PRESS RELEASE (技術)
2015年4月2日
株式会社富士通研究所
世界最高速の200Gbpsで通信をモニタしながら品質解析するソフトウェアを開発
従来比10倍の解析性能により、快適で安定したサービスインフラの提供を低コストに実現
株式会社富士通研究所(注1)は、通信パケットをモニタしながら世界最高速の200Gbpsでリアルタイムに品質解析するソフトウェアを開発しました。
スマートフォンやタブレットなどの普及やデータセンターの活用拡大などによりクラウドサービスが進展し、システム全体の安定稼働に向けたサービス品質を把握する重要性が高まっています。従来、PCサーバなどの汎用ハードウェアで通信パケットをモニタする場合、CPUやメモリアクセスの性能に限界があるため、サービス品質の解析を高速化することが困難でした。
今回、1台の汎用ハードウェアだけで従来の10倍の性能である200Gpbsで通信パケットをモニタしながら、ネットワークとアプリケーションの品質をリアルタイムに解析するソフトウェアを開発しました。これは、通信パケット収集時の負荷を軽減する技術や、メモリコピーや排他制御を不要に する技術、複数のCPUコアを使用しても競合が発生しない並列化技術により実現しています。
本技術は、高価な専用ハードウェアを必要とせず低コストにサービス安定利用を支えるネットワークインフラの提供に活用することができます。
開発の背景
スマートフォンやタブレットなどの端末の普及やデータセンター活用シーンの拡大などによりクラウドサービスが進展し、通信ネットワークを利用したサービス品質が重要視されていますが、現実的にはネットワークのデータ流量増大や複雑なシステム構成などによる思わぬサービス障害が発生することがあります。サービス障害を早期に発見・復旧させるためには、障害原因がネットワーク品質の問題か、応答時間などアプリケーション品質の問題かをリアルタイムに解析して切り分ける必要があります。これらネットワーク品質やアプリケーション品質を解析するためには、通信パケットごとの詳細な挙動を解析することが求められます。
課題
ネットワークを流れる通信速度は年々高速化しており、通信キャリアの基幹網では通信速度100Gbps、上りと下りの合計では200Gbpsのイーサネットがすでに導入され、データセンターでも通信速度10Gbps、上りと下りの合計では20Gbpsのイーサネットを多数使用してシステムが構築されています。通信速度が高速になるほどパケット数が増加し、より高い処理性能が求められます。
しかし、ハードウェアに搭載されたCPUなどの性能に依存して単位時間当たりの受信可能な最大パケット数が頭打ちとなることや、メモリアクセス性能に依存してパケット収集とネットワーク品質解析とアプリケーション品質解析の各々の処理間のメモリコピーが間に合わないといった問題により、処理性能を向上させることが困難でした。
開発した技術
今回、200Gbpsの高速なパケット収集に加え、ネットワークとアプリケーションの品質解析を高価な専用ハードを使わずにソフトウェアだけで実現しました(図1)。ネットワーク品質解析ではネットワーク上の通信量の算出や、パケットロスとネットワーク遅延の検出ができます。また、アプリケーション品質解析ではサービスごとの通信量の算出や、サービスを提供するアプリケーションの応答遅延の検出ができます。これらの品質解析を統合することで、サービスの遅延原因と場所を特定することができます。
図1 200Gbpsサービス品質解析の構成
開発した技術の特長は以下のとおりです(図2、図3)。
- パケット収集高速化
パケットを収集する際に、パケット到着ごとに発生していた割り込みを集約し処理回数を削減するとともに、CPUがほかの処理を停止して新たな処理を受け付ける割り込み処理を複数のCPUコアに負荷分散することで、パケット収集処理性能を向上させました。
- メモリアクセス高速化
パケット収集や品質解析の処理間でデータ参照の方法やタイミングを工夫し、パケットや解析データのコピーをせずに参照可能にするとともに、同時の書き込みや参照中の領域への書き込みがおこらないようにしました。これにより、コピーや処理の排他制御を不要にしました。
- 処理の並列化
複数のCPUコア上で動作する多数の解析プロセスから、排他制御不要で同一のリングバッファーにアクセスを可能にすることで、複数CPUコアを使用しても競合が起こらないようし、解析処理性能がCPUコア数の増加によりリニアに向上することを可能にしました。
図2 パケット収集高速化技術、メモリアクセス高速化技術
図3 複数CPUコアを効果的に利用する並列化技術
効果
開発技術により、従来の10倍の性能である200Gbpsの高速ネットワークに流れる大量のパケットをモニタしながらネットワーク品質およびアプリケーション品質のリアルタイムな解析を、高価な専用ハードを必要とせず汎用ハードウェアとソフトウェアだけで実現できるため、サービス品質劣化の原因や場所の特定を低コストで実現することができます。
また、送信元などの履歴を残せるので、サイバー攻撃の送信元や被害を受けたサーバを把握できます。さらに、アプリケーションごとに必要な通信量を把握できるため、必要に応じて適切なインフラを構築できます。
これらにより、トラブルの早期解決、セキュリティ強化、迅速なサービス提供など、サービスの安定利用を支えるネットワークインフラの提供に活用することができます。
今後
富士通研究所は、品質解析の研究開発および実証実験を進め、2015年度中の製品搭載を目指します。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
ソフトウェア研究所
044-754-2575(直通)
200g-analyze@ml.labs.fujitsu.com
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