このページの本文へ移動
  1. ホーム >
  2. プレスリリース >
  3. LPWA対応・電池交換不要の世界最小センサーデバイスを実現

PRESS RELEASE (技術)

2017年12月4日
株式会社富士通研究所

LPWA対応・電池交換不要の世界最小センサーデバイスを実現

82×24×6mmの小型センサーを置くだけで、数km先の現場データをクラウドに直接送信

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、低消費電力で広い領域を対象にできる無線通信技術であるLPWA(Low Power Wide Area)に対応した、電池交換不要の世界最小センサーデバイスを開発しました。

IoTシステム普及の本格化にともない、昨今では、センサー情報を直接クラウドに無線送信できるLPWAに対応したセンサーデバイスへの期待が高まっており、これを用いたシステムを実現するために、利便性やコストの面から電池交換の手間を省くため太陽電池を利用し、設置が手軽で小型なデバイスの開発が求められています。

富士通研究所ではこれまで、太陽電池のみの電力でビーコンを動作させる電源制御技術を開発(注2)してきました。従来は、温度による太陽電池の発電電力のバラツキに対して、蓄電素子を大きくして対応してきましたが、今回、温度センサーで測定した温度に合わせて電波送信のタイミングを制御する技術を開発し、電力を効率よく利用することにより、電波送信に必要となる蓄電素子を半減することが可能となりました。これにより、82×24×6mmとデバイスの小型化に成功し、LPWA対応・電池交換不要の世界最小センサーデバイスを実現しました。

本技術を適用したセンサーデバイスを試作し、センサーから約7km離れたSigfox(注3)基地局経由で温湿度データを取得できることを確認しました。これにより、電源確保や電源ケーブル増設が困難な場所でも、本センサーデバイスを置くだけで測定データの取得が可能となるため、IoTシステムの導入や運用管理などをメンテナンスフリーで実現でき、現場のデジタル化を加速します。

開発の背景

昨今、IoTシステムの普及が進み、2020年には数百億個もの膨大なIoT機器がネットワークを経由してクラウドに繋がると予測されています。IoTシステムを実現するためには、現場に設置した多数のセンサーデバイスからの情報をクラウドで集めて分析する必要があるため、低消費電力で広い領域を対象にデータをクラウドに直接送信できる無線通信技術としてLPWAが注目を集めています。これらのセンサーデバイスには、LPWAに準拠するとともに、利便性やコストの面から、電池交換の手間のかからない太陽電池などを利用し、かつ小型化が期待されています。

図1 試作したLPWA対応センサーデバイス
図1 試作したLPWA対応センサーデバイス

課題

富士通研究所では、これまで、BLE(Bluetooth Low Energy)を用いた近距離無線でのデータ送信を小型回路で実現する電源制御技術を開発してきました。本技術では太陽電池により電力を蓄え、発電と消費の電力バランスを監視・調整することで確実に無線回路を起動し、電池交換が不要なBLE対応のセンサーデバイスを実現しています。

ここで、長距離無線のLPWAは、少量のデータをゆっくり送信して長距離での通信品質を確保するため、BLEに比べて送信に要する時間が長く、一回の送信にBLEの約1500倍の大きな電力が必要になり、従来の電源制御技術を用いたセンサーデバイスではLPWAに対応できませんでした。

開発した技術

今回、回路規模を小型化しつつ、送信電力を確保する新たな電源制御技術を開発しました。開発した技術の特長は以下の通りです。

図2 開発したセンサーデバイスのブロック図
図2 開発したセンサーデバイスのブロック図

  1. 温度による電力変動を許容する電源制御技術

    温度センサーによって取得した温度データを元に、LPWA無線の電波送信のタイミングをリアルタイムに制御する電源制御技術を開発しました。本技術により、LPWA無線の動作下限電圧を下回らないように、温度によって異なる起動電圧が最大となるタイミングで電波送信を行うため、効率的な電力利用により温度による無線回路の消費電力と太陽電池の発電電力のバラツキを許容することができます(図3)。従来必要だった電源変動へ対応するための余分な蓄電素子が不要になり、最小限の蓄電素子の構成により、センサーデバイスの小型化が実現できます。

    図3 動作タイミングチャート
    図3 動作タイミングチャート

  2. 温度センサーを確実に起動させる電源監視技術

    温度データを取得するためには、電源電圧の変動が生じても小さな電力で温度センサーを確実に起動し続ける必要があります。これに対して、電源電圧の変動を分析し、温度センサーの動作可能な電力が蓄電されているか否かを簡単な回路で正確に判別する電源監視技術を開発しました(図4)。本技術により、温度に合わせた最低限の電力で温度センサーの不要な動作停止を防ぐことができます。

    図4 温度センサーを確実に起動させる電源監視技術
    図4 温度センサーを確実に起動させる電源監視技術

効果

本技術をLPWAの一規格であるSigfoxに適用し、電池交換不要でLPWAの通信を実現する世界最小のセンサーデバイス(82×24×6mm)を実現しました。10分に1回、7日間の温湿度データを照度4000ルクスの環境下で、約7km先の基地局にダイレクトに送信できることを実証しました。あわせて、Sigfoxクラウドに接続できるIoTプラットフォームとしてのSigfox Ready Program for IoT PaaS認定を取得した富士通株式会社のIoTデータ活用基盤サービス「FUJITSU Cloud Service K5 IoT Platform」を経由して、データ可視化することも実証しました(図5)。

これにより、電源確保や電源ケーブル増設が困難な場所でも、センサーデバイスを配置するだけで、センシングデータをクラウド上から簡単に取得できます。IoTシステムの導入や運用管理などをメンテナンスフリーで実現し、現場のデジタル化を加速します。

図5 開発したLPWAセンサーデバイスとクラウド経由での利用シーン・データの流れ
図5 開発したLPWAセンサーデバイスとクラウド経由での利用シーン・データの流れ

今後

富士通研究所は、センサーデバイスの実用化に向けた実証実験を進め、本技術を「FUJITSU Cloud Service K5 IoT Platform」や富士通フロンテック株式会社(注4)のセンサーソリューションの接続デバイスとして搭載し、2018年度の製品化を目指します。さらにセンサーデバイスを小型化する技術開発に取り組んでいきます。

京セラコミュニケーションシステム株式会社様(KCCS様) 代表取締役社長 黒瀬 善仁様のコメント

今後、さらなるIoTの活用が期待される中、Sigfoxネットワークがもつ低消費電力の特長を活かしたソリューションが多方面に展開されていくことが予想されています。今回、富士通研究所が開発された電池交換不要のセンサーデバイスは、太陽電池のみでデバイスの運用が可能であり、日本のみならず、全世界でSigfoxの利用を促進するものと考えます。KCCSは、日本のSigfoxオペレータとして、富士通研究所およびパートナーと連携し、あらゆるものをネットワークにつなぐ手助けをし、安全で快適な社会の創造に貢献します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木繁。
注2 電池交換不要な小型電源技術を開発:
業界初!変形自在で電池交換不要なビーコンを開発(2015年3月25日プレスリリース)
注3 Sigfox:
2009年設立のフランスのSigfox社が提供するLPWAを用いたグローバルIoTネットワーク。日本では、京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)がネットワークサービスを独占展開。
注4 富士通フロンテック株式会社:
本社 東京都稲城市、代表取締役社長 五十嵐一浩。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
IoTシステム研究所
電話 044-754-2690(直通)
メール lpwa-sense@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。