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No.96-0176
平成8年10月17日
富士通株式会社

多様なメディア処理に対応した機器組み込み用メディアプロセッサコアを開発

-さまざまなマルチメディア機能を1 チップ化したシステムASICを提供-

当社はこのほど、MPEG2のデータをリアルタイムで伸長できる性能をもつ新しいアーキテクチャに基づいたメディアプロセッサコアを開発いたしました。また、そのコアを採用し、1チップで多様なマルチメディア処理を実現するシステムASICの販売活動を10月17日より開始いたします。
なお、メディアプロセッサコアは、97年第2四半期より提供を開始するとともに、VSI (*1)のIPマクロとして登録を予定しております。

本メディアプロセッサコアは、6つの演算を同時に実行することができ、ピーク性能は1BOPSを実現し、MPEGに代表されるメディア処理用チップに効果的な命令・データ転送機能を内蔵しております。これにより、リアルタイムで動画・音声再生を行いながら、同時に3次元グラフィックスを描画処理できるなど、従来複数のチップで行っていた処理が1チップで可能になります。また、DSPコアと比較すると、約10倍の性能を実現しております。
このコアを採用したシステムASICには、高性能SDRAMインタフェース、ハードウェアでウィンドウを制御するグラフィックディスプレイコントローラなどを内蔵しております。SDRAMインタフェースは、 PCIバスの5.5倍の転送能力をもち、高速・大容量のメディアストリームをサポートするとともに、システム全体でメモリを統一したUMA構成(*2)を実現しました。これらにより、コンパクトで低コスト、高性能なシステムを構成できます。
利用分野としては、各種のディジタルAVシステム、マルチメディア通信システムへ応用することができます。たとえば、動画・オーディオとナビゲーション機能、通信機能を統合したナビシステムや、描画・画面制御と音声処理、通信機能を統合したエンタテイメントシステム、 WWWを通じて多様なマルチメディアコンテンツに対応できるインターネット端末などに適用可能です。

今回、このコアを搭載した第一弾の製品として、メディア処理用システムASICを富士通テン(株)と共同開発いたしました。本システムASICは、当社製高性能 MPUであるSPARClite と連携して動作し、MPEGをはじめとする多様なメディア処理に対応し、富士通テンの製品に搭載されます。

また、メディアプロセッサコアについては、10月21日から米国カリフォルニア州サンノゼで行われる「マイクロプロセッサ・フォーラム」にて発表いたします。

メディアプロセッサの特長

(1)
高性能プロセッサコア
1サイクルで3つの32ビット演算、または6つの16ビット演算を同時に実行できます。
プロセッサコア単体では最高で180MHzまで動作可能なため、ピーク性能は1BOPSに達します。この性能はMPEG2のリアルタイムデコードが可能なレベルです。MPEG1のリアルデコードを処理する場合には、余った能力で音響や通信処理など他の処理を実行できます。
BOPS :Billion Operations / Second の略。1 秒間に10億回の演算を実行する性能を指します。

(2)
小さなコアによりASIC展開可能
プロセッサコア (RAM 除く): 4.3mm2(約5万ゲート)
プロセッサモジュール(RAN 含む):12.3mm2

(3)
命令 RAN・データRAM内蔵
命令 RAM : 8k バイト
データRAM : 8k バイト

(4)
高速 DMA転送機能(*3)内蔵
メディアデータの流れでは同じデータの参照頻度が低いため、キャッシュメモリによる方式では逆にパフォーマンスを落とします。同プロセッサは、外部のSDRAMとの特殊な転送モードを備えたDMA転送と内蔵 RAMの組み合わせにより、効率的にデータ転送を行うことができます。
DMA転送は2つのモードを備えています。ブロック転送モードでは、連続した領域のデータを任意のバイト境界から1度に転送します。矩形転送モードでは、矩形領域のデータを任意のバイト境界から1度に転送します。このモードは、逆離散コサイン変換をはじめとする画像データ処理に有効です。

(5)
テクノロジ
プロセス :CMOSプロセス/0.35 μm /AL3層

さらに、マルチメディアシステムを容易に構築できるように、複雑なプログラミングが不要なソフトウェアライブラリの充実を図っていきます。

富士通テン(株) 向けカスタム品の特長

(1)
性能
推奨動作周波数 :90MHz
メディアプロセッサ演算性能 :540MOPS
外部 SDRAMとのデータ転送速度 :720MB/秒

プロセッサコア自体は180MHzで動作可能ですが、本ASICを搭載するシステムの要求より、プロセッサを含む内部回路も外部と同じ90MHz で動作させます。

(2)
搭載モジュール
さまざまな機能モジュールを1チップ化することにより、マルチメディア機器のコストダウンを実現します。

搭載モジュール: プロセッサモジュール(メディアプロセッサコア, 内蔵RAM16Kバイト,DMA機能)
DRAMインタフェース
グラフィックディスプレイコントローラ(最大解像度:860×480)
タイマーユニット
通信ユニット
オーディオインタフェース
画像インタフェース

(3)
テクノロジ
プロセス :CMOSプロセス/0.35 μm/AL3層
電源 :内部3.3V

(4)
パッケージ
352 ピン プラスティックBGA

*** 用語説明 ***

VSI:
Virtual Socket Interfaceの略。システム要素技術を実現する複数の機能マクロを簡単に短期間に1チップに組み込むことを目的とした、マクロの設計ルールやインタフェースの標準規格。96年 9月に発足したVSI Allianceによって、検討/提案/実証が進められる。ver1.0は1996年内公開を予定している。

UMA:
Unified Memory Architectureの略。複数の機能モジュールで一つのメモリとそこにつながるバスを共有する方式。従来のシステムは、画像用のメモリとプロセッサの使用するメモリを別のメモリで構成するものが多かった。これに対し UMAは、メモリを共有するのでアクセスが競合すると性能を落とすが、それ以上にシステムをコストダウンするメリットが大きいので、最近注目されている。

DMA:
Direct Memory Accessの略。CPUを介さず、メモリ間のデータ転送を直接行う機能。画像データなどのように規則的にまとまった単位のデータを転送するのに有効です。
以上

プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。