このページの本文へ移動
  1. ホーム >
  2. プレスリリース >
  3. ネットワーク上のストレージアクセスを高速化するSDN技術を開発

PRESS RELEASE (技術)

2013年12月9日
株式会社富士通研究所

ネットワーク上のストレージアクセスを高速化するSDN技術を開発

仮想化・クラウド基盤でネットワークを有効活用し、システムのスケーラビリティを向上

株式会社富士通研究所(注1)は、LAN、SAN(Storage Area Network)(注2)の統合ネットワークを対象としてストレージトラフィックの経路を制御し、スループットの向上を実現するSDN(Software Defined Networking)技術を開発しました。

近年、データセンターにおいてシステムの効率的な運用が求められており、ネットワークスイッチを装置の外部からコントローラーのソフトウェアによって遠隔制御し、仮想化されたネットワークを活用するSDN技術が適用され始めています。さらに、コスト削減と運用の簡易化を目的として、LANとSANをひとつのネットワークに統合する技術の適用も進んでいます。

従来のSDN技術はLAN用スイッチの制御を想定しているためSANのストレージトラフィックの最適化には適用できませんでした。このため、LANとSANを統合したネットワークに適用する場合、システムを拡張する際の性能向上に課題がありました。

今回、ストレージトラフィックの制御に必要な機能をネットワークスイッチに実装し、それをコントローラーから制御することで、SDNによるストレージトラフィックの経路を制御可能にし、ネットワーク資源を仮想網が有効に活用できるようになりました。この技術を適用したLAN、SANの統合ネットワーク開発環境で約2倍の性能向上を確認しました。

今後、この技術を用いることで、垂直統合型の仮想化・クラウド基盤を構築する際に、LANとSANを統合するネットワークの負荷に応じて柔軟にシステムを拡張することができるようになります。

本技術の詳細は、12月9日(月曜日)から米国・アトランタで開催される国際会議「IEEE MENS 2013 (Management of Emerging Networks and Services 2013)」(IEEE GLOBECOM 2013 に併設)にて発表します。

開発の背景

近年、データセンターのTCO削減を実現するためサーバやネットワークの仮想化が進められ、仮想化されたネットワークをソフトウェアで制御するSDN技術が適用され始めています(図1)。さらに、コスト低減や運用管理作業の効率化を目的として、従来は個別に配備していたLANとSANを一つのネットワークに統合する技術の適用も進んでいます(図2)。

図1:ネットワーク仮想化とSDNによる経路制御
図1:ネットワーク仮想化とSDNによる経路制御

図2:LAN・SAN統合ネットワーク
図2:LAN・SAN統合ネットワーク

課題

OpenFlow(注3)に代表される従来のSDN技術では、イーサネットアドレスやIPアドレスを用いてLANトラフィックに対する制御はできましたが、IPアドレスを使わないストレージトラフィックに対応していませんでした。そのため、LAN・SAN統合ネットワークにおけるストレージトラフィックは制御できず、ネットワークを効率的に利用できないという課題がありました。

開発した技術

今回、LAN・SAN統合ネットワークを実現するFCoE (Fibre Channel over Ethernet)(注4)のデータの流れ(ストレージフロー)(注5)に着目し、SDNによってストレージトラフィックを制御する技術を開発しました。

開発した技術の特長は以下のとおりです。(図3、4)

  1. ストレージフロー検出・ストレージフロー操作 (パケット変換・パケット転送) 機能を、イーサネット・スイッチに実装

    FCoEのデータ中継に必要な機能を、外部からの制御に適するように、ストレージフロー検出とストレージフロー操作に分割して当社で試作したコンバージドファブリックスイッチ(図3)に実装しました。

  2. 集中制御を実現する外部コントローラーへの、ソフト制御インターフェースを開発

    ストレージフロー検出・ストレージフロー操作を、外部コントローラーから制御可能にしました。

  3. 複数のスイッチでのストレージトラフィックの制御を可能とする外部コントローラーを開発

    図4の構成でストレージトラフィックの経路操作が外部から可能になりました。

図3:スイッチに実装した機能
図3:スイッチに実装した機能

図4:実装した機能を使用するネットワーク制御
図4:実装した機能を使用するネットワーク制御

効果

今回開発した技術をイーサネット・スイッチベースのシステムに適用することで、開発環境で約2倍のスループットを達成しました。データトラフィックを適切に分散することで、LANとSANを統合するネットワークの負荷に応じた柔軟なシステム拡張を実現できます。

今後

本技術により、垂直統合型の仮想化・クラウド基盤でのクラウドシステム構築において、ネットワークの効率利用が可能となり、スケーラビリティの向上が期待されます。

富士通研究所では、今回発表のストレージトラフィックの制御を含む効率的なネットワーク利用の研究開発を進め、2014年度中の実用化を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
注2 SAN(Storage Area Network):
複数のサーバとストレージの間をつなぐ専用ネットワーク。
注3 OpenFlow:
ルータやスイッチの制御部分をデータ転送と分離させて集中制御する技術。
注4 FCoE(Fibre Channel over Ethernet):
SANとして広く使用されているFibre Channelのプロトコルを、Ethernet上で利用するための技術。FCoEによって、LANとSANを一つのネットワークに統合することが可能。
注5 ストレージフロー:
サーバ・ストレージ間で、宛先アドレスと送信元アドレスの組などによって指定されるSDNによって制御可能な通信トラフィックの単位。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ICTシステム研究所 システムプラットフォーム研究部
電話 044-754-2177 (直通)
メール dc-stor-sdn@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。