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1996-0234
平成8年12月12日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所
FMV-BIBLO NCを生み出した

ノートブックパソコンの小型/軽量化のための新技術を開発

- 強度と放熱にすぐれるハイブリット筐体と超小型MCM技術 -

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富士通株式会社と株式会社富士通研究所はこのほど、パソコンの軽量/薄型化に大きく貢献する新技術開発に成功いたしました。これらの新技術は、本年11月12日に発表いたしました小型ノートブックパソコン「FMV-BIBLO NC」(Pentium 100Mhz搭載、A5ファイルサイズ、軽さ1.1Kg)に採用されております。

ノートブックパソコンには、デスクトップ機に負けない仕様や機能が要求されるかたわら、携帯機という特性から、小型・軽量・省電力性なども要求されます。

このたび開発した新技術は、小型・軽量・省電力を追求しながらも、強度・放熱・コストをも十分に満足させることができるもので、これら技術の採用により、FMV-BIBLO NCのすぐれた携帯性を実現いたしました。
今回の新技術は、以下の2つに集約されています。

  1. 小型・軽量と、強度・放熱特性にすぐれた「ハイブリッド筐体」

    一般のノートブックパソコンには、樹脂製筐体が使用されていますが、新技術では、金属と樹脂を一体化して使用する「ハイブリット筐体」を開発しました。
    金属(アルミニウム)と樹脂を一体化することにより、金属の強さ・放熱性を利用しながらも、樹脂の特長である成形の容易さや軽量性をも兼ね備えています。

  2. 高性能ながら、小型・省電力を実現した「マルチチップモジュール技術」

    一般には、部品メーカよりパッケージされたMPUやチップを購入し、それらをマザーボード上に装着しますが、今回の新技術では、各メーカよりチップを素材(ベアチップ)で購入し、当社が持つ小型実装技術を用いて、これらチップを組み合わせ、マルチチップモジュール(MCM)として完成させています。
    これにより、大きさが従来の約四分の一にできたうえ、独自のMPU冷却技術も利用しているので、空冷ファンを必要としない、省電力や小型化も実現しています。

今後は、これらの新技術を他のノートパソコンへ順次採用していくとともに、他分野製品にも、拡大していく予定です。


  1. ハイブリッド筐体技術

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    [背景および問題点]

    ノートパソコンのような携帯機器では、筐体が全重量の30%前後を占めており、筐体の軽量化が差別化の大きな要因となっています。さらに、MPUの高性能化に伴う発熱量の増大に対応するための高い放熱性が要求されており、これらを従来の樹脂筐体で実現することは困難です。この理由は軽量化のために薄肉にすると強度が低下し、 また樹脂の放熱性が低いためです。
    そこで通常のノートパソコンでは実装部品の温度上昇を防ぐために機器内部に放熱板やヒートパイプを設置したり、 マイクロファンを搭載していますがコストアップ、重量増加、設置スペースが必要といった問題があります。
    一方、強度、放熱性に優れた筐体としてMgダイキャスト製などの金属筐体もありますが軽量化が困難、製造性、コスト等に問題があり、広く普及はしていないのが現状です。

    [開発技術]

    従来のノートパソコン用筐体は量産性に優れる樹脂製の筐体が大部分を占めています。
    これに対して、今回開発した筐体(ハイブリッド筐体)は底板を軽量高強度で高放熱性のAl(アルミ)板で作り、周囲の複雑形状を量産性に優れる樹脂製としました。ハイブリッド筐体の製造方法は樹脂を金型内で成形すると同時にAl板と接着するインモールド成形法*1を応用しました。この結果、下記の特徴を有する筐体を実現しました。

    開発技術の要点は次の通りです。

    これらにより、ノートパソコンに要求される平坦度*3と接着強度*4、電磁シールド特性*5などの厳しい条件を満足する量産性に優れる新規なハイブリッド筐体の開発に成功しました。今後は他機種のノートパソコンにも適用を図ると共に、 他製品への適用も検討していきます。
    なお、この成果は来年4月にカナダ、トロントで開催される国際学会(ANTEC 1997: Annual Technical Conference & Exhibition、 SOCIETY OF PLASTIC ENGINEERS) において発表予定です。

    *1インモールド成形法
    金型内に金属部品や他部品を予めセットして樹脂と一体にして成形する技術。

    *2カシメナット
    プリント板やHDDなどの部品を筐体に固定するときに必要な雌ねじなどの固定用治具。ハイブリッド筐体のAl板に設置。

    *3平坦度
    ここでは、筐体の反りの程度を表しており、0.5〜1.0mm以下程度が基準。

    *4接着強度
    ハイブリッド筐体の樹脂とAl板の接着強度。

    *5電磁シールド特性
    プリント板、MCMなどの電子回路から発生する電磁波を外部に漏らさないようにする特性。ハイブリッド筐体のAl板はシールド効果も有する。

  2. MCM技術

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    [背景および問題点]

    ノートPCを小型・軽量化のために、ハードディスクや電池パックなど標準パーツの大きさを変えることは現状では困難です。そこで、パソコンの機能を落とさずに、マザーボードを如何に小型・軽量化するかがノートパソコンの大きな課題となっています。

    [開発技術]

    今回Pentium搭載MCM(マルチチップモジュール)を世界で始めて汎用ノートパソコンに搭載 し、小型・軽量化を実現しました。また本MCMでは最新のフリップチップ実装技術#1とビルドアップ基板#2を利用しました。この結果、従来の大きさに比べて約1/4の小型化に成功しました。
    さらに、効率的な冷却を行うため、 Pentiumのベアチップ裏面に直接放熱板を接着し、冷却するチップダイレクト冷却方式を新開発しました。この結果、従来(TCPパッケージ#3)に比べ、20%以上熱抵抗を低下させ、パソコン全体で約15℃低減しました。

    開発技術の要点は次の通りです。

    なお、上記成果は来年5月カルフォルニア(米国)で開催される国際学会ECTC(47th ELECTRONIC COMPONENTS AND TECHNOLOGY CONFERENCE)において発表予定です。

    #1フリップチップ実装
    LSI(ベアチップ)の回路面を下にして直接基板の電極に接合する方法。ワイヤボンディングに変わる方式で、ワイヤがなく、高密度・薄型が可能。

    #2ビルドアップ基板
    感光性樹脂の絶縁層と回路パターン層(銅メッキ)を交互に形成して積み上げる製法のプリント配線板。樹脂を感光によって、一度にたくさんの小さな孔で形成できるため、高密度化基板として、主流になりつつある。

    #3 TCPパッケージ
    現在Pentiumで広く使用されている小型パッケージ。端子の配線がテープ状になっているのが特徴。


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