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PRESS RELEASE (技術)

2017年9月19日
株式会社富士通研究所

世界初、ウェアラブル型のハンズフリー音声翻訳端末を開発

病棟での看護など様々な場所で、端末に触れずに会話が可能に

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、医療現場での診察、看護など両手が塞がりやすい業務に適したウェアラブル型のハンズフリー音声翻訳端末を世界で初めて開発しました。

近年の訪日外国人の増加に伴い、病院を訪れる外国人患者が増加しており、多言語による会話の支援が課題となっています。富士通研究所は、2016年に人の音声や話者の位置を認識し、端末に触れずに自動で適切な言語に切り替えるハンズフリー技術を開発し、同年、東京大学医学部附属病院(注2)(以下、東大病院)と国立研究開発法人情報通信研究機構(注3)(以下、NICT)と共に医療分野で据え置き型のタブレットを使った多言語音声翻訳の実証実験(注4)を行いました。その結果、病棟での看護など医療者の両手が塞がる場合が多いため、端末に触れることなく、身に付けて利用できる音声翻訳端末への期待が大きいことが分かりました。

富士通研究所は、多言語音声翻訳の適用領域を広げるために、音道形状の工夫により小型無指向性マイクを用いる話者識別技術の開発と、雑音に強い発話検出技術の精度を向上し、小型でウェアラブル型のハンズフリー音声翻訳端末を世界で初めて開発しました。本端末を利用することにより、両手が塞がりやすい医療者の負担軽減が期待できます。

富士通研究所は、富士通株式会社(注5)が東大病院とNICTと共に行っている多言語音声翻訳の臨床試験(注6)において、今回新たに開発したウェアラブル型のハンズフリー音声翻訳端末を2017年11月から適用し、医療現場での有効性を検証します。

開発の背景

近年の訪日外国人の増加に伴い、言葉の壁を超えたコミュニケーションを実現する多言語音声翻訳システムの実用化が期待されています。多言語音声翻訳技術推進コンソーシアム(注7)では、総務省の「グローバルコミュニケーション計画の推進 -多言語音声翻訳技術の研究開発および社会実証- (Ⅰ.多言語音声翻訳技術の研究開発)基本計画書」に基づき、様々な研究開発や各種分野での実証実験の取り組みが行われています。

富士通研究所は、2016年に人の音声や話者の位置を認識し、端末に触れずに適切な言語に自動で切り替えるハンズフリー技術を開発し、同年、東大病院とNICTと共に据え置き型のタブレットを使った多言語音声翻訳の実証実験 を行いました。その結果、医療現場では受付・検査のようにあらかじめ決った場所で患者と会話する場合だけでなく、病棟での看護など様々な場所で会話する場合も多く、端末に触れずに身に着けて利用できるウェアラブル型の音声翻訳端末への期待が大きいことが分かりました。

課題

2016年に開発したタブレットを使ったハンズフリー音声翻訳技術では、話者の方向を識別するために外付けの指向性マイクを使用していましたが、身に着けて利用することができる音声翻訳端末を実現するには、小型のマイクで指向性を実現する必要がありました。

また、医療現場では空調機器や検査機器などからの様々な雑音があるため、医療者の位置が患者から遠く離れると、雑音の影響で発話検出の精度が低くなる課題がありました。

開発した技術

今回、世界で初めて医療現場を含む様々な場所で身に着けて利用できるウェアラブル型のハンズフリー音声翻訳端末を、開発しました(図1、図2)。開発した技術の特長は以下のとおりです。

図1 開発したウェアラブル型ハンズフリー音声翻訳端末の外観
図1 開発したウェアラブル型ハンズフリー音声翻訳端末の外観

  1. 音の回折を利用した音道形状と小型の無指向性マイクで小型化を実現

    音道をL字型形状として、目的方向以外からの音を減衰させて目的方向に対する指向性を強調する技術と、小型の無指向性マイクにより端末の小型化を実現しました。図2において、医療者方向からの音は1回回折しますが、医療者方向以外からの音は2回回折します。音は回折する際に減衰する性質があるため、医療者方向の指向性を強調することができます。

  2. 発話検出の精度向上

    患者方向(横方向)に高感度マイク素子を採用し、患者音声の録音レベルを大きくしました。また、雑音抑圧技術により、空調機器や検査機器などの定常雑音を抑圧しました。

  3. 医療現場の使い勝手を考慮した構造と筐体デザイン

    ウェアラブル型のハンズフリー音声翻訳端末の開発においては、富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社(注8)が携帯電話やスマートフォンの開発でこれまで培ってきた小型化・軽量化の技術を基に、医療現場の使い勝手を考慮した音道形状のデザイン最適化と小型化を実現しました。形状は、医療者の両手が自由に使えるネームプレート型で直感的に操作できるキーアイコン・形状・印字とし、医療者と患者の両方にとってやさしい印象で安心感を与えるラウンドフォルムとしました。

図2 ウェアラブル型ハンズフリー音声翻訳端末の利用イメージと指向性の関係
図2 ウェアラブル型ハンズフリー音声翻訳端末の利用イメージと指向性の関係
拡大イメージ

効果

今回開発した技術により、大病院の検査室相当の環境(60デシベルの雑音)で、医療者と患者が対面で会話する際に自然な距離80cmにおいて、発話の検出精度95%を達成しました。今回開発したウェアラブル型のハンズフリー音声翻訳端末を用いることにより、病棟での看護など両手が塞がりやすい業務において、端末に触れることなく、音声翻訳を利用することが可能となり、医療者の負担軽減が期待できます。

今後

富士通研究所は、今回開発したウェアラブル型のハンズフリー音声翻訳端末と、NICTが開発した医療現場における日本語、英語、中国語の高精度な翻訳に対応した音声翻訳システムを用いて、東大病院を含む全国の医療機関で2017年11月から臨床試験を実施します。また、臨床試験の結果を踏まえ、対応言語と利用場所を拡大していきます。

今後、富士通研究所では、本技術を適用した音声翻訳システムを観光での接客や自治体の窓口業務など様々な分野への展開を検討し、2018年度中の実用化を目指します。

商標について

記載されている固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木繁。
注2 東京大学医学部附属病院:
所在地 東京都文京区、病院長 齊藤延人。
注3 国立研究開発法人情報通信研究機構:
本部 東京都小金井市、理事長 徳田英幸。
注4 据え置き型のタブレットを使った実証実験:
医療現場で多言語音声翻訳の実証実験を開始(2016年9月9日プレスリリース)
注5 富士通株式会社:
本社 東京都港区、代表取締役社長 田中達也。
注6 多言語音声翻訳の臨床試験:
東京大学大学院医学系研究科・医学部倫理委員会 疫学・観察等研究倫理委員会、倫理審査番号10704-(4)
注7 多言語音声翻訳技術推進コンソーシアム:
訪日外国人等が「言葉の壁」を感じることなくコミュニケーションすることを可能とする多言語音声翻訳技術について、2015年から5ヵ年を目途に技術研究・開発を実施し、2020年までに社会実装の実現を目指すことを目的に2015年10月26日に設立。
コンソーシアムに関する報道発表資料
「総務省委託研究開発・多言語音声翻訳技術推進コンソーシアム」の設立について(2015年10月26日)
注8 富士通コネクテッドテクノロジーズ:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 髙田 克美

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
フロントテクノロジー研究所
電話 044-874-2489(直通)
メール voice_translation_info@ml.labs.fujitsu.com


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