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PRESS RELEASE

2015年11月18日
国立研究開発法人 海上技術安全研究所
富士通株式会社
株式会社富士通システムズ・ウエスト

造船業において、生産性の向上と技能者育成にAR技術を活用

造船配管取付け作業の技能伝承と工程管理を支援する、造船生産支援システムを開発

国立研究開発法人 海上技術安全研究所 (所在地: 東京都三鷹市 、理事長:茂里 一紘、以下、海上技術安全研究所)は、日本造船業の国際競争力強化や働きやすい職場作りの観点から造船現場におけるAR技術の適用について研究を進めており、このたび、富士通(注1)、および富士通システムズ・ウエスト(注2)との共同で、造船生産支援システムのプロトタイプを開発しました。本システムは、海上技術安全研究所の造船支援システムに関する研究の蓄積と、富士通のAR技術(注3)により現場業務を支援するシステム 「FUJITSU Manufacturing Industry Solution PLEMIA Maintenance Viewer V2(フジツウ マニュファクチャリングインダストリ ソリューション プレミア メンテナスビュー ワ ヴイ ツー)、以下、PLEMIA Maintenance Viewer V2、注4)」 を活用して開発されました。

海上技術安全研究所は、今後、本システムを活用した実証実験に参加する造船会社を募り、実用化に向け、造船会社での試行運用と機能強化を重ねていきます。

本システムは、タンカーなどの大型船舶の建造で必要となる、何万本もの管を現場で組み合わせて取り付ける配管取付け作業の技能者育成と生産性向上を目的として開発されたものです。管ごとに付けられたARマーカーにスマートデバイスをかざすと、その管の配管図面と配管3Dモデル、管符号(注5)などを表示し、配管取付け作業を支援します。また、管ごとに、配管取付けを行った技能者名、作業終了日時、技能者からの申し送り情報を入力する画面も重畳表示されるため、配管取付け作業後、その場で、これらの情報を入力できます。さらに、入力された情報を一元的に管理するため、建造船全体、および管ごとの作業進捗状況をガントチャート(注6)で可視化することも可能です。

富士通、および富士通システムズ・ウエストは、国内外の多くの製造業をICTで支援してきた実績とノウハウを活用し、海上技術安全研究所と共に、より効果的な造船技能伝承と工程管理を実現する技術の提供に、今後も尽力していきます。

システムのイメージ
システムのイメージ

背景

少子高齢化による若手造船技能者の減少もあり、複雑で膨大な数の機器類を現場の状況に応じて摺り合わせながら取り付けるというような日本の高度な造船技能の確実な継承と、造船業務の効率化が課題となっています。

海上技術安全研究所は、その対策として、ICT技術を活用した、造船生産支援システムの開発に着手していましたが、ARマーカーの識別精度向上や造船現場でも使いやすいユーザーインターフェースの開発などに時間がかかっていました。

「PLEMIA MaintenanceViewer V2」を活用した造船生産支援システムの特長と効果

今回、AR技術による情報参照機能やプロジェクト管理機能、図面管理機能を標準装備している富士通システムズ・ウエストの「PLEMIA MaintenanceViewer V2」を採用することにより、以下のような効果を実現できたほか、約1カ月という短期間で本システムの構築を完了しています。

  1. 配管モデルを3D画像で表示する配管取付け作業支援機能

    「PLEMIA MaintenanceViewer V2」には、ARマーカーをスマートデバイスで読み取るだけで、ARマーカーに紐付けられた画像や情報を、位置情報に対応させて画面上に表示できる、富士通のAR統合基盤製品「FUJITSU Software Interstage AR Processing Server(フジツウ ソフトウェア インターステージ エーアール プロセッシングサーバ)」が組み込まれています。これにより、配管1本1本に付けられたARマーカーを読み込むと、その管の配管図面と配管3Dモデル、作業開始・終了予定日時、管符号、設計者・管理者などからの申し送り情報などを、カメラで取り込んだ現場の映像に重ねて表示します。

    造船の配管取り付け作業では、現場で作業を行う技能者が複雑な図面を読み解き、現場に置かれている多くの管の中から1本の正しい管を識別し、その管の取り付け位置や取り付け要領を参照することを行っています。造船の図面はとても複雑なため、特に未熟練技能者にとっては、この識別だけで数十分の時間がかかることもあります。本システムの導入により、これを大幅に短縮できます。また、画面上に映し出された現場の管の画像に、ぴったり重ね合わせて、正しい配管3Dモデルを表示して確認できるため、熟練していない技能者のミスの防止と生産性の向上に役立ちます。

    また、画面に重畳表示される、管ごとの作業状況入力画面から、配管取付けを行った技能者名、作業終了日時、設計者・管理者への申し送り情報を、作業を行った技能者自身が、その場で、大きな負担をかけることなく、入力できます。これにより、従来は事務所に戻ってから作成していた作業報告書作成などの業務負荷を軽減できるとともに、情報伝達ミスを低減できます。

    配管情報を確認している様子
    配管情報を確認している様子

    配管位置、配管方法を確認している様子
    配管位置、配管方法を確認している様子

    作業開始時の入力の様子
    作業開始時の入力の様子

  2. 作業情報の一元管理とガントチャートによる作業状況の可視化

    「PLEMIA MaintenanceViewer V2」には、管ごとの配管取付け作業開始・終了予定日時、作業を行った技能者名、作業開始・終了日時、技能者からの申し送り情報などを一元的に管理し、作業状況をガントチャートで表示する機能も装備されています。

    これにより、従来は管理することが難しかった管ごと、あるいは造船区画ごとの配管取付け作業の進捗状況を容易に可視化できます。また、設計者、管理者、技能者が入力した申し送り事項を、造船区画ごと、管ごと、期間ごとなどのあらゆる観点で分析し、現場の作業改善に役立てられます。

    ガントチャート
    ガントチャート

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 富士通:
富士通株式会社(本社 東京都港区、代表取締役社長 田中 達也)
注2 富士通システムズ・ウエスト:
株式会社富士通システムズ・ウエスト(本社 大阪市中央区、代表取締役社長 宮田 一雄)
注3 AR技術:
ARとは、augmented realityの略で、拡張現実の意味。AR技術とは、人間の感覚(五感)で得られる情報(現実)にICTを利活用して得られるデジタル情報を重ね合わせ、人間の感覚を拡張・強化する技術。
注4 「FUJITSU Manufacturing Industry Solution PLEMIA MaintenanceViewer V2」:
富士通システムズ・ウエストが製品化したパッケージシステム。
注5 管符号:
配管用の管を識別するために、管ごとに付与された記号。諸管取付図に付番された符号と対応している。
注6 ガントチャート:
生産管理などで工程管理に用いられる棒グラフの一種であり、横棒によって作業の進捗状況を表す。作業計画と細かい作業の進捗状況を可視化するために用いられる。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

国立研究開発法人 海上技術安全研究所
企画部広報係
電話 0422-41-3005
メール info2@nmri.go.jp

富士通コンタクトライン
電話 0120-933-200
受付時間: 9時~17時30分(土曜日・日曜日・祝日・年末年始を除く)


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