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PRESS RELEASE (導入事例)

2014年9月2日
富士通株式会社

JAXA様の全球降水観測計画での観測データ処理などを担う
「GPM/DPRミッション運用系システム」を構築

一般向けデータ提供を開始し、地球上の水循環メカニズムの解明に貢献

当社はこのほど、独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(本社:東京都調布市、理事長:奥村 直樹、以下、JAXA)様が米国National Aeronautics and Space Administration(以下、NASA、注1)などと共同で推進する全球降水観測計画(Global Precipitation Measurement、以下、GPM)ミッションの主要な地上システムである「GPM/DPRミッション運用系システム」を構築しました。

本システムは、2014年2月28日に打ち上げられたGPM主衛星をはじめとする複数の人工衛星(注2)が取得するデータから世界中の降水に関する情報を作成し、NASA、気象庁、水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)、国際建設技術協会(IDI)などの関係機関へ配信する役割を担っています。

本システムは、米国メリーランド州 NASAの降水データ処理システムと連携するシステムでありながら、一部のデータ処理については、NASAからデータが発信されてからわずか13分間で返信を完了する必要があり、当社は即時処理データ専用計算機を設置することで、これに対処しました。また、正確な受信、処理、送信を24時間365日継続して行う、高い信頼性を実現するため、当社の各種ミドルウェアを活用しています。当社は、本システムのプラットフォームからアプリケーション、運用保守まで、トータルで提供しています。

JAXA様は2014年2月28日に開始した本システムから一部機関へのデータ配信に続き、9月2日に、JAXA様の地球観測衛星データ提供システム(G-Portal)からの一般向けオンライン提供を開始します。

GPMミッションは、地球上の水循環メカニズムの解明と、水資源管理への貢献、気象予報精度の向上を目的とした国際的なプロジェクトです。

GPM主衛星と複数の副衛星群によって地球全体の降水(雨や雪)を一日に複数回観測することで、従来観測点が乏しかった海上での降水状況の観測が可能となりました。

GPMに搭載されたDPRによる降水の三次元分布画像
GPMに搭載されたDPRによる降水の三次元分布画像

GPM/DPRミッション運用系システムの役割

本システムは、24時間365日、GPM主衛星・副衛星で取得される観測データなどを、NASAの降水データ処理システムから受信し、解析することにより、降水の強さを示す三次元分布データをNASA、気象庁などの関係機関へ配信します。

GPM/DPRミッション運用系システムの概要

  1. データ取得

    GPM主衛星・副衛星による観測データ、衛星の軌道・姿勢情報などのデータを、NASA降水データ処理システムから取得します。

  2. データ処理注3

    NASAより取得した観測データから、降水に関する情報を解析し、降水の強さを示す三次元分布データを作成します。

  3. データ提供

    NASA、気象庁には本システムから直接データが提供されます。ICHARM、IDI、および一般向けには、JAXA様が運用しているG-Portalからオンラインで提供されます。

  4. データアーカイブ

    作成したデータはデータ圧縮された状態で一定期間の間、蓄積・保存されます。データはカタログ管理され、必要な情報を検索して取得できるようになっています。

  5. センサー状態のチェック

    GPM衛星に搭載された降水状況を観測するセンサーである二周波降水レーダー(DPR:Dual-frequency Precipitation Radar)の電圧、電流などの情報を時系列にグラフ化し、状態を監視します。

GPM/DPRミッション運用系システムの概要
GPM/DPRミッション運用系システムの概要

GPM/DPRミッション運用系システムの特長

  1. 高速処理を実現するシステム構成

    本システムは、米国メリーランド州のNASAの降水処理システム(PPS)と連携したシステムでありながら、一部のデータについては、NASAからデータが発信されてから13分間という短時間での迅速なデータ受信、処理、送信を要求されています。当社は、即時処理専用の計算機を設置することでこれを実現しました。また、SAN(Storage Area Network)の採用により、サーバ間のファイル共有を可能にすることで、システム内のデータ伝送時間も短縮しています。

  2. 副衛星の追加に対応可能な柔軟性

    衛星から観測データを取得する従来のシステムでは、衛星ごとにプログラムを用意していました。本システムでは、一連の処理の流れを、衛星の種類に依存することなく共通して実現できる汎用的な制御プログラムと、個々の衛星に固有のデータ処理プログラムをそれぞれ用意し、処理フロー内のデータ処理プログラムの依存関係や入出力データの関係をパラメーターで設定できる方式にしました。

    これにより新しい副衛星が追加される場合には、パラメーターの設定変更をすることで、データ処理プログラムを容易に追加することが可能となりました。

  3. データ処理プログラムの継続的な改善を容易にする仕組み

    JAXA様は、衛星が取得する観測データに応じ、データ処理プログラムの改善を継続的に行います。この改善プロセスでは、蓄積された過去のデータを用いた検証が欠かせません。

    本システムでは、本番運用環境の一部を用い、改善版処理プログラムを試験的に実行することができます。これによりJAXA様は、テスト運用環境を別途用意することなく改善版処理プログラムの動作確認が可能となり、データ処理プログラムの改善スピードを向上させることができます。

  4. 高い信頼性の実現

    当社の統合運用管理「FUJITSU Software Systemwalker(フジツウ ソフトウェア システムウォーカー)」、高信頼基盤ソフトウェア「FUJITSU Software PRIMECLUSTER(フジツウ ソフトウェア プライムクラスター)」、ビジネスアプリケーション基盤「FUJITSU Software Interstage(フジツウ ソフトウェア インターステージ)」などのミドルウェアを活用することにより、システム全体の信頼性、可用性、および性能の向上と、自律性・業務拡張などの柔軟性を実現しています。システムを構成するサーバ、ネットワーク装置は二重化しており、万が一のトラブル発生においても、迅速に待機系への切替を行い、業務の中断を防ぐ仕組みをとっています。

宇宙航空研究開発機構 第一衛星利用ミッション本部 ミッション運用システム推進室長 竹島 敏明様からのコメント

本プロジェクトはNASAとの共同ミッションであると同時に、多くのGPMパートナーとの協力の下、主衛星のほかに複数の衛星のデータを利用することもあって、地上システムの開発には様々な課題がありました。そのような状況の中、衛星プロジェクトや関係者との協働により、不確定要素や問題点を一つ一つ解決しつつシステム構築を進めてきました。本システムで処理・作製したデータが幅広い利用者に活用され、天気予報の精度の向上、洪水や台風など自然災害の被害軽減、気候変動や異常気象のメカニズムの理解の深化などに貢献してくれることを期待しています。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 National Aeronautics and Space Administration:
米国航空宇宙局。米国政府機関のひとつ。
注2 GPM主衛星をはじめとする10機以上の人工衛星:
GPM主衛星と複数の副衛星で構成される。GPM主衛星は、JAXA様がNASAと共同で開発した降雨観測衛星。JAXA様が開発したDPRセンサー(降雨レーダー)とNASAが開発したGMIセンサー(マイクロ波イメージャー)を搭載。
注3 データ処理:
処理の一部については、JAXA様が開発したデータ処理ソフトウェアを、本システムに組み込み使用。

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本件に関するお問い合わせ

テクニカルコンピューティング・ソリューション事業本部 TC統括営業部 ソリューション営業部
電話 03-6252-2550(直通)


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