PRESS RELEASE
2018年3月13日
国立大学法人東京大学大学院教育学研究科附属学校教育高度化・効果検証センター
東京大学教育学部附属中等教育学校
富士通株式会社
株式会社富士通研究所
東京大学と富士通、アクティブラーニングにおける生徒の活動過程を見える化し、
授業の活性化につなげる共同実証実験を開始
国立大学法人東京大学大学院教育学研究科附属学校教育高度化・効果検証センター(以下 東京大学、注1)と東京大学教育学部附属中等教育学校(以下 東大附属、注2)、富士通株式会社(以下 富士通、注3)、株式会社富士通研究所(以下 富士通研究所、注4)は、富士通研究所が開発した部屋全体をデジタル化する空間UI(注5)技術を用いて、アクティブラーニングにおける生徒の活動の見える化を行う共同実証実験を、東大附属の授業において、2018年4月10日から2019年3月20日まで実施します。
空間UI技術は、壁や机などの共有スペースを丸ごとインタラクションスペースとして構成し、スマートデバイスからの持ち込み資料や、デジタル付箋に書いたメモを大画面で共有することで、参加者が顔をあげて議論することができる技術です。本実証実験では、空間UI技術のスペースの中で行われた活動データを可視化する技術を新たに開発し、グループ活動におけるコミュニケーションの流れを、スマートデバイスからの情報共有やデジタル付箋紙の作成、操作、その際の人の動きなどから時系列に取得します。これにより、教員は、生徒一人ひとりの活動状況から、最終結果に至ったプロセスまでを把握することができ、授業の振り返りを行うことができます。
東京大学と東大附属は、本実証実験を通じ、協働学習の新たな手法を開発し、教育の質向上を推進していきます。富士通グループは、取得した活動データなどを分析することで、コミュニケーションを活性化させる現場改善技術を開発し、教育現場や業務シーンなどに広く使えるサービスを提供していきます。
背景
近年、教育の現場では、生徒が自らの考えを積極的に発信するアクティブラーニングの一環として、グループで課題のゴールに向けて取り組む協働学習が授業に取り入れられるようになっています。協働学習では、最終結果に至ったプロセスも重要な良否判定の基準となりますが、現状では紙と鉛筆、黒板などを使っており、成果物ができるまでの流れを把握することは難しい状況です。
東京大学と東大附属では、2005年度から協働学習の手法を研究する中で、ICT活用の有効性に着目し、2017年度からは空間UI技術を導入した教室において協働学習の授業の実践を進めてきました。今回、協働学習のコミュニケーションを見える化することで、生徒一人ひとりの動きと学習のゴールに向けた全体過程が把握できるようになり、協働学習の新たな手法の確立につながると期待しています。
実証実験の概要
- 実証期間
2018年4月10日~2019年3月20日(予定)
- 実証授業
東大附属の3・4年を対象とした「課題別学習」授業(予定)
- 実証の目的
協働学習における生徒間、および教員と生徒間のコミュニケーションの流れを見える化することで、最終結果を導いたプロセスを把握します。そこから、最適なグループ人数や生徒の特性を活かしたグループ編成、授業の進め方、教員の指導など、協働学習に対する新たな評価手法を発見します。
- 空間UI技術について
教室内に、プロジェクターとカメラを組み合わせた装置を複数設置し、空間全体を一つのウィンドウシステムとしてまるごとデジタル化します。壁や机に仮想的に映し出された画面に、持ち込んだスマートデバイスからの情報を転送したり、デジタル付箋紙上にメモをして共有したりすることができます。なお、カメラにより、電子ペンの動きを読み取り仮想画面上に文字を書くことや、簡単な動作で机に投影された画像を目の前の壁に送ったりすることが可能になります。
今回、これらの既存の空間UI技術に活動データを取得する技術を追加し、デジタル付箋などのコンテンツの内容や作成・操作履歴、それに関わった人数や動きを紐づけて時系列に収集し、コミュニケーションの流れをダッシュボード上で見える化します。
- 実証実験の内容
協働学習の授業において、生徒がスマートデバイスで調べた内容やデジタル付箋に書いたメモ、それに対する作成・操作について時系列に収集します。これにより、いつ、だれが、どのような内容を発信し、それに対してグループメンバーはどう動いたか、を見える化します。
教員は、そのデータを活用し、授業中のどのような生徒の行動がグループを良い結果に導いたか、どのようなチーム編成が的確か、教員と生徒のコミュニケーション履歴から教員の指導が適切だったか、といった振り返りを行い、協働学習の活性化を図っていきます。また、取得したデータを分析し、コミュニケーションを改善する技術の開発とその有効性についても検証します。
画面.ダッシュボード上に表示した活動過程の見える化
拡大イメージ
今後
東京大学と東大附属は、本実証実験で得られた知見を活かして新しい協働学習の手法の開発を進めていきます。
富士通と富士通研究所は、現場からの協働学習のデータをクラウドに蓄積し、現場活性のための分析技術をAI技術を活用し開発していきます。また、教育現場にかかわらず、様々な業種・業務で活用できるサービスを提供し、現場のコミュニケーション活性化に貢献していきます。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- 注1 国立大学法人東京大学大学院教育学研究科附属学校教育高度化・効果検証センター:
- 所在地 東京都文京区、センター長 能智正博。
- 注2 東京大学教育学部附属中等教育学校:
- 所在地 東京都中野区、校長 恒吉僚子。
- 注3 富士通株式会社:
- 本社 東京都港区、代表取締役社長 田中達也。
- 注4 株式会社富士通研究所:
- 本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木繁。
- 注5 空間UI技術:
- UIとはUser Interfaceの略。
本件に関するお問い合わせ
富士通コンタクトライン(総合窓口)
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