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PRESS RELEASE

2014年9月4日
日本電信電話株式会社
日本電気株式会社
富士通株式会社

世界最高水準の400ギガビット級光伝送技術の実用化に目処

最大10,000kmの長距離・超高速光伝送実験に成功

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦 博夫、以下、NTT)、日本電気株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 執行役員社長:遠藤 信博、以下、NEC)、富士通株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本 正已、以下、富士通)の3社は、世界最高水準となる1チャネルあたり毎秒400ギガビット級のデジタルコヒーレント光伝送技術(注1)の実用化への目処となる伝送実験に成功しました。毎秒400ギガビット級の信号を最大で62チャネルに多重化し、変調方式ごとに異なる容量の毎秒12.4テラビット~24.8テラビットの波長多重信号により数千km~10,000kmの光ファイバ伝送を実証いたしました。

本技術を光送受信装置に実装することにより、従来の光ファイバを活用しながら4倍の光伝送が実現でき、超高画質映像の伝送やM2Mの普及拡大に耐えうる世界最高レベルの基幹網の構築が実現できます。

今後はこの成果を発展させ、毎秒400ギガビット級光伝送技術の実用化を加速してまいります。なお、本研究開発は総務省の委託研究「超高速・低消費電力光ネットワーク技術の研究開発」を受託し進めているものです。

1. 背景

FTTH(Fiber to the Home)やスマートフォンの普及によるデータ通信量の爆発的な増大に対応するため、現在、市場ではデジタルコヒーレント技術を用いた1チャネル当たり毎秒100ギガビット級の光伝送システムの普及が進展しています。

NTT、NEC、富士通などは、総務省からの委託研究「超高速光伝送システム技術の研究開発」(2009年度)、「超高速光エッジノード技術の研究開発」(2010年度~2011年度)により毎秒100ギガビット級のデジタルコヒーレント光伝送方式の研究開発を実施し、その開発成果は各社によって光伝送システムとしてグローバルに展開され世界中の光ネットワークへの普及が進んでいます。また、その中に採用されているコヒーレントDSP(注2)は世界のトップシェアとなっています。

しかし、本格的なビッグデータ社会の到来やM2Mの普及拡大により、データ通信量だけでなくデータの多様性は更に増してきており、次世代の光基幹ネットワークは更なる超高速・大容量のデータを柔軟にかつ経済的に伝送する必要があります。そのため、NTT、NEC、富士通は2012年度に総務省の委託研究「超高速・低消費電力光ネットワーク技術の研究開発」を受託し、世界最高水準の1チャネルあたり毎秒400ギガビット級のデジタルコヒーレント光伝送技術の実用化に向けた共同研究開発を進めてまいりました。

2. 今回開発した成果

今回、以下のような1チャネルあたり毎秒400ギガビット級の超高速光伝送に必要な要素技術を開発しました。

  1. 適応性の高い毎秒400ギガビット級の適応変復調技術(注3)の開発

    従来の毎秒100ギガビット伝送で採用している、光の位相に情報を重畳する4値位相変調(QPSK: Quadrature Phase Shift Keying)に加えて、容量を拡大するために光の位相と振幅の両方に情報を重畳してさらに多値化を図った8値の直交振幅変調(QAM: Quadrature Amplitude Modulation)および16値QAMを採用し、ナイキストフィルタリング(注4)と呼ばれる帯域圧縮技術によるサブキャリア多重(注5)を組み合わせました。これらの技術により、情報の伝送容量を従来と比較して格段に増大できる世界最高水準の毎秒400ギガビット級の超高速光伝送を実現しました。

    特に、光伝送路の特性に応じて、回線品質が適切な変調方式を選択することで、効率のよい光ネットワーク資源の運用を実現する適応変復調技術について、8値QAMを含めて電子回路に実装可能なアルゴリズムで実現したのは世界初であり、QPSKと16値QAMでカバーしきれなかった、光ファイバ1芯当たり毎秒10テラ~20テラビットの容量で500km~1500km程度の伝送距離の領域をカバーすることができます。これにより、伝送距離など伝送路の状況に応じて同一のハードウエアで様々な変復調方式を実現でき、より適応性の高い柔軟なネットワークが実現できます。

