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PRESS RELEASE

2017年11月24日
東京大学地震研究所
東北大学災害科学国際研究所
川崎市
富士通株式会社

川崎市においてICT活用による津波被害軽減に向けた共同プロジェクトを開始

国立大学法人東京大学地震研究所(注1)(以下、東京大学地震研)、国立大学法人東北大学災害科学国際研究所(注2)(以下、東北大学災害研)、川崎市(注3)と富士通株式会社(注4)(以下、富士通)は、川崎市臨海部を対象とした津波被害軽減に向けた津波の予測や事前対策の技術検討に関して、それぞれの防災技術やAI・スパコンなどのICTを活用し、連携・協力して進めるプロジェクトについて定める覚書を、本日締結しました。

川崎市と富士通は、2014年度に「持続的なまちづくりを目指した包括協定(注5)」を締結しており、本技術検討はその活動の一環として、東京大学地震研と東北大学災害研との連携・協力により進めるものです。4者は、川崎市臨海部での検討結果を将来的に南海トラフ沿岸域などの他地域にも展開し、防災に強い持続的なまちづくりへの貢献を目指します。

今回の津波被害軽減に向けた技術検討に関して、2017年11月25日(土曜日)から28日(火曜日)に宮城県仙台市で開催される、「第一回世界防災フォーラム/防災ダボス会議@仙台(注6)」において紹介します。

背景

東日本大震災以降、津波予測精度の向上に向けて、沖合での津波観測の整備が進められ、それらを活用する各種の津波予測手法の開発が進められています。多様な地形条件を持つ日本の国土では、津波リスクの程度や津波避難における緊迫度、さらに津波予測の難易度に、地域ごとで大きな違いがあります。例えば、南海トラフ巨大地震(動画)では、地震発生後数分で津波が到達する地域がある一方で、川崎市など東京湾の内側では津波の到達まで1時間以上の猶予があると想定されています。今後起こりうる大津波に向けた被害軽減対策をより効果的に進めるためには、全国を概観した津波予測の活用に加え、地域ごとに、その特性を考慮した地域カスタマイズ型の津波予測が求められます。

動画: 南海トラフ巨大地震の津波シミュレーション(注7
(再生時間: 27秒 / 音声なし)

そこで今回、沖合の津波観測データとAIやスパコンなどの最新ICTを最大限活用することで、地域の特性・ニーズを考慮した、実用的かつ有効な津波防災対策に向けた技術検討を、産官学協働体制で行うことに合意しました。

取り組み概要

今回、川崎市臨海部を対象地域として、同市の危機管理室との連携、意見交換を通じて、防災の現場で有効な技術の検討を行います。東北大学災害研と株式会社富士通研究所(注8)が開発した高速かつ高精度な津波浸水シミュレーション技術(注9)や、東北大学災害研と株式会社富士通総研(注10)が進める、避難行動をモデル化した津波避難シミュレーション技術を活用し、東京大学地震研が想定する地震・津波ハザードについて、主に以下に挙げる4つの項目を検討する予定です。

  1. 沿岸波形予測の高精度化

    遠く離れた沖合の津波観測点において時々刻々と得られる観測データを用いて、川崎市臨海部の沿岸の津波波形(波高、到達時間)を高精度に予測する手法を検討し、多様な想定地震に対して有効性を検証する(図1)。

  2. リアルタイム浸水解析

    沖合観測データを基に、川崎市臨海部の津波浸水を高解像度でリアルタイム解析するシミュレーションモデルを構築する(図1)。

  3. 地域予測情報の活用方法検討

    a、bの地域での津波予測情報を利用することで得られる減災効果を、人の行動をモデル化したシミュレーションによって評価し、情報の有効な活用方法について事前検討する(図2)。

  4. 沿岸津波挙動の特徴把握

    複数の人工運河がある川崎市臨海部において複雑化する津波の挙動を、多様な想定地震に対するシミュレーションを通して事前把握する(図2)。

図1: 地域カスタマイズ型の津波予測
図1: 地域カスタマイズ型の津波予測

図2: 地域カスタマイズ型の津波事前対策
図2: 地域カスタマイズ型の津波事前対策

今後

4者は、川崎市臨海部を対象地域として今回の技術検討を進め、その後、予測の不確実性を考慮した利活用方法や他の津波予警報との整合性など実用化に向けた課題の検討を行う予定です。将来的には南海トラフ沿岸域など他の地域にも適用することで、今後想定される地震と津波に対して強靭な地域防災・減災対策の実現に貢献します。

以上

注釈

注1 国立大学法人東京大学地震研究所:
所在地 東京都文京区、所長 小原一成
注2 国立大学法人東北大学災害科学国際研究所:
所在地 宮城県仙台市、所長 今村文彦
注3 川崎市:
市長 福田紀彦
注4 富士通株式会社:
本社 東京都港区、代表取締役社長 田中達也
注5 持続的なまちづくりを目指した包括協定:
「川崎市と富士通株式会社との包括協定の締結について」(2014年2月19日プレスリリース)
注6 世界防災フォーラム/防災ダボス会議@仙台:
詳細ホームページ
注7 南海トラフ巨大地震の津波シミュレーション:
シミュレーションには「内閣府 南海トラフの巨大地震モデル検討会」のデータを使用させて頂きました。
注8 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木繁
注9 津波浸水シミュレーション技術:
「スパコンで高解像度な津波モデルを用いた浸水解析のリアルタイム化に成功」(2015年2月27日プレスリリース)
注10 株式会社富士通総研:
本社 東京都港区、代表取締役社長 本庄滋明

本件に関するお問い合わせ

国立大学法人東京大学
地震研究所・研究支援チーム
電話 03-5841-5677
メール k-kenkyu@eri.u-tokyo.ac.jp

国立大学法人東北大学
災害科学国際研究所
今村文彦(教授)、山下啓(助教)
電話 022-752-2011
メール imamura@irides.tohoku.ac.jp /  メール yamashita@irides.tohoku.ac.jp

川崎市
川崎市総務企画局危機管理室 震災・臨海部対策
電話 044-200-2842
Fax 044-200-3972
メール 17kiki@city.kawasaki.jp

株式会社富士通研究所
人工知能研究所
電話 044-754-2328(直通)
メール tsunami-info@ml.labs.fujitsu.com


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