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PRESS RELEASE (技術)

2019年1月30日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所

電力の需要家間取引システムをブロックチェーン上で実現

電力制御によるピーク時の電力安定供給に貢献

富士通株式会社(注1)(以下、富士通)と株式会社富士通研究所(注2)(以下、富士通研究所)は、ブロックチェーン技術を応用し、電力の需要家(工場や店舗などの電力の使用者)間で不足・余剰電力の取引を実現するシステムを開発しました。

近年取り組みが進んでいる、電力会社と需要家が協力して電力の使用量を調整するデマンドレスポンス(以下、DR)では、電力会社からの調整要請に対して需要家が対応できず、DR制御の成功率が低い場合があることが課題でした。

今回、需要家ごとの自家発電や節電で生み出される余剰電力を、需要家間で効率よく融通する仕組みをブロックチェーン上に適用した電力取引システムを開発しました。株式会社エナリス(注3)(以下、エナリス社)の協力のもと、消費電力実績データに本システムを活用したシミュレーションを実施した結果、DR成功率が約4割向上することを確認しました。

DR制御の成功率向上はDRに参加する需要家の増加につながり、安定した電力供給や、DRの狙いの一つでもある再生可能エネルギーの導入拡大を実現することが可能になります。富士通と富士通研究所は、本システムのさらなる検証を進め、脱炭素社会の実現に取り組んでいきます。

本システムに搭載した技術は、2019年1月30日(水曜日)から2月1日(金曜日)にかけて東京ビッグサイトで開催される「ENEX2019 第43回地球環境とエネルギーの調和展」に出展します。

開発の背景

再生可能エネルギーの導入など脱炭素社会に向けた取り組みが進む中、電力会社と需要家が協力して電力の使用量を調整するDRが注目されています。DRでは、電力が足りなくなると予想されるピーク時間帯に、節電に貢献した需要家へ対価を支払うことで、電力使用量の削減や平準化を図ることを主要な目的としています。

実際には、電力会社からの調整要請を受け、需要家ごとの節電量をコントロールするアグリゲーターが仲介する形で、需要家ごとに節電量を割り当てます。要請された期間に電力削減量を達成した場合に、電力会社からアグリゲーターが報酬を受け取り、その報酬を需要家のそれぞれの節電量に合わせて配分します。しかし、需要家によっては、所有する自家発電機を起動する際の発電量の不足や、電力消費量の突発的な増加により、節電量を達成できない場合があり、報酬が受け取れない事案も発生しています。

脱炭素社会を実現するためには、DRの成功率(要請された節電量を達成し報酬を受け取れた割合)を高め、需要家がDRに参加した場合の投資効果を確保し、参加者を増加させることが重要です。

課題

現状では、アグリゲーターが各需要家と1対1のやりとりを行い、節電量の配分や達成可否の確認を行っています。需要家が節電量を高確率で達成するためには、節電量が不足している場合に、他の需要家の節電量の一部を迅速に融通しあう取引が有効と考えられますが、DRではその仕組みが導入されていませんでした。

図1. 需要家間で電力の融通を行うデマンドレスポンス(DR)のイメージ
図1. 需要家間で電力の融通を行うデマンドレスポンス(DR)のイメージ
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開発した技術

富士通研究所は、これまでに開発したブロックチェーン技術を活用し、アグリゲーターと契約した需要家同士で余剰電力を相互に融通する取引システムを開発しました。

DRでは、短時間で節電の可否を回答しないといけない場合があります。今回、図2のように、まずは取引システムに登録されている売り要求から融通可能な電力の総和を求め、買い要求の中から買える分だけ順番に素早く承認処理を確定する技術を開発し、迅速に可否を回答することを可能にしました。また、回答後に、確定済みの買い要求に対し、売り要求を無駄なく配分することで取引を最適化する技術も開発しました。

この2つのフェーズからなる電力融通取引技術(特許出願済)を適用した取引システムをブロックチェーン上で構築し、これらの取引を記録することで電力融通の取引結果の透明性を保証し、確定した売り買いの取引結果(電力の節電量)に基づいた報酬の正確な配分が可能になります。

本取引システムにより、要請された節電量が難しい場合でも、他の需要家の余剰電力を自らの節電量の目標に合わせて迅速に購入・補てんすることが可能となり、節電量を安定して達成することが可能となります。

図2. 需要家間同士での電力融通取引技術の概要
図2. 需要家間同士での電力融通取引技術の概要
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効果

エナリス社の協力のもと、2018年の夏季と冬季の2期分において、需要家20拠点分の消費電力の実績ログを使用して、需要家間での電力融通が可能になった場合のシミュレーションを実施しました。この結果、従来の方法に比べて、DRの成功率が最大で約4割向上することを確認しました。

本システムにより、DRの普及を支援し、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを促進できるようになります。

今後

富士通では、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す「RE100」に加盟しており、脱炭素社会の実現に取り組んでいきます。この一環として、本システムの実環境での検証を進め、2019年度以降の実用化を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 富士通株式会社:
本社 東京都港区、代表取締役社長 田中達也。
注2 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 古田英範。
注3 株式会社エナリス:
本社 東京都千代田区、代表取締役社長 小林昌宏。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
セキュリティ研究所
電話 044-754-2681(直通)
メール fjbcdr-ir@ml.labs.fujitsu.com


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