PRESS RELEASE (技術)
2015年9月9日
株式会社富士通研究所
無線LANの電波干渉を即座に解消する自動チャネル割当技術を開発
従来の数百倍の計算速度を実現し、無線LAN環境の運用負荷軽減と安定化を両立
株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、大規模な無線LANシステムにおいてスループット低下の要因となる電波干渉を即座に低減する、自動チャネル割当技術を開発しました。
従来、企業ネットワークやスタジアムなどでは、ネットワーク環境を維持するために多数のアクセスポイント(以下、AP)が構築されていますが、そういった無線LANシステムでは隣接するAP数が多く、電波干渉を抑制するためのチャネル再割り当て をリアルタイムに計算することが困難でした。
今回、数百台のAPで構成される無線LANシステムにおいて、干渉の少ないチャネル割り当てを1分以内に自動で算出するチャネル割当技術を開発しました。
これにより、無線LANシステムの管理者は多数のAPで構成される企業ネットワークやスタジアムなどの無線LAN環境において、干渉を解消するチャネル割り当てを即座に適用することができ、安定した無線通信を簡便に提供できるようになります。
本技術の詳細は、9月8日(火曜日)から仙台市・東北大学で開催される「2015年電子情報通信学会 ソサイエティ大会」にて発表します。
開発の背景
無線LANは免許不要なため、だれでも気軽に構築できることから広く利用されています。一方、無線LANの利用範囲拡大に伴い、無線LAN APのさらなる増設や、ほかの無線LANとの関係など、無線LANの電波干渉が起こる要因が発生することがあります。
図1 無線LANシステムの構成
課題
新しい無線LAN APが近隣に設置されると、無線LANシステムの設計当初にはない電波干渉が発生してスループットが低下するという課題があります。電波干渉を解消するためには隣接するAP同士が周波数の異なるチャネルを使用する必要があります。しかし、AP数が多くなると互いに周波数の異なるチャネルになる組み合わせを決める作業が複雑になり、干渉が発生してからチャネルの再割り当てまで短時間に行うことが困難でした。
現在市販されている多くのAPはチャネル選択機能を搭載していますが、後から設置されたAPが空きチャネルを使用する動作原理のため、隣接する複数のAPがすべてのチャネルを使用している場合、異なるチャネルを選択できずにスループットが低下します。
従来技術として、チャネルの組み合わせを最適化問題として、これを解く方式も知られていますが、計算量がAP数の3乗に比例するため、スタジアムのような環境で、AP数が数百台規模で設置されている場合、例えば6時間以上の計算時間を要し、現実的には再割り当ては困難です。
開発した技術
今回、対象とする無線LANシステム内外でのAP設置状況の変化により電波干渉が生じた際に、チャネル再割り当てが可能な技術を開発しました(図2)。
開発した技術の特長は以下のとおりです。
- 総干渉量に基づく探索候補数削減
各APにチャネル候補を順番に割り当てながら最適な割り当てを探索します。その際、各候補における干渉量を推定し、総干渉量を算出し候補の一部を削除します。これを全APに対して行い、その中で総干渉量が一番小さくなるチャネルの組み合わせを採用します。こうすることで、干渉を低減しながら探索にかかる計算量の規模をAP数の2乗で実現できるようになり、AP数の3乗である従来方式に比べ大幅に計算量を削減できます。
- 干渉の受けやすさに基づく優先順位づけ
周囲のAPで受信した信号の受信電力から、各APの干渉の受けやすさを算出し、AP全体の中で干渉を受けやすいAPから優先的にチャネルを割り当てます。干渉を受けやすいAPを優先することでシステム全体の干渉量を低減できます。
図2 干渉量が小さくなるようなチャネル候補の選択方式
効果
今回開発した技術を用いてシミュレーションによる評価を実施したところ、従来広く使用されているAP単独によるチャネル選択機能に対し平均スループットが最大15%向上し、さらに、低スループットのAP(スループットが下位1%となるAP)において最大約2倍のスループット向上を確認しました。チャネルの組み合わせを最適化問題として、これを解く従来手法と比べると、計算時間はAPの台数分の1に短縮され、短時間でAPの電波干渉を低減することが可能です。例えば、400台のAPでは計算時間は400分の1程度になります。
これにより、数百台のAPで構築されるオフィスやスタジアムなどの無線LAN環境においても1分以内に干渉が少ないチャネルへ再割り当てができるようになり、無線LAN環境が変化しても、利用者は快適にネットワークを利用することができます。
今後
富士通研究所では、チャネル割当技術のさらなる性能向上、動作検証を進め、2016年度中の実用化を目指します。
商標について
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以上
注釈
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
ネットワークシステム研究所
044-754-2647(直通)
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