンドを利用して、衛星から大電力トランスポンダ(中継器)により電波を送信するため、小形アンテナで安定した受信ができます。伝送方式としてマルチパス(複数電波の同時受信)に対応した「符号分割多重(CDM:Code Division Multiplex)方式」を採用しています。これにより、ビル影や山間部・トンネル内などの電波の届かない場所に地上再送信設備(ギャップフィラー)を敷設することが可能となり、全国、どこででも視聴することができます。
(2) 最新のデジタル技術による多チャンネル放送
画像の圧縮符号化方式には、移動体放送を考慮して誤り耐性を内在したMPEG4を、音声の圧縮符号化方式にはAACなどの最新のデジタル技術を採用し、高品質音声、画像、データを組み合わせたマルチメディア放送を提供します。データレートは256kbps/チャンネルを基本に、番組内容に応じて30〜80番組を同時に放送できます。
(3) 多彩な放送サービス内容
放送サービスの内容は、サービス提供形態に応じて、「基本サービス」と「付加価値サービス」に分類されます。「基本サービス」では、CD並みの高音質な音楽専門チャンネルやニュース、気象情報などのマルチメディア放送を提供します。「付加価値サービス」では、エンターテインメント、教養番組、スポーツなどの各種情報、データ放送、カーナビ地図情報や各種アプリケーションデータなどのデータ配信、PCインターネット放送などを予定しています。料金は、「基本サービス」については定額制とし、「付加価値サービス」については今後決定していきます。
(4) 利用形態に応じた多彩な受信機器
受信機器は、利用形態に応じた多彩なバリエーションが想定されています。
サービス開始当初は、カーオーディオ型とカーナビ型の製品化をすすめ、順次携帯端末型の開発にも取り組んでいきます。
・車載用カーオーディオ型
・携帯用小形ラジオ型
・車載用マルチメディア(カーナビ)型
・携帯用マルチメディア型
新会社の概要
社名: 日本モバイルブロードキャスティング株式会社(仮称)
資本金:5億円(設立時)
社長:未定(東芝から派遣)
所在地:東京都中央区
設立時の出資企業
(本日現在)
: (株)東芝/トヨタ自動車(株)/富士通(株)
(株)エフエム東京/(株)ケンウッド/(株)デンソー
アルパイン(株)/日本テレビ放送網(株)(予定)
今後出資を予定している企業
(本日現在)
: (株)日本サテライトシステムズ/三井物産(株)
富士通テン(株)/(株)さくら銀行
提案中のシステム主要諸元 :
サービス周波数
フィーダリング周波数帯
サービスエリア
データレート
伝送容量
画像フォーマット
音声フォーマット
マルチパス干渉対策
不感帯対策
チャンネル多重化方式
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Sバンド2630〜2655MHz
Kuバンド
日本全国とその近海
256kbps/チャンネル
256kbps×30チャンネル以上
MPEG4など
AACまたはTwinVQなど
アンテナダイバーシティ
ギャップフィラー/インターリーブ
符号分割多重(CDM)方式

以 上


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