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1997-0215
平成9年10月22日
株式会社富士通研究所

自律分散型の工場内搬送ロボットシステムを実用化

〜 ロボット間の契約機能(話合い)と回避機能(擦れ違い)で中央管理システムなしに物を運ぶ 〜

株式会社富士通研究所(社長:佐藤 繁、本社:川崎市)は、自律分散型の工場内搬送ロボットシステムを開発、実用化に成功いたしました。本システムは契約機能(ロボットと各種作業工程間で無線による会話を行い自律的に搬送先を決定する)と、回避機能(1本の誘導路上を走行する搬送ロボットが人や他のロボットを自律的に避ける)により、工場の製造ラインの頻繁な変更などに柔軟に対応できます。
これにより搬送ロボットの経路や工程を管理統括する中央管理システムが不要となり、ロボットの台数や搬送経路の変更が容易となる他、一部のロボットの故障がシステム全体に致命的な支障となることもありません。さらに、単線の誘導路でのロボット同士の擦れ違いが可能となったことで、双方向の効率の良い搬送作業が、省スペース、低コストで実現できました。

[開発の背景]
従来の搬送システムでは、中央のコンピュータが、全ての自走車と作業工程を管理し、自走車への仕事の割り当てや自走車同士の衝突防止のための経路計画を行っていました。従って、自走車の台数や搬送経路を変更する際には、中央のプログラムの煩雑な修正作業に時間とコストがかかる他、一部の自走車が故障した際には、プログラムで関係付けられている様々な処理項目で支障をきたすため、システム全体を停止せざるを得ない状況でした。また、従来システムは、単線の誘導路では双方向の搬送ができず、複線化しても巡回式となり、適時に最短経路での走行が行えないため、その搬送効率は非常に低いものでした。

[本システムの特徴]
本搬送システムは、自律的な構成要素の協調により全体の秩序を生成するという自律分散の考え方に立ち、構築されています。

●契約ネット:
無線通信で行います。例えば、工程1が荷物を工程2へ運ぶ仕事を掲示すると、各ロボットは自分が工程1の荷物を受け取るまでに必要な時間を応答します(入札)。工程1はその中で最も短い時間を入札してきたロボットに仕事を割り当てます(契約)。この契約ネットにより中央管理によるロボットへの仕事の割り当てが不要となりました。
●ロボットの衝突回避:
昆虫のように、単純な反射運動を状況の変化に応じて発現させることで実現しています。例えば、障害物を避ける、誘導路に沿う、誘導路に戻るといった反射運動を準備し、順に発現の優先順位を付けておけば、誘導路があればこれに沿い、障害物があればこれを避け、障害物がなくなれば誘導路に戻ります。これは、米マサチューセッツ工科大学人工知能研究所所長のロドニー・ブルックス氏が提唱し、人工知能実現への有力手段とされているサブサンプション・アーキテクチャという方式に基づいています。この方式により、状況の変化に対する柔軟で素早い反応を低コストで実現することができました。この衝突回避機能により、中央管理によるロボットの経路計画が不要となりました。
● その他:
本システムでは、万一ロボットが誘導路から離れ迷子になった時でも、周囲の人がロボットを押して誘導路に導いてやれば搬送作業を続行します。人が積極的にロボットに関わることによって、システムの安定化を図る一方で、まだまだ完全でない知能ロボットを現場で鍛えながら発展させようとする狙いがあります。

この搬送システムは、現在、富士通鹿沼工場(栃木県鹿沼市)で試験運用されており、プリント板の搬送を行っています。本格的なシステムを、本年末に同工場に導入していく予定です。


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