PRESS RELEASE (サーバ)
2014年5月29日
富士通株式会社
スーパーコンピュータの高次元接続技術が「恩賜発明賞」を受賞
独立行政法人理化学研究所(本所:埼玉県和光市、理事長:野依良治)様と当社が共同開発したスーパーコンピュータ「京(けい)」(注1)や当社製の「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX10(フジツウ スーパーコンピュータ プライムエイチピーシー エフエックステン)」(以下、「PRIMEHPC FX10」)のTofu(Torus fusion)インターコネクトで使用されている高次元接続技術に関する発明(注2)が、このほど公益社団法人発明協会主催の「平成26年度全国発明表彰」で最も優れた発明として評価され、「恩賜発明賞」を受賞しました。
表彰式は、2014年7月8日にホテルオークラ東京(東京都港区)にて開催される予定です。
概要
PRIMEHPC FX10
現在、世界トップレベルのスーパーコンピュータは、プロセッサを数千から数万ノード接続した超並列計算機です。超並列計算機においては計算ノードの一部に故障が発生した場合、故障ノードを隔離してシステムの運用を維持しますが、隔離する方法がシステム全体の性能や稼働率に影響します。従来のノードの構成では、あらかじめ区画化されたメッシュ間をスイッチで接続しており、故障の際は、故障ノードを含む区画単位で隔離しましたが、これによると、故障していないノードも含めて区画単位で隔離するため稼働率が低下する課題がありました。
当社は、この課題への対応として、区画化スイッチを用いずに高度にノードを接続する技術(以下、「高次元接続技術」)を発明しました。これにより、故障ノードを迂回して経路制御を行い、実行可能な並列度を落とさず、システム稼働率を高く維持することを可能としました。
高次元接続技術は、88,128ノードの接続を実現し、2011年に第37回および第38回のTOP500(注3)において世界最高性能を記録した「京」に適用されているだけでなく、国内外の大学や民間企業などで利用いただいている当社製スーパーコンピュータ「PRIMEHPC FX10」や、現在開発中の「PRIMEHPC FX10」の後継機にも適用されています。
受賞者
恩賜発明賞 | 次世代テクニカルコンピューティング開発本部 シニアアーキテクト 安島 雄一郎 | |
恩賜発明賞 | 次世代テクニカルコンピューティング開発本部 マネージャー 井上 智宏 | |
恩賜発明賞 | 次世代テクニカルコンピューティング開発本部 平本 新哉 | |
発明実施功績賞 | 代表取締役社長 山本 正已 |
本発明の高次元接続とは
本発明は、所定数のノードを格子状に組合せて「グループ」を構成し、さらにグループを単位としてトーラスという接続形態を構成する接続技術です。トーラスとは複数のグループをリング状に接続し、さらにグループ間接続リングを格子状に組み合わせる構成です。本発明ではグループを単位として任意の位置で区画化できます。区画化の単位が小さいため、様々な並列度のプログラムを同時に、効率良く実行が可能となります。区画化スイッチは不要となり、次元の増加により増えた接続口は全て通信経路になるため、計算性能に貢献します。また、区画単位だけでなく区画内でも故障隔離を可能にします。この場合、グループ間接続リングとグループ内格子構造上の一筆書きを、仮想的なループ接続と見做して使用します。
図1に本発明の適用例を示します。この適用例は6次元メッシュ/トーラスと呼ばれ、図中X、Y、Z方向の3次元がグループ間接続リング、図中A、B、Cの3次元がグループ内の格子構造となります。この例では、グループ内の格子構造の大きさは2ノード(A)×3ノード(B)×2ノード(C)です。図2に区画内での故障隔離例を示します。グループ内の格子構造に3ノード以上の大きさがあれば、グループ内で1ノード故障しても、故障ノードを迂回して一筆書きループを維持できます。
本発明により、当社のスーパーコンピュータは柔軟な区画化機能を備え、多様な並列計算プログラムを同時に実行可能になりました。
図1 本発明の適用例:6次元メッシュ/トーラス
図2 区画内故障隔離の例
全国発明表彰について
全国発明表彰は、皇室より毎年御下賜金を拝受し、わが国における発明、考案、または意匠の創作者ならびに発明の実施および奨励に関し、功績のあった方々を顕彰することにより、科学技術の向上および産業の発展に寄与することを目的として行っているものです。今回受賞の恩賜発明賞は最も優秀と認められる発明などの完成者に贈呈される最高位の賞です。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- 注1 スーパーコンピュータ「京」:
- 文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」プログラムの中核システムとして、独立行政法人理化学研究所と当社が共同で開発を行い、2012年9月に共用を開始した計算速度10ペタフロップス級のスーパーコンピュータ。
- 注2 高次元接続技術に関する発明:
- 特許登録済(特許第5212469号)
- 注3 TOP500:
- 世界で最も高速なコンピュータシステムの上位500位までを定期的にランク付けし、評価するプロジェクト。
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