  2. 長距離伝送を可能とするデジタル逆伝搬(注6)信号処理による補償機能の実現

    毎秒400ギガビット級の超高速光伝送を長距離で行うためには、高いパワーの光信号を光ファイバに入射する際、光の強さによって光ファイバの屈折率が変化し複雑な波形の歪みを発生させる非線形光学効果により光ファイバへの入射パワーが制限されるため、その補償が必要となります。しかしながら、これまで多値変調信号が受ける光ファイバ中の非線形光学効果を補償する回路は規模が非常に大きく回路実装が困難であるという課題があり、長距離化の主要制限要因となっていました。今回開発したデジタル逆伝搬信号処理は、アルゴリズムと回路方式を工夫することにより演算量を大幅に削減することで、回路実装が可能となり非線形光学効果の補償の機能を実現できました。また、そのために必要な技術として、波長ごとに光ファイバ中の伝搬遅延時間が異なる現象である波長分散の値を、光ファイバ10,000km相当まで推定可能な波長分散推定技術も併せて開発しました。さらに、高性能な誤り訂正符号MSSC-LDPC(注7)を活用して伝送距離の更なる延伸を実現しました。これらの技術により、長距離伝送における装置数の削減が可能となり、これにともなうネットワークの低消費電力化も期待されます。

    NTT、NEC、富士通の3社は、今回開発した技術を結集して、海底伝送路をモデルとした光中継伝送で最大10,000km、陸上伝送路をモデルとした光中継伝送で最大3,000kmのストレートライン(注8)での伝送実験に成功し、回路実装可能なアルゴリズムで実用化に必要な機能を実現できることを確認しました。なお、今回の伝送実験は独立行政法人情報通信研究機構(NICT)との共同研究に基づき、NICTの実験設備を活用して行われたものです(図1)。

    図1 伝送実験系構成

3. 今後の展開

今回の成果をもとに、超高速かつ低消費電力で柔軟性を兼ね備えた世界最高レベルの光ネットワークの実現に向けた毎秒400ギガビット級光伝送技術の速やかな実用化開発を推進してまいります。併せて、国内外の機関とも連携して成果のグローバル展開を目指していきます。

以上

注釈

注1 デジタルコヒーレント光伝送技術:
受信側に設置した光源と受信した光信号を干渉させるコヒーレント受信とデジタル信号処理を組み合わせた次世代光伝送方式。偏波多重や位相変調などの変調方式により周波数利用効率を向上させるとともに、大幅な受信感度向上を実現する。
注2 コヒーレントDSP:
デジタルコヒーレント光伝送に用いるデジタル信号処理(Digital Signal Processing)回路。アナログデータをデジタルデータに変換し、各種信号処理を実行する。
注3 適応変復調技術:
光伝送路の特性に応じて、回線品質が適切な変復調方式を選択することで、効率のよい光ネットワーク資源の運用を実現する技術。
注4 ナイキストフィルタリング:
信号品質を維持したまま信号帯域を半分程度に圧縮するフィルタリング技術。
注5 サブキャリア多重:
複数の波長の光信号をほぼ隙間なく高密度に多重して1つの高速チャネルを形成する方式。
注6 デジタル逆伝搬:
受信した光信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号処理で仮想的に光ファイバを逆向きに伝搬させて光ファイバによる線形および非線形歪みを同時に補償する技術。
注7 MSSC-LDPC(Multiple-Structured Spatially-Coupled type Low-Density Parity-Check):
検査行列中を「多重空間結合型」と呼ばれる規則的構造で構成し、検査行列中の性能劣化の要因を回避した独自の低密度パリティ検査符号。(K. Sugihara et al., OFC/NFOEC2013, OM2B.4, March 2013.)
注8 ストレートライン:
長距離伝送実験には周回実験とストレートライン実験があり、周回実験が比較的短い光ファイバを何回も周回させて伝送距離を稼ぐのに対して、ストレートライン実験では伝送距離と同じ長さの光ファイバを使用する。ストレートライン実験の方が実用伝送路に近い特性が得られる。

本件に関するお問い合わせ

日本電信電話株式会社
先端技術総合研究所 広報担当
電話 046-240-5157
メール a-info@lab.ntt.co.jp

日本電気株式会社
コーポレートコミュニケーション部
電話 03-3798-6511

富士通株式会社
広報IR室
電話 03-6252-2174


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