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PRESS RELEASE (技術)

2015年9月28日
株式会社富士通研究所

サーバ間光通信を従来の2倍に長距離化する光送信器技術を開発

大型データセンターにおける、サーバの分散処理能力向上の実現に貢献

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、既存の光ファイバーを利用しながら、サーバ間光通信を従来の2倍となる200mに長距離化する技術を開発しました。

サーバの台数を増やして分散処理を行うとシステム全体の処理能力を向上させることができますが、データセンターのフロア拡張などのニーズから、フロア面積を拡大してサーバを配置するためには各サーバを接続する光通信路の長距離化が課題です。

現在、サーバ間光通信で広く使用されている光ファイバーでは、ファイバー内で光波形の高速特性が劣化するモード分散(注2)と呼ばれる現象が発生し、長距離化の妨げとなっていました。今回、このモード分散の現象を低減させるために必要な光送信器の構造を新たに開発し、既存の光ファイバーで従来の2倍の伝送距離を確認しました。

これにより、フロア面積で換算すると、最大で従来比4倍のサーバ接続が可能となり、大型データセンターの分散処理能力向上を実現します。

本技術の詳細は、9月27日(日曜日)からスペイン・バレンシアで開催予定の国際会議「41st European Conference on Optical Communication(ECOC 2015)」にて発表します。

開発の背景

データセンターの処理能力向上に伴い、サーバ間のデータ通信量が増大し、電気通信だけではサーバ間を接続することが困難になりつつあるため、光インターコネクト(注3)による通信の高速・広帯域化に期待が集まっています。光インターコネクトを実現するには、高速の電気信号を光ファイバーへ入力する際に光信号に変換する、光トランシーバーが必要です。現在、サーバ間のデータ伝送速度は高速なもので毎秒25ギガビット(Gbps)の光トランシーバーが用いられています。

こうした状況の中、ビッグデータなど大容量処理のニーズも高まり、データセンターではサーバの台数を増やして、分散処理によってシステム全体の処理能力向上を図るため、データセンターの大規模化が進んでいます。フロア面積を拡大してサーバを増やすためには、各サーバ間を接続する光通信の長距離化が必要です。

課題

サーバ間光通信で広く用いられる光ファイバーはマルチモードファイバーと呼ばれ、25Gbpsのデータ伝送速度で、最長約100mのサーバ間を接続できます。マルチモードファイバーを使用すると、光ファイバー内で、多数の伝搬モード(注4)と呼ばれる経路に分かれて光が伝わります。伝搬モードごとに伝わった光は受信側で結合して出力光信号を形成しますが、伝搬モードごとに速度が異なるため、伝送距離に応じた高速特性の劣化が生じます。この現象をモード分散といいます(図1)。このため、長距離化にはモード分散を低減させる必要があります。モード分散を低減させる特殊な光ファイバーもありますが、既存のマルチモードファイバーに比べて価格が約1.5倍で、使用するためには敷設されている光ファイバーを交換する必要があります。

図1 マルチモードファイバーにおける長距離化の課題
図1 マルチモードファイバーにおける長距離化の課題

開発した技術

今回、レンズから光ファイバーまで光を中継して伝える中継光導波路を挿入することで、既存のマルチモードファイバーを用いて、モード分散を低減させる技術を開発しました。

開発した技術の特長は以下のとおりです。

  1. モード分散解析技術

    光導波路や光ファイバーでは光を伝搬モードとして扱います。一方、外部から光導波路に光を結合するレンズでは光を光線として扱うため、それぞれ解析方法が異なります。今回、レンズでの光線解析と、中継光導波路やマルチモードファイバーでの伝搬モード解析とを統合し、レンズ、中継光導波路、マルチモードファイバーのそれぞれで、伝搬モードの変化を統合解析する技術を開発しました。

    この技術を用いて解析した結果、光が通過するコアの幅がマルチモードファイバーの2分の1である25マイクロメートル(μm)の中継導波路を挿入することで、速度の遅い伝搬モード(図1の伝搬モード3)の発生を抑え、モード分散が低減できることがわかりました(図2)。

    図2 中継光導波路によりモード分散を低減する構造
    図2 中継光導波路によりモード分散を低減する構造

  2. モード分散を低減する光送信器

    モード分散の解析結果を基に、コア幅25μmの中継光導波路を持つ、光送信器を考案しました(図3)。光送信器を製作した結果、従来のマルチモードファイバーを用いて、伝送速度25Gbpsで従来の2倍となる200mの伝送が確認できました。

    図3 試作した光送信器の構造
    図3 試作した光送信器の構造

効果

開発技術により光通信の距離が従来の2倍に拡大するため、最大で従来比4倍程度のサーバ接続が可能になります。これにより、大型データセンターにおけるサーバの分散処理能力向上を実現します。

今後

富士通研究所は、開発技術を実装した光トランシーバーの小型化を進め、 2017年度の実用化を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐相秀幸。
注2 モード分散:
マルチモードファイバー中の光の伝搬モードごとに、伝搬速度が異なる現象。
注3 光インターコネクト:
データ通信を行うサーバ間などで、機器の接続に光配線を用いること。
注4 伝搬モード:
マルチモードファイバーのコア中を、特定の角度で反射を繰り返しながら光が伝わる経路。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
コンピュータシステム研究所
電話 044-874-0324(直通)
メール oic_press2015@ml.labs.fujitsu.com


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