[ PRESS RELEASE ] |
![]() 1996-0225 平成8年11月28日 株式会社富士通研究所 |
株式会社富士通研究所(社長:佐藤 繁,本社:川崎市中原区)は,このほどこれからの0.25μm以下のロジックおよびメモリLSIの製造で必須となる表面平坦化を低コストで実現できる研磨技術を開発しました。
従来の技術では、2種類の研磨プロセス(配線材料の埋め込みと層間膜の平坦化)を同一プロセスで実行することは困難でした。今回開発した技術は,二酸化マンガンを主成分とする研磨剤を用い,各種LSI の多層配線プロセスにおけるタングステンの埋め込み平坦化とシリコン酸化物からなる配線層間膜の表面平坦化の工程を同一の製造ラインでかつ低コストで実現するものです。さらに,平坦化効率が良いため、メモリやロジックあるいはこれらを混載したLSIでも同一プロセスで平坦化することができ,LSIのシステム化による少量多品種化と短納期化の要求に応えられる高生産性の混流プロセスラインを構築できます。
快適なマルチメディアシステムを実現するため,LSIでは,さらなる高速化,低消費電力化およびシステム化が切望されています。一方,これらの課題を達成するためには,トランジスタの微細化だけでは不十分であり,配線の微細化と多層化による配線負荷の低減が不可欠であることが判明しています。微細・多層配線を形成するため,研磨(*1)による表面の平坦化技術が既に一部のMPUに適用されていますが,さらなる微細化によってメモリを始めとする各種のLSIでも研磨平坦化が必須になることが予想されています。
しかし
,現在の研磨プロセスは高コストであるだけでなく被研磨材料に対する選択性(*2)が強く,配線材料の埋め込みと層間膜の平坦化の共通プロセス化が困難であり,研磨技術の向上が切望されていました。この問題を解決するため,当社は二酸化マンガンを主成分とする研磨剤を用いた研磨技術を世界で初めて開発しました。この技術は,酸化作用と機械的作用を併せ持つ二酸化マンガンを砥粒に用いることによって,配線材料であるタングステンとシリコン酸化膜からなる層間膜の両方を同一のプロセスラインで研磨できるようにするものです。さらに,乾電池の材料として大量に用いられている二酸化マンガンは資源が豊富でかつ安価であるため,低価格のLSIにも適用することができます。
タングステンの研磨ではまず,二酸化マンガンの酸化作用によって表面に脆弱な酸化膜が形成されます。つぎに,この酸化膜は二酸化マンガンの機械的作用によって削り取られます。これが繰り返されることによって研磨が進行します。従来の研磨剤のように液体の酸化剤(過酸化水素水)を添加していないため,酸化剤がタングステンのシームに染み込んでキー・ホール(*3)を発生させることがありません。
一方,シリコン酸化膜の研磨では,シリカを砥粒とする従来の研磨剤の5倍以上の研磨速度が得られています。研磨圧力を下げても十分な研磨速度が得られるため,研磨布の変形によるディッシング(*4)を大幅に低減(従来の約1/3)でき,平坦化効率(*5)を向上(従来の約3倍)させることができます。
これによって,配線パターンにおける疎密分布の影響を受けにくくなり,メモリやロジックあるいはこれらを混載したLSIでも同じように平坦化することができます。また,二酸化マンガン研磨剤には研磨布の目立て作用があるため,研磨布のコンディショニング(*6)が不要になり,スループットが向上します。さらに,二酸化マンガンは弱酸性の溶液で容易に溶解するため,研磨/洗浄後のウェーハ上に研磨剤が残存することによるLSIの歩留まりの低下を解消できます。
〔二酸化マンガン研磨剤を用いた研磨技術の主な特長〕
なお本研究は、12月2日に東京で開催される国際CMPシンポジウムで発表いたします。