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PRESS RELEASE (技術)

2015年9月4日
富士通研究開発中心有限公司
株式会社富士通研究所

5G向けに、同一セル内で従来の2倍の通信容量を実現する無線通信技術を開発

同一周波数での送受信により高速化し、快適な無線通信環境の実現に貢献

富士通研究開発中心有限公司(注1)と株式会社富士通研究所(注2)は、5G向け技術として同一無線周波数を同一セル内で同時利用し、従来の2倍の通信容量を実現する無線通信技術を開発しました。

無線通信容量増大に向けた技術として、無線信号の送信と受信を同一周波数で同時におこなう全2重通信技術がありますが、送受信間の干渉を低減することが難しく実現できていませんでした。今回、同一セル内にある複数端末への送信と受信を各々別の無線基地局に分担させる基地局送受信分離構成を用いて、新たに開発した基地局間および端末間の干渉を低減する端末スケジューリング技術を開発しました。これにより、従来の半2重通信と比較し、1つのスモールセルで最大で約2倍の通信容量が確保されます。例えば、ショッピングモールやスタジアムなどの局所的にユーザー数が増大する無線環境において、通信容量低下を抑えた快適な無線環境が期待できます。

本技術の詳細は、9月6日(日曜日)から米国・ボストンで開催予定の国際会議「VTC2015-Fall(Vehicular Technology Conference 2015)」にて富士通研究開発中心有限公司より発表します。

開発の背景

スマートフォンの普及による通信容量の急増への対応や将来の多種多様なサービスへの対応を目指し、2020年頃の実現を想定した次世代移動通信システム「5G」の研究開発が活発に行われています。

2020年頃には無線通信容量が2010年の約1000倍必要になると推測されています。これに対応するため「5G」では、通信の大容量化の実現に向けた代表的な技術として、一つの無線基地局がカバーする範囲を狭くして、同じ無線周波数を異なるエリアで使用することで大容量化を実現するスモールセル化技術があり、すでに研究開発が進んでいます(図1)。

図1 スモールセル化技術
図1 スモールセル化技術

課題

スモールセル化技術の適用のみで通信の大容量化に対応していくことは現実的には困難であり、通信容量の改善を実現する技術として、同一周波数で無線信号の送信と受信を同時におこなう全2重通信方式があります。しかしながら、全2重通信方式では、原理的に送信信号が受信側へ漏れるため、これを低減する機能の実現が求められています(図2)。

図2 全2重通信時の送信信号の漏れ込み
図2 全2重通信時の送信信号の漏れ込み

開発した技術

今回、同一セル内の端末への送信と受信を、それぞれスモールセル無線基地局(Small Cell Base Station、以下、SBS)とマクロセル無線基地局(Macro Cell Base Station、以下、MBS)に分担させる基地局送受信分離構成を用いて、基地局間、および端末間の干渉を低減する送受信分離型の全2重通信技術を開発しました(図3)。この方式で全2重通信を実現するための端末スケジューリング技術も併せて開発しています。

図3基地局送受信分離型全2重通信方式
図3 基地局送受信分離型全2重通信方式

開発した技術の動作概要は以下のとおりです。

  1. 動作種別

    (1) 最適な端末ペアの選択:

    同一スモールセル内の端末において、同一周波数を使用した際に相互干渉が少ない2つの端末の選択

    (2) 最適な端末送信電力値の制御:

    無線品質を確保し、同時に同一周波数を使用しているほかの端末への干渉劣化を最小とする送電電力値の制御

  2. 端末スケジューリング動作の特徴

    最適な端末スケジューリングを行うため、(a)下り信号を受信する端末、(b)上り信号を送信する端末、(c)端末の送信電力の3種類の候補の組み合わせを考慮しています。

    各々10程度の候補があるため、合計で1000通りの組み合わせを調べる信号処理が必要になります。今回、この3種類の候補について、適切な順番で候補を求めるアルゴリズムを開発し、端末スケジューリングの信号処理量を数十分の一に低減しています。また、端末の組み合わせから精度よく送信電力の候補を求めるアルゴリズムも併せて開発し、全体で約40分の1の処理量低減を実現しました。

効果

開発技術を実装したシステムレベルでのシミュレーションにより、従来の半2重通信と比較し、1つのスモールセルにつき、最大で約2倍の通信容量を実現することを確認しました。

ショッピングモールやスタジアムなどの局所的にユーザー数が増大する無線環境において、今回開発した技術を実装することにより、通信容量低下を抑えた快適な無線環境を提供します。

今後

富士通研究開発中心有限公司は、本送受信分離型全2重通信方式構成におけるマクロセル基地局とスモールセル基地局の干渉による通信容量劣化をさらに改善する技術開発を進めます。また、富士通研究所は、5G標準化への提案に向けた構成の検討と実装技術の研究開発をすすめながら、本技術の2023年ごろの実用化を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 富士通研究開発中心有限公司:
本拠地 中国北京、董事長 佐々木繁。
注2 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐相秀幸。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ネットワークシステム研究所
電話 044-280-9815(直通)
メール sdfd-press-2015@ml.labs.fujitsu.com


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