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PRESS RELEASE (技術)

2018年3月12日
株式会社富士通研究所
Fujitsu Laboratories of America, Inc
富士通研究開発中心有限公司

光ネットワークの構築・運用管理に必要な光伝送信号パラメーターの
深層学習を用いた推定技術を開発

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)、Fujitsu Laboratories of America, Inc.(注2)と富士通研究開発中心有限公司(注3)は、光ネットワークの構築・運用管理を容易にするため、光受信器の入力信号から光伝送信号パラメーターを直接推定する技術を開発しました。今回、パラメーターを推定するための学習の際に、光通信システム特有の課題となる光伝送信号の特性の偏りによる影響を解消して光信号対雑音比(注4、以下、光SN比)や転送速度といった光伝送信号のパラメーターを、深層学習技術を活用して学習する技術を開発しました。光ネットワークを模擬した伝送実験系を構築し、約1万個のデータによって光SN比は1%の誤差で、変調方式とシンボルレート(注5)は5%の誤差で推定可能なことを実験検証しました。

本技術を用いることで、光ネットワークの構築や運用中に問題が発生した際に、専門家が専用の測定器を用いて数日かけて行っていた作業を、分単位の時間で行えるようになり、構築・運用管理の容易化に貢献します。

本技術の詳細は、3月11日(日曜日)から15日(木曜日)まで米国サンディエゴで開催されている光ファイバー通信に関する世界最大の国際会議「OFC 2018(The Optical Networking and Communication Conference & Exhibition 2018)」にて発表します。

開発の背景

ICT社会を支える光ネットワークの通信トラフィックは、今後、インターネットに接続される端末とともに爆発的に増大します。これらのデータを収容するため、光ネットワークには新しい光伝送技術が次々と適用されており、今後、さらなる多様化・複雑化が考えられます。そのため、光ネットワークの構築・運用管理を容易にする技術が求められています。

課題

これまで、光ネットワークを構築する際や、運用で問題が発生した際には、本分野の専門家が専用の測定器を現地に持ち込み、原因究明のための測定・調査を行う必要がありました。大容量化・長距離化を目指す光ネットワーク内の光伝送信号の種類や機器の設定パラメーターはますます複雑化するため、構築や問題の解決に数日の時間を要する可能性もあり、迅速な光ファイバーネットワーク構築・管理の大きな課題となります。これを解決するため、光ネットワークの状況を遠隔から監視・モニタリングできる技術の開発が求められています。しかし、専用測定器を使うことなく運用管理者が必要な情報を測定するには、光信号特有の性質により実現に課題がありました。

図1 今回開発した技術の概要
図1 今回開発した技術の概要

開発した技術

今回、遠隔の光受信器における光伝送信号からネットワークの構築・運用に必要となる光伝送信号パラメーター(SN比、変調方式、シンボルレート)を測定する技術を開発しました。

開発した技術では、光受信器の受信信号を深層ニューラルネットワークへの入力データ、専用測定器で測定した結果を教師ラベルとし、深層ニューラルネットワークが専用測定器の測定結果を再現するように学習することで、光伝送信号パラメーターを推定します。ここで、受信した光伝送信号には、レーザー周波数などの信号特性に偏りが生じるため、そのまま学習データとして利用すると、偏った状況に特化した学習となってしまい、推定誤差が大きくなってしまいます。そこで、光伝送信号を元に状態を変えた信号を仮想的に生成しました。たとえば、レーザー周波数を変えたデータを仮想的に多数生成し、それらを合わせて学習データとすることで、様々な状況を学習結果に反映することが可能となり、推定誤差を小さくすることが可能となりました。

図2 今回開発した技術の概要
図2 今回開発した技術の概要

効果

今回、実際の光ネットワークに適用される光受信器を模擬した伝送実験系を構築し、約1万個のデータによって光SN比は1%の誤差で、変調方式とシンボルレートは5%の誤差で推定可能なことを実験検証しました。本技術を用いることで、これまで専門家が専用の測定器を用いて数日かけて行っていた作業を、遠隔かつ分単位の時間で推定できるようになると期待されます。

今後

今後、実際のネットワーク環境での実証を進め、2019年度以降の製品化を目指します。また、光ネットワークの自動運用に向けて検討を進めていきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木繁。
注2 Fujitsu Laboratories of America, Inc:
本社 米国Sunnyvale, CA、CEO 加藤雅之。
注3 富士通研究開発中心有限公司:
本社 中国北京市、董事長 佐々木繁。
注4 光信号対雑音比:
光の信号(signal)と雑音(noise)の比。
注5 シンボルレート:
光を電気伝送データで変調する際の、振幅、位相の情報を切り替える速度。変調速度。
注6 デジタルコヒーレント受信器:
光通信にデジタル信号処理を適用することで、従来のコヒーレント受信器で課題であった光信号の位相情報を安定に取り扱うことを実現した受信器。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
光ネットワークプロジェクト
電話 044-754-2643(直通)
メール onw_dl@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。