PRESS RELEASE (技術)
2015年4月2日
株式会社富士通研究所
様々なスマートフォンと周辺デバイスを簡単に繋げるWebOS技術を開発
OSに依存せず、プラグ&プレイでドライバを自動配信
株式会社富士通研究所(注1)は、スマートフォンとその周辺にある電子機器やセンサーなどの周辺デバイスを、スマートフォンのOSに依存することなく自動的に接続し、クラウドサービスと組み合わせて利用可能とするWebOS技術を開発しました。
従来、スマートフォンやタブレットなどのスマート端末で、周辺デバイスを利用するためには、OSや周辺デバイスごとに専用アプリケーションが必要で、利用者はアプリケーションのインストール、開発者はOSや周辺デバイスごとのアプリケーション開発が必要となり、利便性と開発コストの点で課題がありました。
今回、スマート端末上で、HTML5に代表されるWebアプリケーションから周辺デバイスの制御を可能にして、クラウドサービスと周辺デバイスの接続を自由に組み合わせられる技術を開発しました。
これにより、サービス事業者やデバイスメーカーはOSに依存しないアプリケーションやドライバ開発が可能になるとともに、サービス利用者は、周辺にあるデバイスを即座にスマート端末につないで活用可能になります。
開発の背景
2020年には500億個の周辺デバイスがネットワークに接続されると言われているIoTの世界では、利用者は、スマート端末から周辺デバイスにネットワーク接続して直接操作したり、周辺デバイスから収集したデータを分析し、その結果を活用したりして業務や生活に役立てることができるようになることが期待されています。
富士通研究所では、情報機器を持つ人を中心に、人の活動空間にあるデバイスとWebサービスを連携させることで業務や人の暮らしを支援する、ハイパーコネクテッド・クラウドの実現を目指しています。この世界の実現には、人と周辺デバイスの接点であるスマート端末とデバイスを繋ぐ技術の進展がますます重要になってきます。
課題
これまで、スマート端末から様々な周辺デバイスを利用するためには、クラウドサービスを利用する機能と周辺デバイスを制御するドライバが一体となった専用アプリケーションがOSごとに必要でした。そのため、サービス事業者やデバイスメーカーはOSごとにアプリケーション、ドライバの開発が必要で、OSのバージョンアップに伴うアプリケーションやドライバの修正も発生し、開発コストの増大を招いていました。
また、利用者にとっては、周辺デバイスを利用するためには、ネットワークの設定、デバイスの検索、専用アプリケーションのダウンロード、インストールといった何ステップにも渡る煩雑な操作が必要になり利便性が損なわれていました。
アプリケーションのOS依存性を低減する技術として、HTML5のようなWebアプリケーションを用いる方法があります。しかし、周辺デバイス用のデバイスドライバについては、依然としてOSごとに開発し、アプリケーションと一体化して提供する必要があり、OS依存性が解消されていません。一方、ブラウザ上でデスクトップのような環境を提供するWebOS方式の実行環境が知られていますが、ドライバの配置方法が確立されておらず、アプリケーションから周辺デバイスが利用しにくい状況です。
開発した技術
OS上に独自のアプリケーション実行環境層を構築し、周辺デバイスを制御できるようにすることで、Webアプリケーションからクラウドサービスと周辺デバイスを接続できる技術を開発しました(図1)。
開発した技術の特長は以下のとおりです。
1.Web型ドライバアーキテクチャー
OS非依存で周辺デバイスを利用できるようにするため、Webベースのアプリケーション層(Web層)とOSの汎用通信インターフェースとをWebアプリケーション実行環境層で繋げるインターフェースのブリッジ制御を開発しました。これにより、ドライバをWeb層に配置することが可能となり、ドライバのOS依存性がなくなりました。
さらに、アプリケーションの独立性を高めるため、個々のドライバの違いを吸収するデバイス抽象化APIを開発しました。これにより、例えば、同じ表示APIで、プリンターがあればプリンターに出力、ディスプレイがあればディスプレイに出力するなど、アプリケーションを変更することなく異なるデバイスを活用することが可能になります。
2.デバイス プラグ&プレイ技術
周辺デバイスの接続を制御するため、デバイスの発見とドライバの動的な配信を行うプラグ&プレイ マネージャー、ドライバの配信を制御するデバイス管理を開発しました。
- プラグ&プレイ マネージャー
スマート端末が周辺デバイスを検出すると、ドライバをクラウドのドライバ・ストアから取得し、Web層に動的に配備します。これにより、クラウドサービスと周辺デバイスを動的にすばやく繋ぐことが可能になります。
- デバイス管理
Webアプリケーションが必要なドライバを記述する配信ポリシーを管理しています。配信ポリシーにしたがって、Webアプリケーションが利用できるドライバだけを配信して、クラウドサービスと周辺デバイスの接続を適切に管理します。
図1 スマート端末と周辺デバイスを動的に繋げる技術
効果
これまで、スマート端末からプリンターなどの周辺デバイスを利用する際には、ネットワーク機能の起動、ネットワーク上のデバイスの検索、アプリストアからデバイス専用アプリケーションのダウンロードなど、何ステップにも渡る煩雑な操作が必要でしたが、本技術により、その場にあるデバイスを即座に利用することが可能になります。さらに、デバイスが切り替わっても、アプリケーションを変更することなく利用し続けることが可能です。
本技術は、例えば、以下のシーンで活用できます。
- 訪問介護業務
訪問先の関連機器を簡単に操作・利用し、業務報告のサービスなどと繋げることができます。例えば、患者宅にある計測器での計測結果を、従来はスマート端末に手入力していたところを、結果を自動で業務日誌などにまとめることができます。
- タクシー・バス
今後、乗り物に配備されていく様々なデバイスの利用が簡単になります。例えば、タクシーの後部座席のディスプレイとの接続や、カーナビとの連携が可能になります。
- 観光地・ホテル
観光先やホテルの機器をその場で連携することも可能です。例えば、ホテルの部屋に備えられたスピーカーやテレビと接続し、好きな音楽や映像を再生することができます。
開発者は、OS非依存でアプリケーションやドライバを開発できるため、例えば3種類のOSに対応していた場合、開発工数を3分の1以下に短縮できます。利用者は、ドライバなどを個別にインストールする手間がなく、システムに登録された周辺デバイスであればすぐに利用可能です。また、管理者は、ポリシー設定により利用可能なデバイスを制御できます。
今後
富士通研究所は、対応デバイスの拡充や実利用シーンでの検証を進めるとともに、人が活動しているあらゆる場所でのサービス提供に向けて、本技術の2016年度中の実用化を目指します。
以上
注釈
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
ユビキタスシステム研究所
044-874-2437(直通)
fj_wpnp@ml.labs.fujitsu.com
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