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PRESS RELEASE (技術)

2014年3月14日
株式会社富士通研究所

クラウド環境を広域ネットワーク上で最適化する分散サービス基盤技術を開発

サービス要件の変化に応じた実行環境を迅速に提供可能に

株式会社富士通研究所(注1)は、業界で初めて、クラウド上の処理やデータの一部を広域ネットワーク上のサーバに分散配備し、サービス要件の変化に応じてシステムの構築・運用を自動化する分散サービス基盤技術を開発しました。

近年、人手を介さずに機器同士が情報伝達を行うM2M技術の進展やモバイル端末の普及により、クラウドサービスとデバイス間のデータ量は急激に増加しています。このため、限られたネットワーク帯域の中でリアルタイムなサービスを提供するためには、データ発生源の周辺や広域ネットワーク上の中間サーバに処理を分散する必要があります。

これに対応するために、今回、接続可能なデバイス数などのサービス要件の変化に応じて、最適な処理の配備先を決定し自動配備する分散サービス基盤を開発し、分散システムの再配備にともなう構築期間を数日から数分に短縮しました。人手では不可能であった数十万台規模のデバイスとサーバを含むシステムの運用にも耐えられるため、小規模で始めたクラウドサービスを、アプリケーションの改修などの手間を必要とせずに規模の拡大に応じたシステムに自動拡張することが可能になります。

開発の背景

近年、センサーデバイスやモバイル端末の小型化、通信技術の高度化により、ネットワークに接続される様々な機器やセンサーデバイスの情報をクラウドサービスに送信し、機器のリモート保守やエネルギーマネジメントなどを実現するM2Mサービスが注目されています。ネットワークに接続されるセンサーデバイス数や端末数の規模拡大に従い、通信トラフィックが増加しますが、サービスの応答性能を保つためにはクラウドシステムや通信網の設備増強などが必要になり、コスト負担の増加が大きな課題となっています。

そこで、クラウド上の処理やデータの一部をセンサーデバイスや端末の存在する現場に近いネットワーク上の中間サーバ(ゲートウェイサーバ)に分散処理させることで、通信トラフィックを削減してレスポンス性能の向上を図る、分散システムの考え方が注目されています(図1)。

図1 分散システムの考え方
図1 分散システムの考え方

課題

クラウド上のアプリケーションや一部の処理を分散させるには、ネットワークを中継する複数のゲートウェイサーバのうち、いずれで実行すると通信トラフィックの削減効果が最も高いかという、処理の効果的な配備先を事前に設計することが重要です。効果的な配備先は、機器のデータ発生量、ネットワーク上のゲートウェイサーバの位置、処理内容、ネットワークの通信コストなどを総合的に評価して判断する必要があり、従来の人手による設計では、設計の長期化にともなうコスト増や、急激なデータ量変化への迅速な対応が困難という課題がありました。また、機器数やゲートウェイサーバ数の増加などから、人手による設計では対応しきれないという問題も出てきています。

開発した技術

分散システムを可能にする分散サービス基盤では、機器やデータ量の増減などインフラに関する変化を検出し、最適な配備先の計算と再配備を繰り返すことで、実行環境の変化に追随した最適な分散配備を実現します。このため、収集する機器やゲートウェイサーバ数の増加など、大規模なシステムに適用する上では、自動配備の効率化が重要となります。

今回、アプリケーション処理の分散配備を自動化し、大規模なシステムにも適用可能な分散サービス基盤技術を開発しました(図2)。

図2 分散サービス基盤
図2 分散サービス基盤

開発した、自動配備を効率化する技術は以下のとおりです。

  1. 配備先計算の高速化技術

    個々の処理をいずれのゲートウェイサーバで処理するかという設定は、最適な組合せを判断するため、一般的に時間がかかる計算として分類されています。そこで、配備する処理の特性に応じて、ネットワークの最短経路上のゲートウェイサーバを優先するか、機器とネットワーク上の近さを優先するかを組み合わせて探索するアルゴリズムを開発しました(図3のA)。これにより、計算時間を従来の約500分の1に短縮しました。

  2. 管理トラフィックの削減技術

    インフラの変化に素早く追随して再配備を行うためには、システムを監視するサーバ(監視サーバ)にインフラの状態を示す管理情報を頻繁に送信する必要があり、特に大規模なシステムでは管理トラフィックの増加が問題になります。今回、配備先計算において最適候補だけでなく次候補まで計算し、さらに次候補が最適解となるトラフィック変化条件を計算して、計算結果と処理をゲートウェイサーバに配備することで、再配備に必要な変化だけを監視サーバに送信する技術を開発しました(図3のB)。これにより、再配備に影響しない軽微な変化は監視サーバに送信されなくなるため、管理トラフィックを従来の定期的に送信する方式に比べて約700分の1に削減することが可能になります。

図3 自動配備を効率化する技術
図3 自動配備を効率化する技術

効果

開発した分散サービス基盤は、自動配備機構と運用管理環境を一体化しており、さらに、アプリケーションの処理フローを定義するツールも利用可能にしました。本基盤を用いることで、従来、インフラ環境の変化に応じて人手で再設計、構築、運用していた期間を数日から数分に短縮することができます。また、人手では対応できない数十万台規模の分散システムに対しても数分で再配備が可能になります。これにより、サービス提供事業者は分散システム構築と運用のライフサイクルを素早くまわすことができるようになり、最適な分散処理を行うことで、全体の通信トラフィックを約100分の1に削減することができます。

今後

今後、クラウドシステムに複数のサービスを収容するマルチテナント化や、ネットワークの構成を動的に変更可能なSDNなどのオープンな技術と連携させ、2014年度中の実用化を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
システムソフトウェア研究所 分散プラットフォーム研究部
電話 044-754-2629(直通)
メール dspf-ml@ml.labs.fujitsu.com


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