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PRESS RELEASE (事例)

2016年9月7日
富士通株式会社

東京大学宇宙線研究所様から「スーパーカミオカンデ」の実験用計算機システムを受注

従来より約3倍の演算性能を実現するPCクラスタシステムでニュートリノ研究を支援

当社は、東京大学宇宙線研究所付属神岡宇宙素粒子研究施設(所在:岐阜県飛騨市、施設長:中畑雅行、以下、神岡宇宙素粒子研究施設)様より、ニュートリノ(注1)の観測を通じて宇宙の仕組みを解明する「スーパーカミオカンデ実験用計算機システム」を受注しました。本システムは、2017年3月に稼働する予定です。

「スーパーカミオカンデ実験用計算機システム」は、「スーパーカミオカンデ」の検出器にある約1万3,000本の光電子増倍管から集められる膨大なニュートリノに関するデータを蓄積・解析するシステムで、検出器とともに、研究施設の根幹を成すものです。

今回の新システムは、当社のPCサーバ「FUJITSU Server PRIMERGY(プライマジー) RX2530 M2」(以下、「PRIMERGY RX2530 M2」)85台を用いた計算サーバをはじめ、高速分散ファイルシステム、坑内実験サイトデータ処理システムなどから構成されています。計算サーバの演算性能はSPECint_rate2006で107,100(注2)となり、従来システムの約3倍、ディスク容量は従来の約3倍、データ転送速度は約3倍向上する予定です。

当社は、1993年より実験用計算機システムを神岡宇宙素粒子研究施設様に導入してきました。今回の新システムにより、神岡宇宙素粒子研究施設様のニュートリノ研究をさらに支援し、ニュートリノの性質、さらには宇宙の成り立ちの解明に貢献してまいります。

導入背景

神岡宇宙素粒子研究施設様では、宇宙の誕生や物質生成の謎の解明のため、岐阜県飛騨市神岡町にある神岡鉱山の坑内に建設した「スーパーカミオカンデ」を用いて、素粒子ニュートリノの観測を続けています。2015年にはニュートリノに質量があることが確認された功績として、東京大学宇宙線研究所所長の梶田隆章教授がノーベル物理学賞を受賞しました。この発見により、ニュートリノには質量がないとされていた従来の標準理論を覆すことになり、様々な研究分野で多大なる影響を与えることになりました。

「スーパーカミオカンデ」では、太陽ニュートリノや大気ニュートリノのほか、超新星ニュートリノなど数十年に1度、十数秒ほどしか訪れないケースも確実に観測する必要があるため、実験用計算機システムには24時間365日の安定稼働と、高速な解析処理、1日あたり500GBに及ぶ膨大な観測・解析処理後のデータ格納を確実に行うことが求められています。また、数カ月から数年分のデータをまとめて再解析するため、過去の膨大なデータに高速にアクセスできることも必要となります。

新システムでは、これらの要件を満たす高信頼性、データ解析性能の向上、今後5年間の観測に必要なストレージ容量の大幅強化、負荷が集中した場合の解析リソース配分など、従来システムからさらなる解析の効率化を実現していきます。

「スーパーカミオカンデ実験用計算機システム」の概要

本システムは、神岡宇宙素粒子研究施設に設置される計算サーバ、高速分散ファイルシステムと、神岡鉱山内に設置される坑内実験サイトデータ処理システムから構成されます。これらは、最新のCPUおよびディスクを用いたハードウェアと、スケーラブルファイルシステムソフトウェア「FUJITSU Software FEFS(エフイーエフエス)」(以下、「FEFS」)、HPCミドルウェア「FUJITSU Software Technical Computing Suite」などのソフトウェアすべてを当社製品で構成し、信頼性の高いシステムによって解析の効率化を進め、さらに精度の高い観測を目指します。

実験用計算機システムは、観測データを蓄積し、そのエネルギーや進行方向などの解析を行うことを目的としています。この解析により、ニュートリノの性質を解明し、宇宙の初期に物質がどのように作られたかという謎に迫り、また、陽子崩壊現象の発見による大統一理論(注3)の実証を目指しています。

図. 実験用計算機システム構成
図. 実験用計算機システム構成

  1. 計算サーバ

    PCサーバ「PRIMERGY RX2530 M2」85台(170プロセッサ、2,380コア)からなるPCクラスタシステムにより、SPECint_rate2006で107,100と、従来より約3倍の演算性能を実現します。

  2. 高速分散ファイルシステム

    高速分散ファイルシステムは、PCサーバ「FUJITSU Server PRIMERGY RX2540 M2」8台、 ストレージシステム「FUJITSU Storage ETERNUS(エターナス) DX200 S3」8台、「FUJITSU Storage ETERNUS DX100 S3」2台で構成し、実効容量は従来より約3倍となる9PB(ペタバイト)です。スケーラブルファイルシステムソフトウェア「FEFS」により、計算サーバからの同時大量アクセスに対し、従来システムの約3倍に相当するデータ転送性能を実現します。

  3. 坑内実験サイトデータ処理システム

    「スーパーカミオカンデ」の検出器にある光電子増倍管が捕らえた観測データは、同じ鉱山内に設置されるPCサーバ「PRIMERGY RX2530 M2」40台、ストレージシステム「ETERNUS DX100 S3」1台に送られ、ノイズ除去などを行った後、高速分散ファイルシステムに転送されます。貴重な観測データを失うことなく記録するため、24時間365日の安定稼働が求められる高信頼なシステムを提供します。

東京大学宇宙線研究所 准教授 早戸 良成 様からのコメント

スーパーカミオカンデは稼働から20年を経過、これまで多くのデータを蓄積し、今後も継続的にデータを取得していきます。このデータを用いることで、ニュートリノの性質のより詳細な研究を行うことが可能となりました。このためには精度の高い事象再構成やシミュレーションデータの生成が必要となり、従来以上のコンピュータ資源が必要となっています。今回、さらにCPUやメモリ性能が増強されることで、たとえば宇宙の物質優勢の起源に関係すると考えられる、ニュートリノと反ニュートリノの振動の違い(CP対称性の破れ)の研究や、ニュートリノの質量についての問題(質量階層性)の研究をさらに進めることが可能となると期待されます。また、太陽ニュートリノ観測もエネルギー閾値のさらなる低減も目指しています。宇宙の初めから数多くおきてきた超新星爆発からのニュートリノを観測するためのスーパーカミオカンデ検出器改良計画も進められており、そのデータの解析にも今回のシステムが活用される予定です。これらの研究は、ニュートリノの性質の理解を深めるだけでなく、宇宙の成立の謎に迫ることにつながると考えています。ニュートリノ研究以外にも、これまで発見されていない陽子崩壊の探索も進め、まだ誰も成し得ていない大統一理論の実験的検証も目指していきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 ニュートリノ:
素粒子の1種。「ニュートラル」は中性、つまり電気を帯びていないという意味、「イノ」はイタリア語で小さいという意味。もっとも基本的な粒子の一つでありながら、その性質は、いまだわからない点が多い。
注2 SPECint_rate2006で107,100
SPECint_rate2006はCPUの性能を表す指標の1種。ハイパースレッドONで換算した際の推定値。
注3 大統一理論:
素粒子に働く3種類の力(電磁気力、強い力、弱い力)が、宇宙初期の超高温状態では同じであったとする理論。この理論が実証されれば宇宙の物理現象を統一的に理解できる。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

テクニカルコンピューティングソリューション事業本部
TC統括営業部
電話 03-6252-2554


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