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1997-114
平成9年6月5日
富士通株式会社

次世代高性能システムLSI用内蔵SRAMの高集積化技術を開発

当社はこのほど、次世代システムLSI技術に不可欠な高集積内蔵SRAM技術を開発いたしました。本技術により、ギガヘルツ級の高性能マイクロプロセッサや、高性能モバイルコンピューティング機能を有する携帯情報処理機器の小型・軽量化や電池寿命の長時間化を実現することができます。

【開発の背景と成果】

SRAMは、CPUとDRAMなどのメインメモリとの間で、高速に情報をやりとりするためのキャッシュメモリとして必要不可欠であり、高速化のために内蔵化が進んでおります。
次世代ロジックLSIでは、ロジック用トランジスタのゲート長は0.18ミクロンになると同時に、同世代で実用化されるマイクロプロセッサでは、5千万個から1億個のトランジスタが集積され、かつギガヘルツ級の周波数での動作が必要になると予想され、内蔵SRAMにもさらなる高速化が要求されております。
このたび開発した内蔵SRAM技術は、2000年に本格的な量産が開始される次世代システム LSIの主要技術です。 当社では、現在実用化段階にある0.25ミクロンCMOSロジックLSI技術をさらに発展させ、4平方ミクロン強(現在10平方ミクロン)という世界最小のセルサイズを実現しました。
セルの微細化をはかることにより、アクセス時間も1.5ナノ秒という高速性能を実現する見通しを得ました。
また、次世代ロジックLSIは携帯機器への対応を考慮した低消費電力動作が不可欠であるため、低電圧での動作に対しても内蔵SRAMが誤動作しないような安定性を確保いたしました。

【 開発のポイント】

当社では、0.25ミクロン世代で確立した、表面チャネル型デュアルゲート構造(注1)、コバルトサリサイド技術(注2)、レトログレードウェル構造(注3)を踏まえた上で、シャロートレンチ素子分離技術(注4)、微細局所配線技術(注5)、積重ねコンタクト技術(注6)を導入すると同時に、KrFエキシマステッパの性能を最大限に引き出した設計ルール(最小寸法0.2ミクロン)を採用することにより、低電圧動作,高集積,高速化が可能な内蔵SRAMセルを実現しました。
従来の技術では、トランジスタが相互干渉するため、NチャネルとPチャネルの2つの導電型のトランジスタ同士を近づけることは困難でしたが、上記のシャロートレンチ素子分離、微細局所配線、コバルトサリサイド技術によって、相互干渉を押さえたうえでこの2つのトランジスタ同士を近づけることが可能になりました。これにより、低電圧でのデータ保持が可能です。
また、積み重ねコンタクト技術により微細局所配線の近くに、セルへの電源供給配線を接続することも可能となり、セルサイズの縮小に貢献します。
さらに、セルのトランジスタの設計ルールを最適化することで、セルサイズも小さくなり、1.5ナノ秒以下のアクセスタイムが得られる見通しを得ております。

なお、本技術の詳細は、6月10日から京都で開催される「1997 Symposium on VLSI Technology」 において発表いたします。

【用語説明】

(注1)
表面チャネル型デュアルゲート構造:
MOSトランジスタの電気的な導通路(チャネル)がN型・P型双方ともにシリコン基板表面に形成されるよう、NMOSトランジスタにはN型のポリシリコンゲート電極、PMOSトランジスタにはP型のポリシリコンゲート電極を用いる構造。0.35ミクロン世代までは、PMOSトランジスタもN型のポリシリコンゲート電極を採用していたが0.25ミクロン世代からショートチャネル効果に強く、またN型・P型双方のしきい値電圧のバランスが取りやすい本構造を採用。

(注2)
コバルトサリサイド技術:
MOSトランジスタのゲート電極、ソース・ドレイン電極拡散層を形成した後、ゲート電極側部以外のシリコン面が露出された状態で、露出したシリコン面にコバルトを反応させてコバルトとシリコンの珪化物を生成し低抵抗電極をマスク工程なしにゲート上、ソース・ドレイン表面に同時に形成するプロセス技術。

(注3)
レトログレードウェル構造:
表面から基板内部に向かうにつれて不純物濃度が高くなるようなウェル構造。浅くしても表面部分へ影響を与えないでラッチアップと呼ばれる誤動作を避け得る低い抵抗率のウェルが得られるのが特徴。

(注4)
シャロートレンチ素子分離技術:
トランジスタ同士を電気的に分離するために、浅い溝をシリコン基板に掘り、絶縁物で埋め戻して平坦面が得られるよう加工するプロセス技術。

(注5)
微細局所配線:
SRAMセル内部の極めて短い距離の電気的接続を行う配線で、抵抗率が一般の配線よりも高くなるが、膜厚が薄くてすむので微細なパターンを適用することができる。

(注6)
積重ねコンタクト技術:
電極のコンタクト窓を2回に分けて形成するが、上下の窓の間に特別な金属層を挟むことなく直接窓を接続してしまう技術。

以 上


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