[ PRESS RELEASE ] |
![]() 1997-118 平成9年6月9日 株式会社富士通研究所 |
株式会社富士通研究所(社長:佐藤 繁,本社:川崎市中原区)はこのほど、これからの0.25um以下のロジック、およびメモリLSIの製造における研磨工程*1)に適用できる「高速研磨が可能な研磨剤」と「研磨剤のリサイクル技術」の開発に成功しました。
[開発の背景]
LSIテクノロジの進歩により、トランジスタと配線の微細化が進んでおります。また、配線は単なる微細化だけでなく、配線層数を増加させて電気的特性の向上が図られています。
配線の多層化に伴う表面段差の増大は、ウェハ表面の研磨(CMP)によって、平坦化することで解決できます。
しかし,従来の研磨工程で使用されている研磨剤は研磨速度が遅いため、平坦化に必要な厚さを研磨するのに大量の研磨剤を必要としました。たとえば、1枚のウェーハを1回研磨するためには、3分の研磨時間と900ccの研磨剤が消費されています。1年間では研磨装置1台あたり、150000リットルになります。また、研磨剤濃度(砥粒濃度)が10%以上と高いことに加えて、使用済み研磨剤の再生が困難なため、研磨廃液に含まれている大量の固形物を廃棄処理する必要がありました。このため、LSI製造における研磨技術では、コストと環境の両面から、研磨剤の使用量と廃棄量を低減することが大きな課題となっていました。
そこで当社では、三酸化二マンガンを主成分とする高速研磨剤を世界で初めて開発し、さらに従来の研磨技術では困難だった、使用済み研磨剤のリサイクル技術も同時に確立することによって研磨剤の使用量と廃棄量を大幅に低減することに成功しました。
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[再生リサイクルプロセス]
三酸化二マンガンが酸に容易に溶解することを利用しています。研磨廃液を回収し、硫酸と過酸化水素水を加えたあとフィルタで研磨廃液中に混入している研磨布の破片やごみを除去します。三酸化二マンガン研磨剤では研磨布のコンディショニング*2)が不要になるため、研磨布片によるフィルタの目詰まりはほとんど発生しません。このあと、三酸化二マンガンの作製プロセスに戻すことによって、研磨剤を容易に再生することができます*3)。三酸化二マンガン研磨剤では、pHが6-7のほぼ中性であるとともに、研磨剤濃度が変化しても一定の研磨速度が得られるため、再生時の成分制御も容易です。
[研磨速度の向上と研磨剤の削減]
開発した研磨剤では、三酸化二マンガンを砥粒として用いています。酸化膜の研磨では、従来研磨剤の4倍以上の研磨速度が得られるだけでなく、研磨速度の研磨剤濃度依存性が小さいため、研磨剤濃度を従来の10%以上から2%以下まで低下させることができます。
したがって、三酸化二マンガン研磨剤では、研磨剤使用量の大幅な削減に加えてスループットの向上も同時に実現することができます。
●研磨工程で使用されている従来の研磨剤
研磨速度が研磨剤濃度によって大幅に変化するため、砥粒濃度とpHの高精度制御が必要なことに加え、研磨布のコンディショニングによる研磨布片が研磨廃液に大量に混入しているため、フィルタで砥粒と異物を分離することが容易でなく、使用済み研磨剤の再生が困難でした。さらに、アルミナ(Al2O3)のように薬品に溶解しない砥粒が含まれている場合には、廃棄処理も容易ではないという問題がありました。また,コストが高く、1回の研磨での使用量も多いため、低価格のLSIに適用することができませんでした。
なお本研究は、6月10日〜12日に京都で開催される1997Symposium on VLSI Technologyで発表いたします。
以上