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PRESS RELEASE (技術)

2016年10月11日
株式会社富士通研究所

業界初!プログラムに埋め込まれた業務仕様を自動抽出する技術を開発

業務仕様の把握を効率化し、大規模な現行システムのクラウド移行などデジタル革新を支援

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、業務システムのプログラムを解析し、実装されている業務上の決まりや計算の方法などを理解しやすい条件表として自動抽出する技術を開発しました。

業務システムの移行や再構築などにおいて、設計・開発作業を実施する前段階としてシステムの現状把握が必要ですが、長年の開発により大規模かつ複雑化した業務システムでは仕様書の最新化が行われていないことが多く、その整備に多大な時間がかかっています。今回、大規模なプログラムを分割して業務仕様を表の形で抽出する技術と、分割された表から全体の表を再構成する技術によって、大規模なプログラムに実装されている業務仕様を理解しやすい条件表として自動的に抽出することができるようになり、現状把握作業の効率化が可能となります。

本技術を社内での事例に適用したケースでは仕様書の再整備にかかる時間を約3分の2に削減できるなど、現行の業務システムの業務仕様を踏襲しつつ、クラウドなど業務の変化に柔軟に対応できるシステムへの移行を効率化することができ、お客様の業務システムのデジタル革新を支援します。

開発の背景

現在、クラウドやモバイルなどのICT環境が発展していくなか、既存の業務システムをクラウドに移行・再構築したり、モバイル対応など新しい機能を追加したりすることが多くなっています。移行後のシステムは、変化への迅速な対応が求められると同時に、現行の業務仕様の踏襲も求められます。しかし、実際の業務システムは、長期間の改善・保守を経て、プログラムの複雑化、仕様書の陳腐化、開発関係者の散逸などのためにブラックボックスとなっている場合が多く、運用されている業務仕様の把握に多大な時間が必要となっています。

課題

今回、富士通研究所では、業務システムを変化に強いものに移行していくために、業務仕様を、プログラム作成不要で業務ルールを自動的に実行できるBRMS(注2)のように条件表の形で管理することを目指します。そのためにはまず、現行の複雑なプログラムから業務仕様を掘り起こして、仕様書の再整備や、条件表の形に加工することが必要となります(図1)。

図1 業務システムの部分特性に合わせた移行のアプローチ
図1 業務システムの部分特性に合わせた移行のアプローチ
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条件表を抽出する技術として、従来、シンボリック実行(注3)技術を用いてプログラムの実行経路を抽出してから、条件表として整理する手法(図2)が知られています。しかし、この手法はプログラムが大規模で複雑になると実行経路の個数が膨大となってしまうので、大規模な業務システムへの適用が難しいという実用上の課題がありました。

図2 プログラムから抽出する条件表と特長、実用性の課題
図2 プログラムから抽出する条件表と特長、実用性の課題
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開発した技術

今回、業務システムの大規模なプログラムを解析し、実装されている業務上の決まりや計算の方法などを理解しやすい条件表として抽出する技術を業界で初めて開発しました。

今回開発した技術は、まず、大規模なプログラムについて、業務ロジックの複雑さやプログラム構造に着目して処理ブロックに分割し、部分ごとに独自のシンボリック実行技術を用いて条件表を抽出します。次に、サブルーチン呼び出しなどプログラムの流れとプログラム中の変数の参照や更新を解析して、分割生成した条件表を結合することによって本来の処理内容の条件表を再構成します(図3)。例えば、サブルーチンの呼び出し前後で分割した場合は、呼出元、呼出時点、呼出先の3つの条件表を抽出し結合します。

これにより、従来は呼出元・呼出先の経路数の積程度の実行経路を分析する必要がありましたが、今回、それぞれの和程度の経路数にまで処理を削減しました。この削減効果は、サブルーチン呼び出しが多重であるほど大きくなります。例えば、3重のサブルーチン呼び出しで、従来は3,060個の実行経路の分析が必要であったところを41個に削減できました。さらに、入力項目値チェックやデータベースの処理など、業務でのデータ処理に直接関係しない部分は分析の対象外とすることで、注目する業務処理だけの条件表を抽出でき、不要な経路を削減します。

図3 今回開発した技術
図3 今回開発した技術
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今回開発した技術によってプログラムから自動抽出した条件表は、以下のように利用することができます(図2の右)。

  1. 仕様書の再整備(リドキュメント)の効率化

    抽出した条件表は、プログラム実行結果を正確に、漏れ無く、簡潔に表現するので、プログラムの途中の処理内容を人が追跡して理解する手間を削減できます。条件表を利用して再整備したドキュメントは、次のシステムを設計する際の資料として活用できます。

  2. BRMSルールへの変換

    条件表をBRMSルールに加工・変換することによって、業務システムの変化の大きい部分においても、BRMSに移行する際のルール作成を効率化します。

効果

今回開発した技術により、従来分析できなかった大規模で複雑なプログラムから業務仕様を抽出できるようになりました。社内での、大規模なCOBOLプログラムへ適用した事例では仕様書の再整備にかかる時間を約3分の2に削減でき、業務システム移行時の業務仕様作成の効率化を実証しました。また、実システムの大規模なプログラムから抽出した条件表をBRMSルールに加工できることが確認できました。

今後

富士通研究所では、システム移行のアプローチにおいて、既存の技術である、プログラム資産から機能部分を見つけ出す技術(注4)、および、業務ロジックの複雑度を可視化する技術(注5)とあわせ、今回開発した技術の実プロジェクトでの試行と課題対応をすすめ、2017年度中の実用化を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木繁。
注2 BRMS:
Business Rule Management System。業務担当者が理解しやすい形式の業務ルールを、プログラムを作成せずに実行できるようにするシステム。
注3 シンボリック実行:
プログラム解析手法のひとつで、プログラムが実行し得る処理経路を網羅的に抽出する技術。
注4 プログラム資産から機能部分を見つけ出す技術:
「世界初! アプリケーション資産活用のためのソフトウェア地図作成技術を開発」(2012年2月29日プレスリリース)
注5 業務ロジックの複雑度を可視化する技術:
「世界初、プログラムに記述された業務ロジックの複雑度を可視化する技術を開発」(2015年5月1日プレスリリース)

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
システム技術研究所
電話 044-754-2675(直通)
メール soft-apm@ml.labs.fujitsu.com


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