• English

PRESS RELEASE （技術）

2016年5月25日
株式会社富士通研究所

IoTサービスの迅速な提供を実現するフィールドエンジニアリング技術を開発

シミュレーションと可視化により電波の現場課題を即解決

本技術の一部は、5月25日（水曜日）から東京ビッグサイトで開催される「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2016」に出展します。

開発の背景

現在、工場、ショッピングセンターやスタジアム、駅・空港、オフィスビルなど人が活動する現場においてIoTシステムの実用化に向けた取り組みが進んでおり、柔軟で効率的にセンサーを設置するため、無線LANやBluetooth、ZigBeeなど電波を使ったシステムが多く使われてきています。

課題

IoTシステムの導入が想定される環境では、人やモノの往来が激しい場合が多く、これらによる電波の遮蔽や反射によって運用時に無線通信が不安定になる場合があります。また、現場を行き来する人が持つスマートフォンなどが発する電波と互いに干渉したりするため、通信が妨げられる場合もあります。

従来は、電波の専門家が経験を頼りに専用の測定機器を駆使して設置と確認の試行錯誤を繰り返す必要があり、安定稼働するまで数週間を費やす場合もあるなど、導入・運用時に課題があったため、IoT機器の設置を容易にする技術が求められています。

開発した技術

今回、現場のレイアウトと人の往来映像を自動で取りこんで、無線機器の設置場所を自動決定する電波シミュレーション技術と、IoT機器を設置した現場における、実際の電波干渉の発生状況を可視化する技術を開発しました。

開発した技術の特長は次の通りです。

1. 無線機器の設置位置を簡単に自動決定できる電波シミュレーション技術

   従来、膨大な手間と時間が必要だった電波シミュレーションの取扱いを以下の二つの技術により簡易化し、無線の専門家でなくても無線機器の設置位置を簡単に自動決定できる技術を開発しました。

   （1）3次元空間デジタイジング技術：
   現場の複数の地点についてレーザースキャン測定をするだけで、複数の測定データについて歪みを自動補正して滑らかに結合し、電波シミュレーションに必要な3次元レイアウトデータを自動作成する技術を開発しました。本技術により、これまで手作業で1週間程度かけていた作成作業を、測定時間含め2時間程度に短縮しました。

   （2）移動人体のモデル化技術：
   これまで、人の動きの影響を数値化するためには、人物の配置を少しずつ変えた膨大な数のシミュレーションを行う必要がありました。今回、往来する人数は富士通研究所が開発した、映像から人の流れを認識する技術（注2）を用いて自動計測し、人数別にパターン化したシミュレーション結果を適用することによって、約3日要したシミュレーション時間を一般的なPCで15分以下に短縮しました。

   
   図2 電波シミュレーション技術
   拡大イメージ

2. 電波干渉可視化技術

   IoT機器を設置した現場で実際に使われている無線通信を自動識別して表示し、通信規格ごとに、チャネルや場所ごとの混雑状況を可視化する技術を開発しました。これにより、IoT機器の適正な設置位置、データ送出間隔、チャネルの設定などを専門家でなくても簡単に決められるようにしました。

   本技術では、無線規格（無線LAN、Bluetooth、ZigBeeなど）ごとに準備した信号パターンと受信信号との独自の相関計算により無線規格の識別を行います。従来は受信信号を周波数補正した後に、規格ごとに準備した信号パターンと積和演算していましたが、本技術では受信信号が準備した信号パターンと異なっている場合に、周波数補正前の乗算結果が高いランダム性を持つことを利用して高い識別性能を実現し、従来手法に比べ識別感度を2倍に向上させることに成功しました。

   
   図3 電波干渉可視化技術
   拡大イメージ

効果

開発した技術により、IoT機器を現場に設置する作業に費やす期間を従来の約3分の1に短縮しました。

これにより、IoTシステムの導入・運用時の課題になっていた無線機器の設置と、電波混雑・干渉の対策が手軽に行えるようになるため、お客様は、業務効率化や新しい価値の創造を目的としてIoTシステムを活用する際に、実運用開始までの期間を大幅に短縮することが可能となります。また運用開始後も、運用停止などの大きなトラブルなく安定して稼働させることができます。

今後

本技術は、2016年度上期中に富士通株式会社のコンサルティングサービスとして提供予定です。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

注1 株式会社富士通研究所：

本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木 繁。

注2 映像から人の流れを認識する技術：

「業界初、低解像度映像から人の流れを認識する技術を開発」 （2015年3月6日 プレスリリース）

---