PRESS RELEASE
2018年1月24日
国立大学法人京都大学
富士通株式会社
株式会社富士通研究所
京都大学と富士通、高度医療化に向けたAI活用の共同研究講座を開設
国立大学法人京都大学(以下 京都大学、注1)と富士通株式会社(以下 富士通、注2)、株式会社富士通研究所(以下富士通研究所、注3)は、医療分野でAI(人工知能)を活用するための共同研究講座「医療情報AIシステム学講座」を京都大学大学院医学研究科に設置し、2018年1月より約2年間、活動を行います。
本共同研究講座では、京都大学医学部附属病院の電子カルテに蓄積された患者データなどの各種医療情報と、富士通グループが持つ最先端のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を使い、京都大学の医師やバイオインフォマティクス研究者(注4)と、富士通グループのAI技術者が協力して、新たな診療支援や創薬の実現など、AIを活用した次世代の高度医療化に向けた研究開発を加速します。また、共同研究で開発した知識データベース基盤や得られた知見は、保険などの関連分野での応用も進め、社会に成果を広く還元していくことを目指します。
背景
急激な科学技術の発展で、医療現場もデジタル化が進み、多種多様な医療情報(実データ:Real World Data)が蓄積されています。これらのデータと、革新的に進化しているAIを組み合わせて医療情報を評価・分析し、実際の医療現場へ適用することにより、患者に最適な医療を提供する次世代の高度医療が強く期待されています。
現在、AIは特定の医療画像そのものの評価や解析などには高い性能を発揮することがすでに示されています。一方で、より高度な判断が可能なAIの構築のためには、詳細で時系列にわたる臨床情報を活用する必要がありますが、これらの情報は医療関係者による文章記載などの構造化されていない部分も多く、電子カルテ内のテキストや数値、医療論文での記述、遺伝子情報、診断画像といった多種多様の膨大なデータを統合・連携して実践応用するためのAI技術はいまだ確立されていません。これらの医療情報の活用には、医療分野の高度な知識を持った研究者と、AIの研究者およびエンジニアの密な連携による医療のためのAI開発が不可欠なものとなっています。
研究概要
図. 「医療情報AIシステム学講座」の概要図
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- 研究期間
2018年1月 ~ 2020年3月
- 共同研究名
「医療情報AIシステム学講座」
(代表者:京都大学大学院医学研究科 ビッグデータ医科学分野 教授 奥野恭史) - 実施場所
京都大学医学部附属病院 先端医療機器開発・臨床研究センター(所在地:京都府京都市)
- 研究内容
京都大学医学部附属病院の電子カルテに蓄積された患者データや、京都大学がん診療支援データベースシステムに登録されたがん患者データ、京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 ビッグデータ医科学分野および臨床システム腫瘍学講座が倫理審査で承諾を得ているコホート(注5)を含む高度医療情報などの多種多様なデータを基に、新しい知識や知見を発見するためのAI活用が行えるよう、まずはAI(自然言語処理技術)でデータのクレンジング(注6)を行い、解析のための環境整備を行います。その後、統合的に整備された大規模データから、AI(機械学習など)により、疾患ごとの共通的な特徴を抽出してモデル化し、医療画像の中からある病気の特性を判別するなどの新たな診療支援や、次世代創薬の発見などに貢献していきます。また、医療分野に特化したAI技術の高度化も研究していきます。
なお、発見した知識や知見、医療分野向けのAI技術は、基盤に統合していき、医療分野で広く利用できる将来的な知識データベースの実現につなげます。
<利用するデータ>
- 京都大学医学部附属病院で管理している電子カルテおよび診療支援データベースシステムのデータ
- 京都大学の倫理審査で承諾を得て、「医療情報AIシステム学講座」の運営委員会で承認されたコホート研究用データなど
- 診療ガイドライン・くすりの添付文書などの公開されている文献データ
なお、本共同研究においては、患者データおよびコホート研究データに関しては匿名化して扱います。
- 役割分担
- 京都大学
医師やバイオインフォマティクス研究者の知見の提供、AI活用におけるバイオインフォマティクス研究者の育成、臨床データの提供や評価
- 富士通グループ
AI技術やビッグデータ解析技術の提供、医療分野向けAI技術の開発、知識データベース基盤の構築
- 京都大学
共同研究講座への期待
京都大学と富士通は、医療現場に蓄積されている膨大かつ高度な医療情報を、AIを活用して分析することで、医療の質的向上だけでなく、新たな治療・診断方法などの発見を行い、医療のみならず創薬、保険などの関連する分野でも大きな社会変革を起こすことができると期待しています。また、多種多様なデータをつなぎあわせて解析する基盤や仕組みは、製造分野や金融分野など医療分野以外でも広く活用できるものとして研究を進めていきます。
本共同研究講座は、単なる技術検討にとどまらず、実データを活用することで、実際に有用・有効な知識を創出し、社会に成果を還元していきます。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- 注1 国立大学法人京都大学:
- 所在地 京都府京都市、総長 山極壽一。
- 注2 富士通株式会社:
- 本社 東京都港区、代表取締役社長 田中達也。
- 注3 株式会社富士通研究所:
- 本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木繁。
- 注4 バイオインフォマティクス研究者:
- 生命科学と情報科学を融合させた生命情報科学を専門とし、生命に関する情報を分析し、生物学的な問題を計算論的な立場から扱う研究者。
- 注5 コホート:
- 共通した因子を持つ集団を一定期間追跡し、追跡にて取得したデータ同士を比較することで、疾病発生の要因などを研究する際に用いられる母集団。
- 注6 クレンジング:
- データを扱いやすくするため、データの表記や形式を統一すること。
関連リンク
本件に関するお問い合わせ
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